2022年全国大会③
9月11日、日曜日
この日も第二試合からということで、前日同様ゆっくりの出発。
この日のグランドは、富士塚スポーツ公園。
対戦相手は、京都代表の亀岡ソフトボールクラブさん。
この試合も先攻で始まる。
1回表
ツーアウトから3番ななみちゃんが右中間へのツーベースヒット、続いて4番歩美ちゃんもヒットで繋ぎ、ランナー1、3塁でチャンスを作る。
この回得点ならずも、行けそうな気配を感じる。
1回裏
この日の先発マウンドはゆみちゃん。
トップバッターに対し、ワンストライクワンボールからの3球目、痛烈なピッチャーライナーが顔面を襲う。
ボールはグラブをかすめて左顎に。
いきなりピッチャー交代か?
焦ったが、綾乃がタイムをとってマウンドに集まる。
ベンチからその行方を見守る。
無理ならこちらに無理だと綾乃から言ってくるはず。
痛みを堪えて、ゆみちゃんが継続して投げることに。
気を取り直し、後続を三振、セカンドゴロに打ち取りツーアウトランナー1塁。
ほっとしたのも束の間、4番のエグいセンターライナーに肝を冷やす。
ほぼ正面だった打球は紗央里のグローブに収まった。
2回表
三者凡退に終わる。
2回裏
サードライナー、セカンドフライ、セカンドフライで三者凡退に打ち取る。
詩音がサードライナーに反応したことに、ベンチのばーば達が騒つく。
詩音曰く、今日は何でも取れるみたい。
しかし相手の打球が強い。
3回表
ワンアウトから紗央里がヒットで出塁し、盗塁を成功させランナー2塁。
ツーアウトとしてでもクリンナップに回したくて、詩音には送りバンドをしてもらう。
これをしっかり決めてツーアウトランナー3塁を作るも無得点に終わる。
昨日同様、チャンスは作るものの、ホームが遠い。
3回裏
先頭バッターに出塁を許すも、ピッチャー前の送りバントを2塁で刺す。
ゆみちゃんナイス!こういうプレーは本当に大きい!
後続は三振二つでぴしゃりと締めた。
最初に顔面に当てられたバッターを三振に仕留める根性が好きだわ。
4回表
先頭バッター歩美ちゃんがツーストライク追い込まれてからどでかいツーベースヒット放つ。
続くあやてぃんは安定のバントを決めてくれた。
確実に進められる技術は本当に大事。目立たない仕事だけれど、犠打が確実に決められる選手がいなくてはソフトボールにならない。
これでワンアウトランナー3塁のチャンス。
ゆみちゃんにはスクイズをお願いした。喉から手が出るほど欲しい先制点。
ゆみちゃんはヒッティングの方が得意とのこと、上手く叩いて転がしてくれた。
心の中でよっしゃー!と思うも束の間、ランナーにサイン伝わらず・・・
残念ながらこの回無得点に終わった。
切り替えるしかない。
しかしゆみちゃんは本当に転がすのがうまい。これで確信したのでこれからもサインプレーにどんどん絡んでもらおう。
4回裏
チャンスを逃せばピンチが訪れる。
先頭バッターを四球で出すと、続くバッターにセンターの頭を越されるツーベースヒットを浴び、ノーアウトランナー2.3塁のピンチ。
その後センターへの犠牲フライで効率よく重たい先制点を許してしまった。
ワンアウトランナー2塁とし、バントでランナーを進めてくる。
あやてぃんがしっかりアウト一つを取り、ツーアウトランナー3塁のピンチはまだ続く。
このあと三振を取ってチェンジにできるゆみちゃんのメンタルは素晴らしい。
中盤の4回でゲームが動いた。0対1の1点ビハインド。
この回得点した方がゲームの主導権を握ることが見えていたものの、1失点で堪えた事は良かったと思う。
ここでゆみちゃんのピッチャーのノルマは終了。
打球が当たった顎が痛いのに汗だくになりながら投げてくれた。感謝・感謝。
5回表
先頭バッターもえちゃんがヒットで出塁。まずは同点に追い付きたい。
竹ちゃんには送ってもらおうかと思ったけど、もえちゃんに盗塁してもらうことを選んだ。
結果は失敗、自分の気の焦りが出てしまった采配に申し訳なさが残る。
この回も無得点に終わった。
5回裏
この回からはピッチャー竹ちゃん。
ヒットとセフティでノーアウトランナー1.2塁とし、送りバントにスクイズで悔しい2失点目を食らう。
自分のやりたいソフトボールでの失点は打たれるよりも悔しい思いだ。
しかし、竹ちゃんも焦らずしっかり1塁でアウトを取る。これもとても大事。
二つの四球でツーアウトランナー満塁のピンチ。
たまらずタイムを取る綾乃に、ピッチャー交代するか尋ねてみたところ、
「このまま竹ちゃんで行く」と力強い言葉が返ってきた。
ここで一気に大量失点も覚悟の流れを断ってくれたのは、頼りになりますセンター紗央里!
センター前ヒットを、昨日に引き続きセンターゴロにしてくれスリーアウトチェンジ。
この回も1失点で抑えたことに意味があると思えた瞬間だった。
6回表
ピンチの後はチャンスあり
ワンアウトから、今大会絶賛売り出し中のななみちゃんがワンバンでフェンスを超えるエンタイトルツーベースで出塁。
この場面で打てるメンタルに脱帽です。
迎えるは4番歩美ちゃん。
捉えた打球は空高く舞い上がる。その光景はスローモーションのようだった。
フライかな?え?入る?え?ってな感じで、ベンチの皆も前のめりに。
フェンス直撃の大きな大きなタイムリーツーベース。
寡黙なポーカーフェイスは、セカンドベース上で笑顔で両手を挙げてベンチの盛り上がりに応えてくれた。
ここで打てる2人に、思わず綾乃が「済美すげー!」と漏らしてしまうほど。
この回1得点で1対2となった。
6回裏
この回からはピッチャー歩美ちゃん。
先頭バッターをセンターゴロに打ち取ると、次のセンター前は2塁で刺してツーアウトランナー1塁。
またまたセンター前ヒットでランナー1.3塁のピンチ。
その後満塁とされてから、レフトへのヒットで1失点。
美咲はダイビングしたが届かず、しっかりカバーに入った紗央里が単打で食い止める。
これで1対3となった。
相手の徹底した繋ぐバッティングは本当に凄い。
強い打球を転がす意識、確実に決めてくる小技は守る方は本当にしんどい。
「センター前に強い打球を!」というのが合言葉のように言われていたが、最後の方には、「強い打球をセンター以外に!」と変わっていたのには少々笑ってしまった。
小技もサインプレーもあると思えば前に行きたい。
しかし強い球があるから内野は前に行けない、
強い打球が打てるからこそ効果のある小技。
この技術には感服だ。
さて、ツーアウトランナー満塁のピンチは続く。
しかもバッターは一番雰囲気のある4番バッター。
ここをサードゴロでしのいだ事も大きな収穫と言っていいと思う。
7回表、最終回
先頭の美咲が出塁してくれると、絶好調もえちゃんがヒットで続く。
みんなやってくれるじゃないの!
続いて竹ちゃんのセンターへの小フライがグラブからこぼれた。
しかし2塁ランナーは動けない・・・
3塁でアウトとなりワンアウトランナー1.2塁。
しかし反撃もここまで。
ゲームセット。
勝てそうだけど勝てなかった。
たくさんヒットが出たのに得点に繋がらない。
8本のヒットにその内ツーベースヒットが4本。
これで勝てなかった理由を、1点しか取れなかった理由を、これからまた1年考えながら練習していきたいと思う。
終わった瞬間はそうでもなかったのに、時間が経つにつれ悔しさが増す。
次回はうちがリベンジする番だ。
選手たちは本当によく頑張ってくれた。
3人の投手が、みんな初めての舞台で堂々と投げ切ってくれた事は、これからの糧となるに間違いない。
6回の竹ちゃんの満塁ピンチの場面、綾乃が押し切ったのは投げる前に2人でこっそり話していたらしい。
緊張する竹ちゃんに、「投げられないと思ったら投げれませんって言ってもいいんよ!」と
綾乃にしては珍しく強い言葉を言ったようだった。
その喝に、「投げます!」と言い切った竹ちゃん。
交代の提案を迷わず却下した綾乃の迷いのない目を理解した。
綾乃は3人の投手のリード、球筋の違うボール、たくさんのワンバンを止めてくれた。
一木投手の相棒としてやってきたこれまでの全国大会とは比べ物にならないくらい疲れたはず。いつも変わらず元気に声を出し、笑顔を振りまき、後輩たちを引っ張ってくれたね。
本当にお疲れさまでした。
上に行けば行くほど、守備では四死球が致命傷となり、攻撃では少ないチャンスをモノにする確率を如何に上げていくかが勝利のカギとなる。
サインプレーも、強い打撃あってこそ効果を高めることを思い知らされた。
成功体験と自信をつけるとともに、多くの悔しさも経験した。
自分たちより上のレベルを知ることがまず成長の第一歩。
試合が終わればグランドにもう用はないのだが、レディースのベスト4に入るチームはどんなプレーをするのか、どんな投手がいるのかを見ておいて欲しかったので、少し試合観戦してからホテルに帰ることにした。
敗れたショックで集合写真を撮ることをすっかり忘れていた。
バスで着替え始めた時に突然思い出し、またユニフォームを着てもらって撮影タイム。
ずいぶん長い撮影タイムとなった。
最近の若者のポージングは謎が多い。
ギャルピースに顔を伏せるのが今の流行りらしい。
ユニフォームでギャルピースはなかなかシュールだった。
やっと着替えて試合観戦しようかなと思いつつ、やはり今の熱い気持ちのうちにミーティングがしたいなと思った。
散らばった若者を呼び寄せ、一人一人の思いを述べて貰うことにした。
大きな木の下の日陰で輪になって座ると、私の頭にトンボが止まったらしい。
何のお告げだろうか。
今書きながら気になって調べてみた。
『トンボがあなたに止まった場合、あなたに幸運が訪れる前兆です。止まった部位によってメッセージが異なります。頭に止まるのは、「熟考することで成功する」という意味です』
なるほど、しっかり考えて1年頑張れば、来年はこのトンボが幸運を運んでくれるというのか!
余計な話はさておき、ミーティングのトップバッターは綾乃から。
竹ちゃんとのやり取りの話、熱い思いを話しているうちに、泣きそうになったと言い出す綾乃。それにもらい泣きしそうという美咲。
しっかり私も涙目でした。
みんなそれぞれの想いをもってここに来たんだ。
負ければ悔しい。もっと上に行きたいと欲が出る。
だけど悔しいと思えるほど練習したか?と問われればそれはノーだ。
今年は人がなかなか揃わず、自分も何度も心が折れた。
部活じゃないんだから仕方ないと言い聞かせながら、わずかに参加してくれる子たちと練習してきた。
仕事・学校・プライベート優先がレディースなのだから。
以前のスワローは、どんどん予定を組んで、練習試合相手を探して、武者修行を重ねて強くなった。
だけど今は人数確認がとれないと試合も組めない状況だ。
今の状況に応じた強化策を練っていくのがこれからの自分の仕事。
がむしゃらに練習するのは好きではない。やるときはやる、遊ぶときは遊ぶ、休む時は休む、効率よくやるのがスワロー流。
若者たちの心の内を初めて聞くことが出来たこの機会、みんなこの大会を通じて経験したことで感じたその気持ちが本当に大切なのだよ。
レディースならではの楽しさ、ソフトボールの楽しさ、とべスワローの素晴らしさも実感出来たはず。
これなんだよなぁ。全国を経験したものだけが感じることができる感情。
たった2日間の2試合、だけど大きくて、重たくて、楽しすぎる濃ゆい2試合の経験。
これを経験してしまったらやめられませんよ。癖になるこの感じ。
今回の目標はベスト8、結果はベスト16
来年はもっと近くで開催されて、多くの親御さんたちが見に来てくれるといいな。
この子たちの楽しそうな姿を。かっこいい姿を。スワローの底力を。
正直ここまでやるチームとは思いませんでした、皆さん申し訳ございません。
昔を知るがゆえに昔と比べてしまう自分がいて、皆を知る時間と機会が無さ過ぎてちぐはぐな采配もあったと思うけど、グランドに断つみんなが頼もしかった。
ミーティングの中で、遠くてしんどいし辞めようかと思ったこともあったとか、もともとソフトボールは高校で辞めるつもりだったとか、今やっとやりたかったソフトボールが出来て嬉しいとか、みんなが喜んでくれるから初めてベースの上でガッツポーズしたとか、次は絶対0点で抑えるとか、様々な気持ちを聞かせてもらった。
みんなに共通していたのは、来年こそもっと上を目指すぞっていう強い気持ち。
この今の気持ちを1年間続けるのは不可能だけど、ふとした瞬間にこの長野の地で心に誓った想いを思い出してほしい。
なんだか最後にまとめるつもりが、自分も初めて全国を経験した時のワクワクを思い出し、試合だけじゃなくてたっくさんの思い出が出来た楽しさを思い出し、勝ち進む興奮を思い出し、気持ちがぐちゃぐちゃになって号泣してしまった。
ごめんなさい。
あの時自分が経験した最高の体験、勝ち進む経験をさせてあげられずにごめんねっていう気持ちが強かったもので。
みんなこんなに上手いのにね。
ある人の言葉。
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すべての出会いは偶然で、同時に必然。
なぜなら、出会いは、道と道との交差。
なぜここでふたつの道が一点に交差したのだろうかと、出会いはまるで偶然のように感じる。
ただ、道と道とが交差した場所から、後ろを振り返り、それぞれの道を見てみる。
すると、それぞれの道は、果てしなく遠いところから、この交差している一点へ向けて、正確無比な精度で迷いなく伸びてきていることが分かる。それは必然でしかない。
だから、すべての出会いは偶然で、同時に必然。
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君たちとここで出会ったのは必然ですね。
気を取り直して、試合観戦に向かう。
どんなチームが全国のトップにいるのか、どんなチームを作れば全国のトップチームと渡り合えるのか、全国レベルの強いチームと対戦したり見たりすることで見えてくる。
まずは上を知るということが大切な経験。
格上のチームと対戦すること。
良いピッチャーとの対戦を経験すること。
良いバッター、良いランナーとの対戦を経験すること。
ピッチャー陣は四死球を減らすこと。
少ない練習でも課題をもって取り組むこと。
あー、固い話になってしまった。
試合観戦が終われば、あとは楽しい遠征を過ごすのみ。
綾乃のご希望で山奥の道の駅へ、竹ちゃんの希望で伊那スタジアムへと向かうことにした。
運転手さん、わがままきいてくれてありがとう。
長くなったので続きはまたあとで書くことにする。