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EVOJ 遠征記外伝 自意識vsウメハラ

大型格ゲー大会、EVOジャパン2024が無事終わった。チケット問題やボランティアへの周知の遅さ、詳細発表のギリギリっぷり等気になった点はあったが、概ね「無事終わった」と言えるであろう。

その時の遠征記はすでに残したが、会場内での私の葛藤をこちらに残しておこうと思う。キモくて惨めな記事なので、恥ずかしい中年男性を見たい方のみ読み進めてください。

↑遠征全体の記録はこちら


vsウメハラ

EVOJは規模の大きい大会なので、参加者が多い。テレビカメラも回っていた。当然、プロゲーマーや有名配信者、コスプレイヤー、海外選手、コスプレイヤーも多い。


そしてウメハラダイゴがいる。

私は格ゲー中毒者の無名雑魚だが、現役のプレイヤーのつもりでいる。有名人達のファンボーイ(おじ)ではない。周囲は、動画で見るプロ選手や、スポンサーが居ないだけの強豪プレイヤーだらけ。そりゃ大会なんだから居て当然である。今日は俺も選手だ。写真撮ってくださいとか、サインくださいとか、応援してますとかそんなことは一々やらない。格ゲーが上手くなるわけでもない。

脳内では「うぉぉメナでっけぇ〜〜お腹触りてぇ〜〜☺️」とか思っても顔に出してはいけない。憧れると越えられなくなってしまう気がする。実力は伴わないが意識だけは高い。だから私はウメハラダイゴに対しても、同じスタンスでいなければならない。

私の人生は、いつも傍に波動拳と昇龍拳があった。えんぴつを握った時間よりもコントローラーに触れている時間の方が長いし、家よりもゲーセンに居た時間の方が長い。人に挨拶した数よりも、昇龍拳を撃った回数の方が多いだろう。少年期、ウメハラリュウに強烈なショックを受け、出来もしないのに真似して近距離波動拳を撃っては飛ばれて負けていた。

そのウメハラ氏と一度だけ対戦できたのは、私が大学生の頃。場所は、震災でなくなった仙台のゲーセン、宝島台原店。タイトルはストリートファイター4無印。時刻は午前9〜10時頃。ウメハラリュウと私のバイソン。試合展開も覚えている。バックジャンプ逃げするウメハラへウルコン対空を決め、そのままとっておきのセットプレイで最後の起き攻めを仕掛け……割愛する。

↑当時の思い出を書いた過去記事

4月28日、EVOJ2日目。私は友人の某チップ使いと会場に居た。その時間は某のスト6の試合が控えていたので、応援兼荷物持ちとして同行していた。有名人が多いこともあり、スト6ブースは人口密度が異常に高かった。

ほとんど有名人を知らない某チップ使いが、珍しく耳打ちしてきた。

「えっっ隣にいるの…ウメハラさんじゃ…?」


そう、気付いている。私は数分前から気付いていた。試合を待つスペースで、腕を伸ばせば耳を掴めてしまう位置にウメハラが居る。本物だ。私は長男なので我慢できたが、三男のファンボーイならば、嬉ション失禁・リアルバトルハブが始まっていたであろう。

私は平静を装い応える「そりゃ大会なんだから居るでしょうよ」「いいから次の試合相手見とけよ」と


なんとも滑稽である。本当だったら、「俺スト4の頃仙台の西友の上のゲーセンで対戦したバイソン使いっす!セイユーバイトの制服着てたクソガキです!ずっと覚えてます!散々言われてると思うんですけど応援してます!もうちょい健康に気をつけてください!栄養って概念、コーチングしていいすか?!あと…省略」 

まぁ感情が爆発してしまう。他にも強いプレイヤーはいるし、私はウメハラ信者でもないが、やはり2D格ゲーの栄光を繋いだのはこの人と言って差し支えないだろう。特別な存在なのである。


グッと堪える。グッと堪えた。


初めてウメハラさんと対戦したのが何年前か数えるのが怖くなる程、年月は流れた。しかし私は変わらず格ゲーを続けているし、ウメハラさんも現役だ。しかも同じ大会会場で傍に立ち、同じモニターを、同じような姿勢で眺めている。これが一番嬉しかった。


俺は選手の一人であり、今は某チップ使いのセコンドである。何より、ファンとして媚びてくる中年男性がウメハラに何を与えられるだろうか。不快感、倦怠感くらいであり、声をかけられ慣れているウメハラ氏からすれば退屈な作業であろう。それは嫌だ。


めちゃくちゃ近くにウメハラを感じながら、試合開始を待つ。モニターに集中し、某の試合が始まる頃には意識がスト6に向いていた。もっと飛んで良さそうじゃないか?相手ルークだけど飛び少ないな、たぶんまた当たるから名前覚えておこうな、等とやり取りし、自分の試合の準備をしているうちに、堪えていた感情はどこかへ行ってしまった。

後悔はなかった。あの瞬間、私は格ゲーマーであることができた気がした。


vsフォロワー


オフイベントの時に毎回発生する葛藤。「こっちから声をかけるの気が引けるよね問題」

毎回愚痴を書いている気がする。

試合を観戦していたら、近くに見覚えのあるコントローラーを持った人がいる。Twitterで私をフォローしてくれている人だ。しかも私のnote記事を面白いと褒めてくれていた。この時点で私からの好感度は相当高い。

ここで自然に「すみません、◯◯さんですか?星川実業と申します、いつもどうも」と声をかけられたらスマートだろう。私もいい大人だ。それくらいのコミュニケーションはできるはずだ。

しかし、脳内に存在する別次元ゆいゆい(ギルティギアシリーズレジェンドプレイヤー。女性声優ではない)がありがたい釘を刺してくる。

「それって『欲しがってる』だけやんな?なぁ」「いい歳してなにやってんのきみ?」


言葉が鋭利すぎる。でもそこが好き……


そう、相手視点からすればかなりキモい。リプライされたわけじゃないのにアカウントを把握していることも、コントローラーで相手を識別している所もキモい。死角から現れたスーパーテンツクみたいなニヤケ顔の中年男性がボボボボ…と小声で突然喋り出す。キモすぎる。もし俺の記事好きでしょ?みたいな態度が出てしまったら、切腹を命じられるレベルのキモさになる。

ここは何もしないでおこう。私は格ゲーマーである。SNS上ではずっと様子がおかしい怪文製造装置かもしれないが、実際は押しに弱い物静かな中年男性である。喋るたびに怒られるから余計なこと言わないというライフハックを得た。


試合時間も近づいたので、静かに移動する。


「あっっ!星川さん!」


オフで交流があったプレイヤーが声をかけてくれる。ちょっとしか会ってないのによく顔覚えてるな、と感心しつつ、お互い次の試合が近いので足早に別れる。


一瞬だったが、とても救われていた。自分が格ゲーを続けていなかったら、あるいは記事を書き続けていなかったら誰かから声をかけてもらうことはなかったであろう。


振り返ってみると、対戦やnoteをきっかけに知り合った相手は多い。初心者の頃に少し教えたら今でも格ゲーを続け、感謝してくれる人が居る。微力だが、格ゲー業界に貢献できている気がして嬉しい。自分の活動は無駄ではなかった。


自分から声をかけられない自意識拗らせ中年だが、もうそれは仕方ない。相手から声をかけてもらえるような実績を出せばこの問題は解決するじゃないか。がんばろう……


vsコスプレイヤー


血の涙が止まらない。


忘れもしない、過去のコスプレイヤー問題。自宅で穏やかに配信している私のもとへ現れ「EVOJ会場でユリコタイガー氏と会ったわwww」と煽って帰っていった某タックス氏。

絶対に復讐してやると誓った強い執念は一切風化せずクラピカもひっくり返るレベルだ。しかし、私は動けずに血の涙を流していた。


周囲は有名コスプレイヤーや配信者で溢れている。皆、ファンと写真を撮ったり、サインを書いたり、過去の配信話で談笑し交流を深めている。


私は福本作品のように目を瞑り 
l >L<  l←こういうやつ 

ただ時が過ぎるのを待っていた。石田さんのように、声を殺して勝負から降りるような勇気や潔さもない。鉄骨の上で、ただ直立している。何も好転しないのに。

石田さん……


上記で述べたように、私は自意識を拗らせている。写真いいですか?ファンです、応援してます。それだけでも伝えれば充分交流できる。魂のステージがあがる。コスプレイヤーさんとお話しできたぞ!と、湿った洞窟のゴブリン仲間に土産話ができる。


しかし、動けない。冷静な自分が問いかけてくる。お前が声かける意味あるの?時間と労力を奪うだけでしょ、と。お前は格ゲーマーだろ、何しに来てるんだ、と。


もう敗退したもん…今は一般参加者と一緒だもん……と弱々しく反論するが、冷静な自分は態度を変えない。お前がやるべきはさっさと宿に戻って休み、試合の反省をすべきなんじゃないか。ゲーセンなら練習できるぜ、朝4時までトレモしな!と。

格ゲーマーの朝は早い


あとは、お金を払わずに女性や男の娘と会話するのが怖い。対価払ってないのに交流していいんですか??罰せられますよね??牢に入りまーす(バタァァン(コナンのアイキャッチ)みたいな気持ちになってしまう。

なぜ俺がこんなに追い込まれなきゃいけないのか。俺が弱いからいけないんだ。なんの実績も魅力もない、油断するとポケモンのゴクリンみたいな面して転がってる中年男性だからいけないんだ。


本当は羨ましかったんだろう。コスプレイヤーと写真を撮り、伊織もえとチャットしながらエーペックスをしていたカス男どもが。絶対的な敵だと認識したのは、自分ではできない行為を平然とやってのけてるからなんだろう。


俺はこの痛みを忘れない。強くなって有名レイヤーから「この後予定ありますか?ご飯でも行きませんか?」って言われて「すみません、試合の振り返りしたくて…」と断り、なんで断るんだ俺は〜ーーーーって頭を掻きむしりながら格ゲーと一夜を過ごす。そういうバトル宮沢賢治でありたい。



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