
広重浮世絵の世界⑨ 大磯

藤沢宿から大磯宿までは3キロ程度とやや短い区間です。
この絵では相模湾に面する大磯宿(現、神奈川県大磯町)の街並みが描かれており、海の向こうは伊豆半島の山並みでしょう。手前に描かれた寄棟屋根の建物は、いずれも旅人が行き交う街道に面して間口を大きく広げ、土間や旅人が腰かける居室が見えることなどから、旅籠を描いたものでしょう。
大磯宿には66軒の旅籠があり(天保14年)賑わいを見せました。明治以降は宿駅制度が廃止されたことで宿場町はとしては寂れますが、明治20年(1887)には鉄道が開通、東京からほど近い温暖な景勝地として注目され、名だたる政財界人などの別荘地として大いに繁栄し、現在もその足跡を町のあちらこちらに見ることができます。
次回は、「小田原宿」を紹介します。