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【第0夜】空想商店よるべの成分⑤

すべては現状把握から
 まず今のわたしは、たったひとつではあるが強烈なトラブルがきっかけでこの島に対して悪い印象を抱いてしまっている。トラウマやフラッシュバックのようなもの、嫌悪感、恐怖心はまったく拭い去れていないし、それは今後もなくなる見込みはないだろうと思う。ここにいる限りその負の感情から逃げられないと思うと、正直目の前が真っ暗になる。

 しかしいつか島で何かをやりたいという夢は少しずつだが大きく、より具体的になってきている。この夏は予防接種も徐々に浸透してきたので内地の友人の自宅への宿泊受け入れを解禁したのだが、2、3週に1回訪れる週末民宿タイムの楽しさは想像を超えていた。週末から逆算して家を片付けて天気予報をチェックし、プランをいくつか用意してコースを決めて送迎をして―そして何よりみんなを港まで送って帰ってきたときのがらんとした部屋の、すこし喧騒が残っている雰囲気が言いようもないぐらい最高だった。それがきっかけでやはり宿泊業がやりたいのでは?と思うようになり、島で宿か、いいねぇ・・・などと想像をふくらませるようになった。その興味を形にしたいと思うなら、島に残って虎視眈々とアンテナを張り巡らせている方がぶっちゃけ近道なのではないか?一度離れたらぐっとハードルは上がる気がする。

 自分の心を守ることを第一にしてすぱっと見切り島を離れるか。それとも今はまだ漠然としているが今後叶えたい夢のために島に残るか。どっちに行くのもわたしとしては一世一代の決断で、色んな想像をして首をかしげて感情は浮き沈みして・・・あーーー苦しい!何かない?くよくよしてる自分の背中を押せるような活動、何かない?!

沸いた頭には冷めた心
 自分で自分の背中を押す活動。それはつまり・・・とわたしは考えた。それはつまり、無責任に能天気にとにかくやりたいことを始めちゃってモチベーションを上げる活動ってことじゃない・・・?今自分を取り巻いている環境には都合よく目をつぶって、何の保証もないけどとにかく動いてみる。気分転換にもなりそうだし、うん、なかなかいいかも。じゃあとりあえず手近なところからってことで、頭の中のイメージを言葉にしてみようか・・・!

 そしていくつか思い浮かんだ手段のうちのひとつが、「私生活を発信しなくても、高評価を稼がなくても、自分の思考や興味を書きつけておくことが許されている場」というイメージがあったnoteだった。SNSよりは読み物に近くて、ブログよりは手軽というところもぴったりかもと思った。年が明けたらなんてだらだらしていたら完全にタイミング失うよな・・・うーんもういいや、始めちゃおう!

 こうしてわたしは重い重い腰をやっとこさ上げ、noteの中だけの個人商店を旗揚げすることにしたのだった。その日は新月で、迷信と言われればそれまでだけれど部屋の中にはいいことが起きそうな気配が立ちこめていた。心の中に本当に久しぶりに明かりが灯った夜だった。

(次回に続く・・・)

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