広重浮世絵の世界⑳ 府中 ―夜の宿場―
「府中宿」は現在の静岡市の中心部、駿府城の城下町にありました。駿府城と言えば江戸時代当初は徳川家康が隠居地に定め「大御所」として幕府の実権を握っていた場所です。その後は幕府の城代が駿府支配のため駐在する城となりました。
画面右下に記された「二丁目廓の図」の「廓」(くるわ)とは囲われた場所のことであり、ここでは遊廓のことを指しています。安倍川にほど近い駿府城下町西方、東海道筋のやや南側に、この絵の右奥に描かれた大門があったとされますが、現在その痕跡はみられません。
この絵では満月に照らされた廓のなかには多くの人々が見られ、賑わっている様子がうかがえます。人々は小さく描かれているため詳しいことを確認しにくいのですが、姿恰好や持ち物が多種多様であるように見受けられることから、門の中にさまざまな男女が出入りしていたように思われます。
次回は、ある名物で有名な「鞠子」の絵を紹介します。