塚本 聡「ここへ続く道」
1.ネット検索の時代
インターネットが普及し始めた1990年代後半から2000年代には、Webサイトをつくれば商品が飛ぶように売れていく時代は確かにあった。
しかし、スマートフォンやSNSの普及によってネットショッピングが手軽になったことで、多くのWebサイトがつくられるようになった。
人はだれでも自分の興味があることだけを検索するため、いかに自社の商品を見つけ出してもらうことができるか、誰もが頭を悩ませている。
そんなときに手を差し伸べてくれるのが、Web制作会社の存在だ。
今日ご紹介する塚本聡さんは、愛知県名古屋市でWeb制作の仕事に携わっている。
塚本さんは少し変わった経歴の持ち主だ。
2.陸上と歩んだ道
1987年に愛知県豊田市で2人兄弟の次男として生まれた塚本さんは、小さい頃から走ることが好きで、小学生3年生からは陸上競技を始めた。
中学3年生のときには、愛知県で2位の成績を収めたこともある実力者だ。
高校は、中学のときから陸上でお世話になっていたコーチが勤務する愛知県みよし市の高校へ進学。
家から自転車で片道1時間かけて通学した。
進学した中京大学体育学部(現在のスポーツ科学部)でも大学4年生まで陸上を続けたが、太ももの裏の筋肉であるハムストリングスを3度も肉離れしたり、背骨の一部が分離してしまう脊椎分離症を繰り返したりと選手を続けていくなかで、怪我が絶えなかったようだ。
「陸上のことしか考えていなかったので、大学4年になって、やっと社会人になることを意識して就職活動を始めました。200社くらい採用試験を受けていくなかで、ある飲食会社の社長の人柄がとても魅力的で引き込まれたんです。それまで飲食には興味がなかったんですが、働いてみたいと思うようになりました」
3.飲食業界へ
「最初は何も分からなくって大変でした。『ドリンクを持っていってください』とか、アルバイトに命令されたこともありました」と当時を振り返る。
会社の教育制度が盛んで、アルバイトのレベルも高かったそうだ。
各店舗で店長や料理長を経験しながら、5年半修行を重ね、2015年に退社した。
「当時は、独立すると言って辞めましたけど、実はしばらく家にいて何もやる気が起きませんでした」
しかし、飲食業界への夢を捨てることができず、翌年1月から店舗を受け継ぐ形で名古屋駅近郊に「完全貸切×パーティースペース ONE WAY」をオープン。
集客のために婚活イベントや街コンなどを自ら企画し、LINEで知人を頼ったりネットを使ったりして年間3000人以上を集めたこともある。
毎日ひとりで掃除や料理までこなし、売上は伸びていたが、人間関係のトラブルにより2018年に閉店するという苦渋の決断をした。
その後は、知り合いの飲食店で1年ほどイベントなどを手伝ったあと、10人くらいの仲間と一緒に電気店の下請けで家電配送業を始めたが、しばらくして元請け会社の給料の未払いが発生し、敢え無く解散してしまう。
その後は、個人で軽貨物の配送をしていたが、飲食で働いていたときからインターネットの可能性を感じていた塚本さんは、独学でWebデザインを学び、今年1月から個人で「MUGEN」を立ち上げ、Web制作の仕事をスタートさせたというわけだ。
4.Web制作への道
「自分の店舗を経営していたとき、集客をシステム化できていればもっと楽だったと感じていました。いつかはネットビジネスに挑戦したいと思っていたので、この機会に飛び込んで見ることにしたんです」
開業当初は、毎月5000円・初期費用0円という低価格でホームページ制作を受注し、実績を重ねていった。
それまでの人脈などもあり、次第に顧客は増えていったようだ。
そして何より、飲食業で働いていた頃は、毎日長時間労働が続き、週に一度休みがある程度だった。
しかし現在は家族と過ごす時間も増え、子どもを保育園に迎えに行くこともできるようになった。
心身ともに充実した日々を送っている。
「いまの仕事にすごくやりがいを感じています。経営者の方たちの事業に対する想いを伺った上で、ホームページをつくっています。ネットを通じてその人たちの事業を応援していきたいと思っています」
ときには「こういうシステムをつくれないか」と対応困難な依頼を受けることだってある。
そうしたときに、塚本さんは知人を頼って仕事を外注するようにしている。
「その男性はまだ若いんですけど、すごく優秀なので、彼が住んでいる豊橋市まで何度も通って仕事をお願いするようになりました。彼につくってもらってから、自分では足元にも及ばないと考えるようになったんです」
以後、塚本さんは全体のディレクションを担当し、さまざまな得意分野を持ったフリーランスの技術者たちに仕事を一任するようになっている。
それが例え年下の人であろうと、自分より優秀な人であれば、真摯に耳を傾ける。
自分ができないことを素直に認め、相手を尊重するその姿勢は、まさにいまの企業が必要としているところでもあるはずだ。
そうした考えは、陸上競技や飲食の経験から学んだようだ。
全ては良いWebサイトをつくって顧客に届けるためだ。
「今年の12月に会社を法人化する予定なんです。発注先を増やして良い人材がいれば社員に起用したいですね。事業をもっと大きくしていきたいです」
まだ産声をあげたばかりの会社だけど、塚本さんはもう次の未来を見据えている。
そして、紆余曲折があってたどり着いた現在の道だが、陸上競技や飲食の仕事は決して無駄ではなかったと語る。
そこで得た知識や経験が、いまの足元に続いている。
この道はこれからどこへ伸びていくのだろうか。
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