【第0夜】空想商店よるべの成分④
前回までは店主の東京離島との縁の話をテーマにしてきた。今回はそんな店主がnoteを始めることにしたきっかけの話に進みたいと思う。
はじまりはじまり
働き始めた最初の頃は仕事も生活も不慣れなことの連続で、それこそ生活するだけで精一杯だった。それでもすこしずつ余裕が出てくると、島での生活はやはりおだやかで心地よかった。桟橋で魚を分けてもらったり、黙々と山道を散歩してみたり、台所で大家さんに郷土料理の実演をしてもらったり・・・ここでしかできないことを楽しめている、そんな実感があった。
阻まれて、冬
しかしそんな日々と並行してわたしはとあるトラブルに巻き込まれてしまった。ひとり暮らしの孤独感に島特有の濃い人間関係が拍車をかけ、誰にもどこにも感情を吐き出せないというかなり厳しい時間を過ごすことになってしまったのだった。極端な思考に走り、家の中にこもるようになったわたしは、気づいたら表情の落ちた顔で動画を眺めて休日を使い切るようになっていた。人は本当に絶望するとむしろ笑っちゃうことなんて、知りたくなかった。
そうこうしているうちに季節はめぐってしまい、2年目の年末が迫ってきていた。世の年の瀬ムードに影響されて、今後のキャリアプランやライフプランについて考える時間がだんだん増えてくる。しかし何を考えるにしても、結局は今いる島とどう関わるかという問題に行きついてしまう。これは逃げないでちゃんと向き合わないとだめになるやつかも・・・―悪い予感に突き動かされるように、わたしは一旦頭の中を整理することにした。
(次回に続く・・・)
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