大学講師をやって気づき始めたPRパーソンとしての世界線【だから、ぼくはヒーローになれない episode 28】
こんにちは、イイジマケンジ|kushamiです。
先日、近畿大学経営学部の「マーケティング戦略論Ⅰ」のゲスト講師として授業で講義をしました。
独立した直後で、このような機会を早速いただけるとは。近畿大学経営学部の峯尾先生、ありがとうございました。
峯尾先生には、前職時代から早稲田大学、日本女子大学などの授業にも招聘してもらっており、今回も先生のご厚意でゲスト講師の依頼をいただいた。
近畿大学で何を語ったか
まず、講義は「マーケティング戦略論」だったので、基本は「ビジネスのマーケティング活動の中におけるPRの役割」について説明をした。
授業内ではこれまでマーケティングでよく用いられるフレームワーク(考え方)を講義で勉強してきたということだったので、「できるだけ実際の現場でどのようにフレームワークが活用されているか」を現場で身を持って経験した立場から話をした。
授業のアジェンダ
・自己紹介
・マーケティングとは?(定義・概念を実務的に言い換えると…)
・PRとは?
・PRにおけるマーケティングフレームワークの活用
・マーケティングとPRの関係
・PR発想(さわりだけ)
授業後のアンケート
授業後に、受講した学生から授業の感想をもらったが、みんな真摯に授業を受けてくれていて、そのフィードバックも視座の高いものが多くて感動した。
【受講した学生からの声】
※個人がわからないよう一部抜粋・修正しています
・これまでマーケティングの基礎から学んできたのですが、これまでずっと「こんなキレイごとのフレームワーク」は実際使ってないんじゃないか、無意味だ、などと思っていたのですが、今日のお話を聞いて、事例に沿ったお話で理解も深まり、「そういう時に使うんだ、そういう使い方をするんだ、そういうデータに繋がるんだ」などど感じることができました。すごく今までの学習が無駄じゃなかったんだ、正しい考え方をもつことが大切なんだと感じましたし、今までの学習が自分の中で少しではありますが、結びついて、理解が深まった気がします。
・マーケティングが実際に企業でどのように活用されているか、授業でしか学習していなかったため、あまりイメージが沸きませんでしたが、今回の講義で実際の企業でも、マーケティングでは売れる仕組みと社会の関係性の両方を考えていくことや、どのような流れでPR活動を行っていくのかが分かり、こんな仕事がしたいとワクワクした気持ちになりました。
・他の授業ではPRとは何か?ぐらいにしか、PRについて学ばなかったので様々な事例などを取り上げてPRについて説明をしてくださってとても興味深く、とてもいい機会になりました。
・この講義を聞いてPRってこんなことまで補っているんだ、こんなために作られるんだということを改めて知ることができました。
やはり、学生は「フレームワークって綺麗事」となんとなく実際の現場と結びつかないよなーと改めて思った。そりゃそうだよね、実際にビジネス現場出たこと無いんだし。
実際の現場ではどこまでフレームワークを活用しているか
実際の現場では、フレームワークをしっかりと整理して分析する時間もないときもある。ただ、時間がないときでもフレームワークに沿った考え方の”型”を頭の中で用意して仕事をしていく。
その型がないと、なかなか良いアイデアが生まれない。
また、フレームワークをつかう理由には「クライアント(の上層部)を納得させる」にはものすごく有効だ。超天才コピーライターがつくるコピーを除けば、普通は商品や広告のコピーを決定するには、それまで色々なことを検討しているというプロセスが見えないと納得してくれない。
いま日本で活躍しているクリエイティブディレクター・広告プランナー・コピーライターも、その言葉選びや企画センスは、自分の中でオリジナルなフレームワークを用意していることが多い(はずだ)。
PRパーソンはマーケティングをより理解する使命がある
峯尾先生ともずっと話をしているのが「Public Relationsの価値」についてだ。
やはり日本におけるPRの存在価値は低い。マーケティングの中のツールのひとつとして思われていることも少なくない。その大きな理由のひとつとして「売上に直接寄与しているのかどうか見えない」ということだ。
たしかにそれはそう。なおかつ、PRは条件やタイミング、対象によって目的・ゴールが異なるから、その難解さ故に存在意義が曖昧模糊になってしまう。
それと比較し、マーケティングはより売りに直結する仕組みをつくることができる。その仕組みづくりの中で、「社会との望ましい関係づくり」は大変重要であることがマーケティングをしている人はとっくにわかっている。
片山さんの↑がまさに「それな!」事案であり(激しく同意、という意)、マーケターはとっくのとうにPRの重要性について語っているのに、PRパーソンは「PRはとても高尚な考え方なんです!」と前時代的に延々と訴えているケースが多い。
PRが周回遅れにならないために、PRの社会との関係構築をより「わかりやすく」かつ「ビジネスおよびマーケティングに有益なものである」と訴えていく必要がある。
じゃあ、おまえはこれから何をするんだ
自分で吠えたことは自分で回収しないといけない。
なので、これからやろうとしていることを朧げだけれどまとめると、こうだ。
・PRの考え方をフレームワークにする
・PRテクノロジーをオートメーション化する
・PR業界の精神的な参入障壁をなくす
PR会社時代の上司から学んだことだが、PRには「発想」と「手法」にわけられる。だからこそ、「発想」をフレームワークにしてより効果的なアイディエーションを導きたい。そして「手法」をできる限りオートメーション化し、よりシンボリックなアクションに工数をまわせるようにしたい。
「PRの考え方をフレームワークにする」
PRの考え方が会社によって個人によってばらばらだから、混乱を招く。だからこそ、フレームワークとして誰でもわかりやすく伝え、活用できる仕組みをつくる。マーケティングは「売れる仕組みづくり」だったが、PRは「社会とつながる仕組みづくり」だ。そこをもう少し設計してみたい。
「PRテクノロジーをオートメーション化する」
特にPRの「手法」の部分にはスタンダードな内容も含まれている。これまで手法部分にチカラをかけすぎているので、そこをできるかぎりオートメーションでできるようにしたい。
このあたりは、PR TIMESなど大手PR代理店が担っているところが多いが、まだまだ「情報流通構造を設計する」部分においてオートメーション化できるところが山ほどあると考えている。
「PR業界の精神的な参入障壁をなくす」
学生からの授業の感想をみていても、まだまだPRは遠い存在であり、そもそも存在を知られていないことが多いと感じた。だからこそ、もっとPRパーソンが社会(特に就職タイミングの学生市場)に歩み寄り、PRの魅力と重要性について語っていくことが重要である。PRパーソンを増やす方法を戦略的に、それこそマーケティングフレームワークを活用して攻めていかなければならない。
これからPRパーソンとして、ビジネスパーソンとして、自分のアイデンティティを考えるきっかけとなった今回の大学授業。とても良いタイミングで、良い機会をいただけたこと、改めて感謝したい。
またこれからもPRについて考えていこう。