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IntelとAMDの固定資産比率の違いから、CPUメーカーの垂直統合・水平分業を考える
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将棋棋士の藤井聡太氏の趣味が自作PCで、AMDのCPUを使いたいというコメントが話題を呼びましたね。
Intelはというと、最先端の半導体製造プロセスを提供している他社に製造を委託せず、自社生産を貫き通すというCEOの発表で株価が下がりました。
IntelとAMD両社はPCやサーバ用にCPUなどの半導体を提供しています。
ただ、この2つの会社が採用しているビジネスの型は全く異なるものであり、Intelが現在苦しんでいる要因でもあるので、簡単に調べてまとめてみました。
垂直統合のIntelと水平分業のAMD
最初に結論を書いちゃいますが、
・CPUの設計と製造を一貫して行う垂直統合モデルを採用する、IDMのIntel
※IDMとは、Integrated Device Manufacturerの略
・CPUの設計のみを行い製造は他に委託の水平分業モデルを採用する、ファブレスであるAMD
の違いが、貸借対照表の固定資産比率の違いに現れています。
それぞれの特徴を比較してみます。
自社でCPUを製造するIntel
固定資産の中では有形固定資産が大きく、AMDと比較すると88倍もあります。
ファブレスのAMDとは違い、自社でCPU製造工場や半導体製造装置を持っているからですね。
毎年1兆円規模の設備投資をしています。
半導体業界では常に最先端にいないと廃れてしまうため、設備投資やR&D費用が大きくなるようです。
TSMCにCPU製造を委託するAMD
AMDはCPUの製造を台湾の大手半導体製造委託会社であるTSMCに委託しています。
このような製造委託先の業態はファウンドリーと呼びます。TSMCは世界で最も売上を出しているファウンドリーです。
AMDはグローバルファウンドリーズ(GF)というファウンドリーと取引がありましたが、より最先端な製造技術を持つTSMCに委託先を変更するというニュースがありました。
昨年のちょうど今頃、7nmの最先端プロセス開発の無期延期を発表したGFは、その後半導体市場全体の在庫調整期の影響をまともに食らってしまい売り上げは大きく落ちこんでいる。しかし落ち込みの理由の最大の理由は、最大の顧客であるAMDが7nmの最先端プロセスを求めてTSMCにファウンドリー契約を切り替えたことであろう。このAMDの決断は正しかった。現在AMDは最先端プロセスによるCPU/GPUの新製品群で競合Intelに大きなプレッシャーをかけている。(引用:GLOBALFOUNDRIESはどこへ向かうのか? 2019秋)
AMDのGMからTSMCへの製造委託先変更という事実から、設計のみならず製造でも最先端ではないとすぐに廃れてしまう半導体業界の厳しさが垣間見えますね。
垂直統合と水平分業のメリット・デメリット
垂直統合のメリット、水平分業のデメリットはこれでしょうか。
Intelの方が効率的に在庫を回転させています。自社製造しているため在庫をコントロールしやすい点が、この数字に現れていると思われます。
次に、垂直統合のデメリットで水平分業のメリットですね。現在Intelが苦しんでいるのがこれですね。
製造プロセスで最先端にいることは、とても重要です。
しかし、Intelは製造プロセスにおいて、TSMCの後塵を拝しています。
すでに製造はTSMCに委託しているのでは?というニュースもあります。(参考:TSMC、すでにインテルチップを製造中か。 21年後半には5nmのCore i3量産との噂)
そうなると、今まで莫大な投資をしていた自社製造の強みが無くなってしまいます。
Intelの決算書のリスクファクターに、他のファブレス企業はTSMCの最先端製造プロセスの恩恵を享受することができると記載されています。
AMDは自社製造ではないので設計のみの投資に注力でき、製造プロセスは最先端のファウンドリーに乗っかれば良いのです。
Intelは自社製造が最先端であることで常に市場をリードしてきましたが、ここにきて強みの源泉が崩されている状況ですね。
まとめ
自社製造工場や製造装置で固定資産が膨れているIntelと、製造を委託しているAMDの違いでした。
Intelはこのまま自社製造のみを続けるのか、AMDにシェアを取られないためにTSMCに委託するのか、今後の動向が楽しみです。
引用と参考:
ADVANCED MICRO DEVICES, INC. Form 10-K