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マツタキなる人々を訪ねて①磐長姫の声を聞く人


マツタキ今昔物語絵巻は、
実際に起こった歴史や伝説、実在する人物や物語が根幹にあります。

そのために、
丁寧に取材をしてきました。

以前は、
制作当初のプロジェクト、松崎町「絲」concept(以下、絲コン)のwebサイトで公開されていたインタビュー記事でしたが、
絲コンの解散により閉鎖したwebサイトと共に、静かに深く眠っておりました。

せっかくの素晴らしい記事が、
もったいない!と。

マツタキ今昔物語絵巻BOOKの発刊にあわせて、
ライターの住さん協力のもと、
もう一度、皆さまに知って頂きたく、
移行することになり、
noteをはじめたわけであります。

もうお亡くなりになられてしまった方もおりますが、
貴重なインタビュー記事を、
これからご紹介していきますので、
是非とも読んで頂きたい。

まずは、
本編はじめの「美しき磐長姫」。
この題材にも、
実在する女性がいるのです。

高橋信子さん。



夫婦岩越しの富士山が美しい雲見は、
温泉が湧き、
川の流れる狭い路地に小さな民宿が並ぶ風情ある地域だ。



雲見温泉の民宿のひとつ、
「半右衛門」のおばあちゃん・高橋信子さんは91歳。

実は、
民宿のお客さんとは別に、
高橋さんに会いに遠くから半右衛門を訪れる人がいるという。

お願いすると、「神様が教えてくれる」と高橋さんは言う。

失くし物のある場所を言い当てたり、
身体の不調の原因を言い当てたりと、
「見えないものを見る人」として知られているのだ。

ー目に見えないことは、人間にはわからない。

話をしていると、
自然に頭に入ってくる、悟らせてもらう。

高橋さんは、自身の不思議な力についてこう述べた。


高橋さんは、
子供の頃から、理由はわからないがお祈りが好きだったそうだ。

小学生の時は「神様なんかいない!」と言う親と喧嘩したこともあったとか。


雲見には、
標高162mの烏帽子山にある神社「雲見浅間神社」がある。

急勾配の岩山である烏帽子山は「火山の根」。

麓の鳥居から石段130段を登って拝殿へ、
そこから石段320段を登って中の宮へ、
そして、
人ひとりがやっと通れる本格的な山道を登ってやっと本殿にたどり着く。

全国でも珍しい、
富士山の御神体・木花佐久夜毘売命の姉・磐長姫命を祀る神社のため、
眺望のいい烏帽子山で富士山のことを褒めると磐長姫の嫉妬を買って祟りがあるとも言われている。

本殿のある山頂からの風景


高橋さんは、
雲見浅間神社のご神体・磐長姫命の声を聞くことができる霊媒師である。

信仰の深かった高橋さんは、
昭和37年(1962)、30代半ばの時に、天理教の布教免状をもらう。

その際、夫に内緒でふた晩お参りのために家を明けた。

夫にそれが見つかって止められるかと思ったが、
逆に「やってみれ!」と背中を押してもらったそうだ。

昭和38年11月、雲見浅間神社へ修行向かった。

水をかぶって夜の12時に頂上まで上がり、
祝詞をあげることを1ヶ月続けたそうだ。

板の間にゴザを敷いただけの、
中腹の拝殿で一生懸命汗をかきながら祈っていたら、
頂上から磐長姫が降りてきたという。

右手で髪の毛を挟んで、
左手で着物を押さえていた美しい姿を、
私たち取材陣にも再現してくれた。

髪を右手で挟む磐長姫の再現


そして、
「神の雛形」としてこの地域の人を支えるようにと神託を受けたそうだ。

高橋さんは言う。

「神様が、ここに行って拝んでやりなさい、と教えてくれる。
神様の使いとしてやっているのだというとを忘れない。
人間には決してわからないこと」

行ったことのない場所、見たことのないものなど、
人間には決して見えないものが絵として頭の中に入って来るのだそうだ。

なので、地元の人はあまり見ない。

自分の目で見ていることが多いから解釈が入ってしまい間違えると、
慎重に話されていた姿が印象的だった。

「馬が乗り移った青年」と言う、
高橋さんの力で救われた、
驚くような話も伺った。


ともすれば、
美しい妹に嫉妬する「悪役」のような印象のある磐長姫だが、
高橋さんの話す磐長姫のは、
美しく気高く、優しい神様に違いない。

皆さんも是非、
磐長姫を思い、
雲見浅間神社から富士山を見て欲しい。

(この情報は、取材時の2017年12月のものです)

聞き手 : 住麻紀
写真 : 行貝チヱ

(松崎町「絲」concept webサイトより転載)

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