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ACE2

ACE2は新型コロナウィルス感染症のキーワードだと思います。新型コロナウィルスはACE2に結合して(ACE2がウィルスの受容体になって)細胞に侵入します。降圧剤でACE阻害剤というタイプの薬がありますが、ACEとACE2は別物です。なのでACE阻害剤を服用していることが直接、新型コロナウィルスの感染に影響はしません。

単純に考えるとACE2と新型コロナウィルスの結合をブロックすれば感染防御ができそうな気がします。だとすると新型コロナ感染症にならないためにACE2が働かない状況にすればいいのか・・?

ACE2のことを深く調べるとそういうことでもなさそうです。

ACE2の働き

ACE阻害剤 ACE2のACEって一体何の略なのか?

ACE ACE2は酵素の一つでアンジオテンシン変換酵素(Angiotensin-Converting-Enzyme)の略です。体内でRAS系(レニン-アンジオテンシン‐アルドステロン系:Renin-Angiotensin-Aldosterone System;RAAS)で働く酵素で主に血圧の調整の役目を担っています。

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【+は作用を促進 −は作用を抑制】

上の図が示す通り、降圧剤のACE阻害剤やARBはアンジオテンシンIIを抑えることで血圧下げます。ACE2はアンジオテンシン1ー7の変換を促進して血圧下げます。なのでACEとACE2は真逆の働きをします。

ACE2とサイトカインストーム

RAS系の働きは血圧の調整以外に多岐にわたります。ACE2の働きを抑えると結果的にアンジオテンシンIIが増えることになり、血圧上昇はもとより上の図で示す通り、炎症反応が進み免疫の制御が抑えにくくなります。この炎症反応は免疫反応が活性化されてIL-6(インターロイキン6)が連鎖的に放出 活性化されます。これはすなわち、サイトカインストームへ進みやすくなるということになります。実際 新型コロナウィルスに感染した場合、ACE2発現が減少して致死性の急性呼吸器不全症候群(ARDS)をひき起こすことがわかっています。ACE2はそのものが新型コロナウィルスの感染の引き金にもなるが、その存在が感染の重症化を抑えるという相反する働きがあるといえるでしょう。

降圧剤で重症化するか

新型コロナ感染症が重症化しやすい人に心臓病 高血圧などの基礎疾患がある人との指摘があります。それに関連してか、降圧剤を飲んでいると重症化しやすいのではといった議論もあり薬の服用を控えたという人もいたのかもしれません。高血圧学会から降圧剤と新型コロナ感染症との明確な関連性の確証がないため服用を止めないようにとのメッセージも出されました。

しかし上のRAS系の図が示しているのは、アンジオテンシンIIを抑えることはむしろ重症化を抑える方に働きかけます。少なくともACE阻害剤 ARBタイプの降圧剤を服用している方は安心していただけるのではと思います。

日本では高血圧治療に最近はARBがよく使われています。ひと昔前はACE阻害剤が多かったのですが、空咳の副作用の頻度が割と出たためARBが第一選択されることが多いように思います。果たしてARBの使用率が多いことと日本の新型コロナ感染での死亡率が低いことと関連はあるか否か・・?

新型コロナ感染と味覚障害

ACE2は細胞の表面上にあります。ウィルスがやってきて細胞上にあるACE2にくっつくことで細胞侵入が始まります。ACE2が多く存在する場所は十二指腸、小腸、胆嚢、腎臓、精巣です。またACE阻害剤 ARBの副作用の味覚障害の研究より咽頭粘膜にも存在することもわかってきました。新型コロナ感染で味覚障害かおきるのは理由があったのです。また新型コロナ感染に関連して急性腎不全の報告もありますが、これもACE2が腎臓に多く発現していることも要因かもしれません。男性の方が重症化する割合が多いというのも同じ理由かもしれません。

新型コロナ感染症の治療薬にこのACE2が関係する新薬が出るのか あるいは既存の薬で治療に転用するのか注目していきたいです。


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