本物の刺身ポケモン



とある食事会で、二人の男が言い争いをしていた。


「士郎、貴様には刺身の、いや魚の違いもわからんのではないか?」


「なんだと?馬鹿にするのもいい加減にしろよ」


「貴様のような男が選ぶ刺身であれば、こちらは下魚でも上回るであろうな。ウワァハッハッハァ」


「言いやがったな!俺も下魚を持ってきてやる!勝負だ!」


「良かろう!来月、美術展終了に合わせて懇談会がある。食事の席で貴様に料理を語れる舌が無いことを、教えてやろう!」

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会社にて

入社早々、すごい場面を見てしまった。芸術家であり、そして美食家としても有名な海原雄山。声も顔もおっかない人だった。そんなおっかない人に、うちの会社の先輩が喧嘩を売った買ったの大騒ぎだ。


僕の名前は小畑慎吾。シンコってあだ名で呼ばれている。前は寿司屋で働いていたが、ヘマが多かったのと、職人としての自分に限界を感じて辞めてしまった。でも親方は心配してくれて、知り合いの新聞社を紹介してくれた。僕は新聞のことなんかわかりません、と断ろうとしたが、なんでも食事に関して動いている部署があるらしい。そこならお前の経験を活かせるかもしれない、と。


親方のおかげか分からないが、無事採用。最初の外仕事は食事会の受付だったんだけど、まさか先輩社員が喧嘩を始めちゃってもう大変。なんとかその場は収まったけど…


副部長「やまおかぁぁぁあ↑!お前はどうしていつも揉め事をおこすんだぁぁぁぁあ↑」


部長「うーん、会社として参加していた食事会だからね。流石にあれは良くなかったよ」



この異常に声が高い人が副部長、落ち着いたナイスミドルが部長だ。

山岡「…すみません」


そして不機嫌そうなこの人が山岡さん。まだ出会ったばかりだが、明らかに不良社員だ。昼寝しているし、態度も悪い。ちょっと怖い。


栗田「あの、すぐ止められなかった私も悪いんです。このカマスジョーの刺身美味しい〜ってはしゃいでしまって、山岡さんは美味しい刺身について教えてくれていただけで…シンコ君もごめんね、仲裁大変だったよね…」


この可愛らしい人は栗田さん。明るくてしっかりしている。新入社員の僕にも面倒くさがらず色々教えてくれた。


山岡「そうだよ、喧嘩売ってきたのは向こうなんだぜ…馬鹿にしやがって」

副部長「お前なぁーーー!↑ただでさえ仕事しないのにな〜ーーにが勝負だ!究極のメニューの記事だって全然進んでないんだろ!!↑シンコ君にも仕事教えてないんだろ?!↑」


甲高くて耳障りな声だが、副部長の言う事は正しい。僕たちの部署は、ジャンルを問わず究極の美食を決める記事を書いてる。山岡さんと栗田さんはその担当で、僕も寿司屋の経験を活かせるのではないかという事で担当に加わった。

ガシャッと背もたれに寄りかかる山岡さん。不機嫌さを全く隠そうとしない。


部長「じゃあ今度の刺身対決も、いっそ記事の内容に組み込めないかな?慎吾君も得意分野だろう。仕事の教育がてら、魚のプロの力も見せてもらおうじゃないか」

「そんな、僕は


山岡「さっすが部長、どこかの上司と違って素晴らしいご意見!よし、早速市場調査に行こう!じゃあ我々はこれで」


副部長「おいっ山岡!!↑お前…


バタンッ


栗田「逃げたわね…」



魚屋にて


山岡「はぁ〜嫌だねみんなして、喧嘩売られた俺は被害者だっていうのにさ」


「はぁ…」


半ば強引に、外に連れ出されてしまった。何も話さないのも気まずいので、こちらから簡単に身の上話をする。へぇ、寿司屋だったんだ、と山岡さん。入社日の自己紹介で言ったんだけどな…。


どこの寿司屋か聞かれ、カントーの鳳寿司ですと答えてから山岡さんの表情が明るくなった。


山岡「鳳寿司って言ったらカントーの名店じゃないか。そりゃすごい」


「いや、僕は辞めてしまったので…」


山岡「いやいや、あそこに居ただけでも大したもんだよ。昔ながらの職人の店って感じだったからね。修行は厳しかっただろう?」


「はい…」

山岡「鳳寿司にショーヘイ君?ショウタ君だっけ?若い職人が居てさ。彼に握ってもらったバスラオの握り、あれは美味かった。下処理に無駄がないんだろう。しかも小手返しで握る職人が多い中、彼は正確な本手返しだ。厳しい修行を積んだろうねあれは。若いのに大したもんだと感心したよ」


食べ物のことになるとよく喋る人だ。そして詳しい。自分が居た店を褒められるのは嬉しいような、後ろめたいような、悔しいような…不思議な感覚だった。寿司職人を諦めた未練みたいなものが自分の中にあるのかもしれない。


山岡「着いたぞ。よし、見ててくれよ…」


魚屋に着くなり、山岡さんは売り場の魚ポケモンを選び始める。バスラオはこれとこれ!ヨワシは…これ!クラブは…これ! という具合に指差して行く。


山岡「どうだいシンゴ君。悪くないのを選んだだろ?君の目利きも見せてくれよ」


驚いた。「寿司職人の腕は目利きで決まる」と言われるくらい、良い魚を目で見て選ぶ力を要求される。僕は他の職人と比べると目利きに自信が無いが、流石に素人よりは見分けられる。山岡さんが選んだのは良い物ばかりだ。やはり只者ではない。


「その2匹であれば…右かなぁ。どちらも活きが良良さそうですけど、えーっと…今の季節のバスラオは出産前で、お腹側が膨らみます。わずかですが右の方が〜…」


山岡「ほぉ〜本当だ。大したもんだ。パッと見て違いが分かっちゃうんだな。じゃあこっちは〜…」


しばらく、魚の話だけで盛り上がった。怖い先輩だと思っていたが、案外面倒見が良い人なのかもしれない。打ち解け始めた頃、ふと質問される。


山岡「そういえば、なんでシンコって呼ばれてたんだい?あだ名かい?」


僕は一瞬硬直した後、ゆっくりと伝えた。


「季節の最初に取れるコイキングを、僕たち…いえ...寿司職人はシンコって呼ぶんです。まだ身が小さくて、あまり美味しくないのが多くて…。だから職人として駆け出しとか、いつまでも成長しない奴をシンコって呼んだりするんです。僕の場合、名前もシンコに似ているから余計に…はは…」


明るく話したつもりが、ちょっと暗くなってしまった。山岡さんは魚売り場を眺めながら答える。


山岡「ふ〜ん…


よし、今度の刺身対決、コイキングで行こう。手伝ってくれよシンゴ君」


「えっ?!コイキング?確かに下魚ですけど…」


コイキングは魚ポケモンの中でもかなり安価だ。庶民の食卓の味方、まさに下魚なのは間違いないが、他の海産物と比べると見劣りしてしまう。身の味は悪くないが、皮と骨が多い。一般家庭ではともかく、食通はあえて食べないだろう。


山岡「シンゴ君のおかげで一つ思いついた。君の協力が必要だ。明日は知り合いの漁師の所へ行こう」


その後、山岡さんは電話越しに副部長からめちゃくちゃ怒られながら「とにかく明日は直行直帰します!シンゴ君も一緒に!取材費は立て替えるんで!!」と大声で宣言し、電話を切っていた。大丈夫だろうか…


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食事会にて


クチバシティ某所、食事会会場。テレビで見たことがある有名人も数人いる。美術家、政界人、思ったよりも大物だらけだ。緊張してきた。海原雄山がマイクを握る。


海原「今回のお食事は、僭越ながら私の美食倶楽部が用意させて頂きました。皆様にお出しする前に一つ、食べ比べの余興にお付き合い頂きます。

今回の美術展のメインテーマは『庶民の暮らしと芸術』でありました。それにちなんで、庶民も食していた所謂下魚。それを刺身で食べ比べて頂きたい。


ある新聞社さんがぜひ対決したいと申し出がありましたので、私がお出しする物と何が違うのか、比較して楽しんで頂ければ幸いです。」


山岡「ケッ…余興でクイズ気分ね…随分なめられたな…」
栗田「ちょっと、声大きいですって…」


山岡さんは海原さんを前にするとすごく攻撃的になっている気がする。僕と二人の時は良い先輩だったのに。

緊張している僕の隣に、体格の良い老人が座る。


「おっ、やっとるな。隣失礼しまっせ」


栗田「あら、京極さん」


京極「うまいもん食えるって聞きましてなぁ。山岡はん、今回は何を持ってきたんや?」


栗田「それが私達も聞いてないんです。山岡さんと新人のシンコ…いえ、慎吾君が用意したんです。前はお寿司屋さんで勤めてたのよね?」


京極「ほぉ〜良い新人が入りましたな。楽しみや〜」


軽く挨拶をする。京極さんと呼ばれた老人はにこにこしながら席に着く。詳しく分からないが、風貌から察するにお金持ちで食通なんだろう。


僕は緊張でそれどころではなかった。


海原「では東西新聞の方の刺身から、どうぞ」


各テーブルへ刺身が運ばれて行く。僕が用意した刺身だ。緊張はピークに達した。会場がどよよっ…っとざわめきだす。


『なにかしらこれ…』
『しっかりした身だな...』


京極「ほぉ〜これは!コイキングの刺身やな?包丁の入れ方もしっかりしとる、うまそうや」


栗田「本当においしそうだわ!コイキング、焼くか煮るかのイメージがありましたけど刺身にすると綺麗なんですね」

京極「コイキングは皮と骨が多い。せやから、あら汁のようにして煮て食べるか、しっかり焼く料理が多いんや。身だけを綺麗に切るには腕がないとあかん。単純なようで、大したもんやでこれは。ほな、頂きます」


各テーブルでも次々と刺身が口に運ばれていく。どよめきから「おぉ〜〜」という歓声に変わり始める。


栗田「すっごい弾力!コイキングの刺身ってこんなに歯応えがあるんですね!」


京極「こりゃ驚いた!普通のコイキングの刺身はもっとまったりした口当たりやけど、この刺身はまるでシェルダーの舌のような歯応え!それでいて白身魚ポケモンと赤身魚ポケモンの中間のようなあっさりとした、独特の風味が際立っとる!初めての食感や!美味いで山岡はん!」


副部長「いやぁ〜〜ーーうまい!↑よくやったな山岡ぁ↑きっと天然の、良い場所で取ってきたんだな〜〜↑あ!?さては怒りの湖まで行ってきたのかあいつぅ〜〜↑」


「副部長、実はそのコイキングは…


キィン…ッ!


マイクの短いハウリング音で僕の発言は遮られた。山岡さんがマイクを握り、話し始める。


山岡「皆さんにご賞味頂いたのは、コイキングの刺身です。皆さんもご存知のように私達の国は海と川の国です。そこで多く取れる魚は、まさに庶民の支えです。」


落ち着いた口調で語る山岡さん。普段の職場での様子が嘘みたいだ。カッコいい。


山岡「そしてこのコイキングの産地は…クチバシティ。知り合いの漁師から譲って頂いた…養殖物です」


『こんなに美味しいのに養殖なの?!』
『クチバシティの養殖場って、すぐそこじゃないか!』


会場が再びざわめく。


山岡「魚ポケモンは天然物が美味い、と考えている方は多いでしょう。確かに天然物は美味いものが多い。しかし養殖が不味いということは決してない。安くて、美味い物を食べたい。そんな我々の欲求に応えるべく、研究と研鑽を積み上げ続けているのが養殖業界です。

自然界のポケモンが、栄養バランスを気にして食事を取るでしょうか?養殖場では、我々庶民が美味しく食べられるよう、徹底した管理と安全な環境で魚ポケモンが育ちます。そしてなによりも…」


山岡さんが皿を持ち上げる。会場はすっかり目を奪われている。


山岡「鮮度です。刺身ほど、鮮度の影響を受ける料理はありません。コイキングと言えばジョウト地方の北端、怒りの湖の物が上物だとされています。たしかに美味いが、ここクチバシティで食べようと思うと、保管、輸送をしなければいけない。それらの技術も同様に発展し続けていますが、やはり産地は近い方が良い。


今日はクチバシティが会場で良かった。こんなに美味いものが、すぐ近くにあるんですからね」


パチパチパチ…と拍手があがる。すっかり聞き入ってしまった。山岡さんは思っていたより凄い人なのかもしれない。


京極「山岡はん!養殖で新鮮だからって、この食感は出まへん!まだなにか隠しとるやろ!」


京極さんが優しい声でヤジをあげる。会場の人々も、興味津々な様子で山岡さんを見る。


山岡「流石京極先生、では説明しましょう。この刺身は…レベル50のコイキングです



会場がざわつく。

副部長「レベル50〜〜?!↑何言ってるんだ山岡ぁ?!そんなのとっくにギャラドスになってるだろ〜〜?!↑そんなコイキングみたことないよっ?!↑」


栗田「あっ…もしかして、かわらずの石…?」


山岡「安全な環境でオボンの実、オレンの実、ふしぎなアメ…適切な栄養と経験値稼ぎを行います。かわらずの石を持たせた上でね。そして対戦時にもっとも脂の乗るレベル50まで育てます。一般家庭に出回ることは殆どないでしょう。とびはねるバトル等、一部のトレーナーが特殊な運用をしない限り、目にすることがありません。

そんなコイキングを刺身にする機会はもっと少ないでしょう。庶民の工夫が、この美味さを生んだと言えるでしょう。


立派に育ったコイキングは、骨も皮も頑丈になり、綺麗に刺身にするのがどんどん難しくなります。それをさばいてくれた我が社の『職人』も、美味さを生んだ一人です」


会場から再び拍手があがる。僕の気分も晴れやかだ。自分が出した料理を喜んでもらえる、久々の感動を噛み締めていた。


部長「確かに美味かったし、会場の雰囲気も良い。これは勝てるかもしれないね」

京極「海原先生がどう仕掛けてくるんか、楽しみやな」


海原雄山に目をやると、腕を組んだまま座り、にやりと不敵な笑みを浮かべている。合図と共に、美食倶楽部側の刺身がテーブルにならぶ。美しい葉の皿に、輝く身が鎮座する。


最初よりも大きなざわめきが会場を包む


『なぁにこれ…?!』
『光ってる?!なんの身だ…?!』


栗田「見たことがないわ、すごい綺麗…!」


京極「こ、これは...!!」


まるで高級な宝石のように輝く刺身を、恐る恐る口に運ぶ。とろけるような口当たりと、強烈に広がる旨味。これは…!!


京極・シンコ「色違いコイキング…!」


後編 黄金の刺身


会場は騒然とし、収まらなかった。あまりにも強烈に美味い刺身を食べ、皆興奮していた。


栗田「シンコ君、コイキングですって?!さっきの刺身と全然違うわ!」


「僕は一度だけ…将太君…友人の色違いコイキングの握りを食べた事があります。すごく珍しいので、なかなか食べれません…


下に敷いてあるのは…イバンの葉だ!これもすごく貴重だ…生臭さを消し、透き通るような風味を与えているんだ…!」


栗田「イバンってあの貴重な木の実よね?すごいわ…」


京極「おぉ…おお…!うまい…ほんまにうまい……!まるで最高級の赤身魚ポケモンや!昔食った色違いコイキングよりも、強烈なうまさや…!」



海原雄山が立ち上がり、マイクを握る。


海原「皆様にご賞味頂いたのは、コイキングの刺身です。ジョウト地方の北端、通称怒りの湖の色違いコイキング…その中でもレベル19まで育ったものを選びました。


レベル20になると赤いギャラドスに進化し、身は硬くなり味も落ちる。あの赤さはヘモグロビン、つまり血の赤さが濃いことに由来している。進化前のコイキングも必然的に、赤身魚ポケモンに近い濃厚な旨味が出る。レベル19もっとも旨味が乗った状態です。


そして東西新聞の方の発言を一部訂正させて頂きたい。魚ポケモンはいつ食すのが美味いかという話だ」


「あっ…!」


僕はなんてバカなことを…山岡さん…



海原「例えば貝ポケモンは〆てすぐに食した方が食感は良い場合が多い。しかし味はどうか。〆て2〜3日目が最も旨味が成熟する魚ポケモンは多い。特に赤身物はその傾向が強い。


コイキングは白身と赤身の両方の特徴を持つとされているが、旨味は赤身部分にある。すぐに食せば食感は良いであろうが、肝心の旨味はまだ熟成されていない。ジョウト地方で釣り上げて〆て、血の旨みを失わないよう処理する。皆さんが食す時が、最高の頃合いになるように。


養殖技術がなかったはるか昔、色違いコイキングを釣り上げた村人はアルセウス神からの恵みとして崇め、自然に感謝しながら村人全員で分け合ったと歴史には残されております。自然の中で生まれた様々な奇跡が重なり、庶民の口へ届いていた。皆さんに召し上がって頂いたのは、自然が生んだ奇跡を積み重ねた味です。それでは引き続き、お食事をお持ちしましょう」


パチパチパチパチパチパチ


力強い拍手が起こる。これは、完敗だ。


マイクを置いた海原雄山が、うなだれる山岡さんへ近づく。


海原「お前がやった事は、道具を自慢するだけの画家と変わらん。どう作ったかではない。何を作ったのか。どう食えば美味いのか。その本質に目を向けられぬ人間が料理を語るなど、片腹痛いわ


しかもレベル50のコイキングだと?そんな人間が作った歪み、食文化に持ち込むな!!進化キャンセルなど言語道断!!恥を知れ!!」


山岡「ぐっ……クソっ…!」


京極「山岡はんの刺身も美味かった。特にあの身の弾力、食感は初めての体験や。ただ…旨味の差が圧倒的やった。もはや下魚の領域やない。まるで芸術作品や…」


????「待ったぁ!」


野太い声が響く。90歳くらいだろうか?姿勢の良い老人だ。


「そんな貴重な色違いポケモンを!!食うな!!!」


その叫びに、盛り上がっていた会場は静まりかえる。


栗田「あの人もしかして…


オーキド博士だわ!


オーキド博士と言えば、ポケモン研究の権威だ。現代のポケモンと人間の共存文化を作った要人だ。


オーキド「養殖ならまだしも、天然の、しかも色違いポケモンを食う必要ないじゃろ!お前ら美食屋も料理人も、己の欲求の為に平気で環境を壊す!人殺しと一緒じゃ!何考えとるんじゃ!!」


険しい顔の海原が口を開こうとした時、また別な所で初老の男が挙手し、立ち上がる。



「お……お、親方…!?」


京極「鳳はんやないか!全日本寿司協会会長の!」


栗田「親方ってことはシンコ君、あなたが働いていたお店の?」


鳳親方はマイクを握る


鳳「一人の寿司職人として、そして寿司協会会長として感想を述べたいと思います。両者とも、素晴らしい刺身だった。私もレベル50のコイキングを捌いたのは一度だけありますが非常に大変な仕事だった。大したものです」


親方が僕の方に目配せして語る。お見通しだったようだ。


鳳「そして天然の色違いコイキングの刺身。それを最高の状態で我々の口に届けた海原先生も、本当に良い仕事をしておられる。見事だ。それから…


オーキド博士。あなたの言う様に、我々人間の欲望が自然を破壊し、生物を滅ぼしてしまっているのは事実です。しかし我々寿司職人も料理人も、皆様に美味しいものを食べて頂きたいという志の下、日々研鑽しております。海原先生の刺身はその極地とも言えるでしょう。


人殺し等と言われて黙っていては、私も立場がありません。どうでしょう、ここは一つ私と…」


オーキド博士が別なマイクを使い、発言を遮る。


オーキド「よろしい料理対決じゃな!ワシはポケモンを一切使わずとも美味い料理があることを教えてやるわい!どうじゃ山岡くん!新聞社としてワシと組まんか!?自然破壊について考えさせてやるわい!」


山岡「あっ…えぇっ…?!」

静まっていた会場が、一気にざわめく。


栗田「そんな…私達は今、食生活の殆どをポケモンに頼っているわ。ポケモンを使わないなんて、あとは木の実くらいしかないじゃない」



鳳「では私達は、ポケモンを使った最高の一品で、あなたにも料理の素晴らしいを感じて頂きましょう。私達寿司協会と、美食倶楽部の威信を賭けて。よろしいですかな?海原先生」


海原「鳳征吾郎…!お前には借りがあったな。良かろう…ポケモン学会から挑まれた勝負、断る理由はありますまい」

立ち上がり、オーキド博士と対峙する鳳親方と海原雄山のタッグ。


会場は、まるで格闘家の試合前のような興奮に包まれたまま、その日を終えた。


これはとんでもないことになってきたぞ…!




続く



発作が起きたら続きを書きます



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