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2022年全国大会②

9月10日土曜日、
第二試合からということで、朝は比較的ゆっくりできる。
7時から朝食を摂り、8時半にホテルを出発。
前科者の詩音がちゃんと起きてきたからひと安心。

知る人ぞ知る、みんなのアイドル塩ちゃんから応援メッセージが届く。
引退してからもチームを気にしてくれてるのがありがたい。

毎日の検温は早くバスに現れた竹ちゃんにお願いした。
「お熱はかりまーす」と手慣れたようにこなす姿はまるで医療関係者のよう。
合間をみて、自分も測ってと手首をだすと「櫛部さんは後ろから測りましたー!」とのこと。
不覚にも自分は竹ちゃんに背後を取られていた。全く気づいていなかった…

さて、心配していた天気は前日の夜の寒さからうって変わって朝から暑い。
氷を買い出しせねばと近所のコンビニに寄ってみたが、これが全て売り切れ。
みんな考えることは同じか。
ホテルから離れたコンビニに再度寄ってもらい、無事購入できた。

伊那市は南アルプスと中央アルプスに囲まれた自然豊かな街。
抜けるような青空に、緑の山脈、広大な土地に稲穂や蕎麦の花が美しい。
四国山脈を見慣れた我々でも、長野の山々はまた別物で素晴らしい。
グランドまでの道のり、景色を眺めながらしばし時を忘れる。

初日のグランドは美すずスポーツ公園。
到着すると、第一試合が始まり賑わっていた。

隅っこで軽く練習を済ませ、ひと通りアップが完了したところで青木ばーばがノックを始めて若者は大盛り上がり。
これで緊張ほぐれたかな。

運転手さん2人もキャッチボールを始める。
聞けば中京大学のソフトボール部出身とか。
私の先輩じゃないか!(私はソフトボール部には入ってないが)
ということで一気に親近感が湧く。

さて初戦の相手は、山梨県代表のコンバットさん。
紗央里にみきゃんクッキーをお土産に持参させたら、山梨名物、今が旬の葡萄を頂いてしまいました。
コンバットさん、ありがとうございます!
美味しく頂きます!

そうこうしているうちに前の試合が終わり、荷物をまとめて3塁側ベンチへ入る。
細長いベンチに荷物の配置が苦戦した。

相手のゲーム前ノックが始まる。
選手だけで集まり綾乃がみんなを鼓舞している。
いやー、成長したなぁ。
7年前、初戦に敗れホテルで号泣していた子が今はチームを引っ張っている。
その姿が本当に嬉しく、感動もした。

紗央里は紗央里で、7年前は何も喋らず何を考えているのかわからない子だったのに、親御さんなどに向けて遠征の状況を見てもらいたいと言い出した時は驚いた。
宮内前々監督に1番見てもらいたかったんだね。
残念ながら宮内さんはインスタできないから…

今回、紗央里と綾乃が人として成長した姿をたくさん見せてもらった。
ベテランがごっそり抜けた穴をしっかりと埋めてくれたね。

これを言うと、美咲とあやてぃんは?と思う方もいると思うが、あの2人は入った時から大人だったので、相変わらずなのだ。

さて、試合は予定時刻を6分過ぎてスワロー先行で始まる。
先行は先取点が絶対に欲しい。

1回表、幸先よくトップバッター紗央里がヒットで出塁。
これが大事。1番が打つと、みんなが打てる気持ちになれる。
二つの盗塁で一気にノーアウト3塁を作った。

攻め急いではいけないが、早めに仕掛ける大事さも経験した私としては、1点目はサインプレーで確実に取っておきたかった。
しかしうまくいかず、2球目以降は切り替えて打力に賭けてみた。

結果無得点に終わったが、みんないい感じに捉えている。
そして何よりたくさん球数を投げさせていたのが良かった。次に向けて切り替えていこう!

全国大会は、初戦が1番難しい。
最初の守備は本当に大事。
最初のマウンドは歩美ちゃんに任せた。

トップバッターをキャッチフライに打ち取る幸先よいスタート。
2番バッターを四球で出して盗塁を決められる嫌な雰囲気も、ショートゴロ、セカンドゴロでピシャリと締めてくれた。

2回表、ツーアウトから美咲が四球で出ると、続くもえちゃんのヒットで再び得点のチャンスもホームが遠い。

2回裏、トップバッターを三振に打ち取る。
ワンアウトからエラーと四球で2人のランナーを出し、パスボールもあってランナー2、3塁のピンチ。
このチームになって経験する初めてのピンチの場面。
どうやって乗り切るか。

次打者の打った球はセカンドへのゴロ。
ななみちゃんがリードの大きい3塁ランナーをギリギリまで牽制して押し戻し、一塁へ送球でツーアウト。
ナイス!ななみん。

次はピッチャーゴロで、しっかり後続を断つ。歩美ちゃんナイス!

3回表、ワンアウトから詩音が出塁し、2塁まで進むも無得点。

3回裏、先頭バッターを内野安打で出すも、次の送りバントを歩美ちゃんが2塁で刺す。
もえちゃんがボールを呼ぶ声がよく聞こえた。ナイスピッチ、ナイスショート。

ワンアウトランナー1塁。
次のバッターのピッチャーゴロの間にランナー進むもツーアウトとする。
その後3塁まで走られたものの、セカンドゴロで打ち取りスリーアウト。

ピンチを招いても要所要所で締めるピッチングはさすが。
歩美ちゃんのピッチャーのノルマはこの回で終わり。ひとまずお疲れ様でした!

4回表、ゲームも中盤にさしかかる。
打席2巡目で得点できるであろうと踏んでいた。
この回先頭のあやてぃん、ゆみちゃんが連続安打で出塁すると、続く美咲には送ってもらって、ワンアウト2、3塁の願ってもないチャンス。
こうしてしっかり仕事をしてくれる美咲が、自分にはとても心強い。

ランナーあやてぃんには、死ぬ気で走ってねとお願いをしておいた。

こうして舞台が整ったところで、迎えるバッターはもえちゃん。
1打席目当たっていたので、ここも打力で勝負する。
そしたら値千金、ライト前に2点タイムリーヒットを打ってくれた。

1点目入るまでが長かった。
本当にありがとう!もえちゃん!
監督の立場を忘れて飛び跳ねて喜んでしまった。

その後2つの盗塁を挟み、続いて竹ちゃんがタッチアップに充分な犠牲フライを飛ばして3点目が入る。
点が取れる時というのは不思議と続けて取れるもの。
ホームインしたもえちゃんを盛大に迎える準備のベンチに、先に満面の笑顔で応えにくる竹ちゃん。
竹ちゃんも打ったもんね!

4回裏、この回の守りが勝負の行方を左右する。
この回からマウンドに上がるのは竹ちゃん。全国初マウンド、3点あるのは心強いかな。自分も打ったし、気持ち良く投げられるはずだ。

ところが、フルカウントまでいってからの四球でランナーを続けて出してしまった。
続くバッターの初球、パスボールでいきなりノーアウトランナー2、3塁のピンチに。
さっきと立場が逆転である。

緊張感が張り詰める。
あぁ、このヒリヒリする感じ。こんな気持ちになるのは3年ぶりだ。
今のメンバーでは一度も経験のない状況。
あとは選手たちのポテンシャルに委ねられた。

2球目がショートへと転がる。
ランナーはゴロゴーか。
ショートもえちゃん、取ってからが早い!
本塁でランナーを刺してワンアウト1、3塁。
ナイスもえちゃん!

次の打者、ストライク先行で竹ちゃんは吹っ切れた感じ。
セカンドゴロに打ち取り、セカンドななみちゃん、1塁に投げたら走る気満々のリードの大きい3塁ランナーを、偽投を使って3塁で刺す。
このプレーはとてもとても大きかった。

いつも絶妙なタイミングでのタイム、冷静な判断、ランナーとの駆け引き、どれをとっても素晴らしい。
セカンドに行けば安心安全。
安心安全の平野です。

これでツーアウトランナー1、2塁。
まだまだ気は抜けないものの、一気に緊張から解き放たれたような気持ちになった。
次のバッターをピッチャーゴロに打ち取りスリーアウト。
みんなが頼もしくて、なんとも言えぬ感動を覚えた守りの時間だった。

5回表、三者凡退6球で終わってしまった。
ちょっとだけ嫌な雰囲気。
ピンチを乗り切り盛り上がった熱が、冷めてしまわないだろうか。

5回裏、バッターは1番に戻り、センター前に強い打球を弾き返された。
嫌な予感は的中か。
と、ここでセンターさおりが1塁へ矢のような送球を披露。
センターゴロとしてくれた。

このランナーを出していたら、ゲームの流れが相手に渡るところだった。
さおり以上に喜ぶななみちゃんともえちゃんプラス竹ちゃん。
みんなで守ってる感じがとてもいい。

後続に死球、次にヒットでワンアウトランナー1、2塁。
得点圏にランナーを置くも、4番打者を三振に仕留めてみせた。
二つ目のストライクが最高の球だった。
ここぞと言うところで踏ん張れたのは、竹ちゃんにとって大きな糧になったはずだ。

ツーアウトとして、最後は安心安全のセカンドへのゴロ。
セカンドに転がるだけで安心感が半端ない。
この回もよく頑張った。

6回表、ダメ押しで1点欲しい。
ワンアウトからゆみちゃんが出塁してくれた。
盗塁も決めてランナー2塁を作る。

続く美咲にまたも送りバントをお願いする。
打ちたいだろうに、チームの為にありがとうね。
絶妙なバントに相手のエラーを誘い、美咲もセーフとなり、ワンアウトランナー1、3塁の絶好のチャンス。

迎えるバッターは先程2打点挙げたもえちゃん。
相手守備もバッティングを警戒している。
迷わずスクイズのサインを出す。
これを確実に決めて試合を決める4点目が入った。

さっきのヒットも嬉しかったけど、自分はこのバントを決めてくれたことが本当に嬉しかった。
こういう点が取れなくては、勝ち試合にできる確率は上がってこない。
価値ある1点だった。

6回裏、残り時間僅かとなりこれが最終回になる。
抑えのマウンドに上がるのはゆみちゃんだ。

ピッチャーフライに2つの三振。 
危なげなく抑えきり、全国大会初勝利を掴んだ。

心配していたスコアラーの不在も、選手たちが手の空いてる人が助け合いながらつけてくれて、複雑な場面は相談したりしながらつけてくれた。
初めての全国大会なのに、プレーに集中させてあげられなくてごめんね。

だけどこのデビュー戦、みんなで闘ってる感が凄かった。
7年前の伊那の悪夢は見事に払拭された。
温かく、熱い気持ちにさせてもらった試合だった。
なんと表現したらよいのかわからない感情だ。

このメンバーで揃って練習できてないし、ましてやまともな試合経験のないまま迎えた全国大会。
期待と不安とが入り混ざる中、自分の不安を一掃してくれた試合だった。

試合を進めながらみんなが一つになっていく。
懐かしい。数年前もこんな経験したな。
全国の舞台は本当に特別だ。
体験した人にしかわからない世界。

初戦は不戦勝のためこの日の試合は終わり。荷物を片付け、着替えを済ませて昼食の買い出しにいく。
初日の勝利で日曜日も宿泊することにしたので、急いでもう1泊ホテルを予約した。

昼食を摂りながら、明日対戦するチームの試合観戦をしてからホテルへと戻る。
夕食までには洗濯を済ませたい。

ホテルのランドリーが浴室に1台と不便な上に徒歩で行けるコインランドリーがない。
いつもは遠征中レンタカーを借りるのだが、今回は人手不足のために借りていない。
贅沢にもタクシーを使ってコインランドリーへ行くことにした。
綾乃、紗央里、お手伝いありがとう。

この日の夕食は焼肉を予約。
乾杯の音頭はこの日のMVPもえちゃんに。
それはそれは美味しいビールを飲ませて頂いた。
暑い中ずっと試合観戦してくれた運転手さんたちも誘って、楽しい時間となった。
偶然同じ店の2階にいた、愛知代表のレテンさんが顔を出してくれて、懐かしい顔ぶれにも会えた。

初老はくたびれて22時には眠りについたが、若者たちは部屋に集まって青春を謳歌しているようだった。
コロナ禍の中批判的な考えの人もいると思うが、自分は大賛成。
やり残した修学旅行とインターハイの代わりに、この遠征を楽しんでもらいたかった。

人生1番楽しい年頃、試合だけでなく、思い出をたくさん作ってもらいたい。

しかし先輩を部屋に誘うのに、ホテルの内線電話を使う竹ちゃんは斬新だ。
これまでの遠征で、部屋の電話が鳴った経験などない綾乃は一瞬怖かったらしい。

そんなこんなで、初戦突破の第一目標をクリアしたことで楽しく遠征2日目を終えた。

明日はどんな試合になるだろうか。
どんなプレーが見れるだろうか。
可能性は無限大だ。