見出し画像

【第0夜】空想商店よるべの成分⑥

 そんなこんなで開業の運びとなった当店だが、コンセプトはすべて店名に込めたつもりだ。今回は最後に、「空想商店」と「よるべ」に分けて当店の方向性について話をさせてほしい。

「空想商店」について
 まず当店は、そのときどきであつかう商品を変える。店主の思いつきでその日のイチオシが決まる、世にも自由ななんでも屋だ。食べ物、飲み物、植物、雑貨、サービス、音楽、時間、空間、なんでもあり。商品だけでなく店構えも変幻自在、営業時間も価格帯もターゲット層も従業員数も、その日の気分で店主が決める。ルールはひとつだけ、何屋であっても必ず「離島の店」でなければならないということ。
きらびやかな大都市や人里離れた山奥ではなく、海に囲まれた離島にたたずむ商店。ここから思い浮かぶイメージをとにかく解像度高く言葉にしてお届けしていこうと思う。

「よるべ」について
 そして当店の屋号ともいえる「よるべ」だが、これは漢字で書くと「寄る辺」。「頼みにする人やもの」という意味をもつ言葉である。普段は「寄る辺なき身」や「よるべなさ」といったうら寂しいニュアンスで使われがちだが、店主としてはそこが気に入ってこの言葉を選んだ。迷ったり行き詰まったりしたときのよりどころがほしい―そんな店主の切実な気持ちから当店は生まれた。ひとり悶々と過ごしたあの季節を振り返ったとき、寂しさや孤独と表裏一体ながらもどこかあたたかい感じのする「よるべ」という言葉がとてもしっくり来ると思ったのだ。

 さらにこのイメージはそのまま当店の理想像にも重なった。出会いは偶然だったけれど、たたずまいがなんとなく忘れがたい。そういう店はつらくなったり逃げたくなったりしたときにふと思い浮かんで、その人を救うと思う。関わるすべての人にとって当店がすこしでもそんな存在になれたらいい。そんな想いで、屋号は「よるべ」に決めた。

漕ぎ出すとき
 6回に分けてお送りしてきた【第0夜】はこれにて終了となる。この先当店がどのように進むかは、店主にもまだわからない。しかし漠然とではあるが、心地よい方向に進むような気はしている。自分の直感を信じて身をまかせ、気の向くまま空想に浸ってゆこうと思う。

 ここまでお付き合いくださった皆さま、見守っていただきありがとうございました。長らくお待たせいたしましたが、空想商店よるべ、いよいよ開店です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?