水の難階
今日、要らない普通自動車免許の更新をしてきた。ぴったし誕生日からひと月で、今日の日付が書かれたハガキを受付で見せると「危なかったね」次からは気を付けてよ、と顔で言われた。それが老婆心なのか役職仕事なのかはさておき、取得から五年半で一度も運転してない奴が自動車を運転する権利を継続させた事実は、それなりに危ないのだけど。
ボクは足りないことだけでできている。できてないな。
その一つが運転、クルマ。好きな人を目的地やあるいは気ままにドライブへ連れていったりできないのだ。
怖いから。身の丈にあわないから。死ぬから。
これに関しては一年かけて自動車製造に立ちあい、運転し続け確かめた上での結論だ。日がな一日、クルマと呼ぶにはちゃちな車輌を運転する日々の中で、自分とハンドルの不適合さを何度でも思い知った。そして明らかに性格が変わった瞬間さえ汲み取られ、誠心誠意お別れをすることにした。
さて、そんなboyが同棲をすることになった。足はない。さらには内階段の3階部屋となってしまった。外からトビラを開けたら、即階段な光景を想像してもらえればいいか。
重いものは部屋までボクが持つし、幸いこのご時世何でも配送してもらえる。
ことさら水に関してはAmazonを過度に利用した。
ボクが麦茶、彼女がジャスミンティー。それぞれ2Lペットボトルを10本弱、無くなる前にはボクが絶えず注文した。無論届くのは玄関までで、そこから28段はボクが両手に力を込め、1LDKまで運ぶのだ。
いつからかそれと平行して500mlの水も二人で飲む用に買い始めた。多分水分補給が大事とか、馬鹿げたことを愚直にしたかった時期に。室内輸送屋の出番が増えたことにより、ペットボトルが大量に産出され、今度は外へ捨てにいく手間がうまれた。
だから今住む新居に引越すときにはウォーターサーバーを置こうという話になった。オートロックの階段のみ最上階5階。内階段ではないので、申し訳ないが、今度はボクより運送屋さんが汗水かく番だ。
水は太めのちょうちんみたいな形をしていて、一本12L。それが一度に二本段ボールに埋められ部屋まで届く。そして注文頻度はこちらで自由に設定できるが、触らなければ月に二度やって来てしまう。最長三ヶ月遠慮できるとはいえ、その手間をめんどくさがる。しかも二年契約らしく、解約すれば違約金さえ発生するとか。
皮肉なことで。関係の違約金を支払いもせず彼女は消えた。二分割されたはずの家賃も、水ちょうちんも残したまま。
この部屋に人は1人。自堕落で怠惰な性分なboyは、なかなか水を摂らないで近場のセブンでアイスコーヒーばかり嬉しそうに注いで帰ってくる。
身軽な25段だ。
そうこうして早くも引越先を探してる。どの町で寿命を費やそうかな。足はないけど、だったらそれを楽しむ気概はあるのさ。
次は何階か、難解か?