ドラムはじめて物語〜その⑤〜運命の出会い
(前回のあらすじ)
「バンド探しの真っ最中……ドラマー募集中のバンドのライブを見に行くことに。しかしバカなさおりは間違えて違うハコに行ってしまう…。さてさて彼らとは会えるのか!?」
そう…。
さおりはいつも人の話を最後まで聞かずに
何度も失敗をしてきた。
そしてまたやってしまった。
今回見に行くライブ会場は「リキッドルーム」ではなく「リキッドルームの近く」のハコだったのだ。
リキッドルームを10分で退散したさおりは見に行く予定のバンドの彼に半泣きで電話をした。
今思えばリストに名前がなかった時点で電話するべきだった。
「あっ、もしもし、あの今日ライブを見に行くことになってるドラムのさおりです・・・あのっ、あたしリキッドルームに行ってしまったんですが、違いますよね?」
彼は失笑…。
「リキッドルームの近くのACBだよ…ごめん、俺の説明悪かったかな?」
違います違います!
悪いのはすべて自分です。
しかしバカなさおり、なぜかギリギリの運だけは強い。
彼らのライブ、少し押していてまだ始まっていないというではないか。
今度は最後までちゃんと説明を聞いてACBへ猛ダーーッシュ!!!
着いたー!!!!!
ゼーゼーしながら受付で「さおりでゲストで…」と名乗ると
あ、あった・・・・・・
今度はちゃんと名前があったよ!!!
中に入ると満員御礼だったリキッドルームとは対照的に閑散としていた。
いよいよ彼らのライブスタート。
女性のギターボーカルであとは男性の4ピースバンド。
ボーカルさんはとても上手で、さおり審査員のボーカル審査は無事クリア。
お客さんは友達が何人か見に来てくれてるといった感じで、たまに声援が飛ぶが決して人気のあるバンドではなさそうだ。
でも…フロント三人が、お客さんがいないながらも必死でライブをしている姿にとても好感が持てた。
ついさっきはリキッドルームでライブやるようなバンドを見て自分もここに入ってキャアキャア言われて…なんて思ってたけど
ACBで頑張る彼らの姿を見て、自分もこういう人達と一緒に頑張って行こうと思いはじめた。
というか本音を言うとバンド探しにはもうかなり疲れていて、どこでもいいから早くどっかのバンドに落ちつきたかったのかもしれない。
そして彼らのライブは終了…
「どうでした?」と聞く彼らに
「すごく良かったので加入したいです」と答えていた。
彼らはとても喜んでくれ、二週間のスタジオで何曲か合わせてみることを約束してその日は別れました。
バンド探しの旅にようやく終止符を打とうとしていたさおり。
あのライブ以来、もらったカセットテープを擦り切れるほど聞いて、寝る間も惜しんで練習した。
家には相変わらず雑誌のメン募からデモテープが山のように届いていたが、もう開封さえしなかった。
だってあのバンドに入るって決めたんだから。もう絶対迷わない!!
そして彼らとのスタジオ入りが二日後に迫ったある日・・・
個人練習の帰り道、さおりの携帯に一本の電話が入りました。
画面を見ると知らない番号。
たぶんスタジオに貼ったメン募の貼紙を見てかけてきたのだろう。
でももうあのバンドに入るって決めたし。
だからせっかくだけどこの電話は無視しよう。
それとも…
とりあえず出てみて断ればいっか?
でもでもでもでも…
なんだかわかんないけど
この電話…
妙に気になるんですけど。
あれだよなぁ…この電話に出るか出ないかで、運命が左右されちゃったりするのかしら?
大事な運命の出会いとかだったらどうする?
なんてことを8秒足らずで考え
結局、その電話に出てしまった!!
この電話で本当に本当に本当に最後にしようと心に誓って。
さおり「もしもーし」
相手「あの、メン募を見て電話したんですが、さおりさんですか?」
さおり「はいそうです」
相手「実はドラムを探してて…なんたらかんたらで…」
と少し話してみる。
な…なんかわかんないけどこの人ちょっと変わってるかも…。
電話の第一印象はそんな感じだった。
彼は3ピースバンドのボーカリスト、ドラムはいまサポートなので正式メンバーのドラムを探しているとのこと。
そしてドラマーと名乗っているさおりに向かって「8ビートは叩けますか?」と聞いてきた。
なんなんだこの人・・・
8ビートを叩けないドラマーなんているのか?!
なのでさおりも一番聞きたいことを率直に聞いてみることに。
「あの~、ひとつ聞きたいんですが、歌上手いですか!?」
すると彼は電話口で「フフフッ」と笑い
「悪いけどめちゃ上手いですよ」
と得意げに答えた。
ああああー!
なんかこの人、やっぱりちょっと変!!
こっちから聞いといてなんだけど、「歌上手いです」とか自分で言うかー?
でもさおりは
「悪いけど歌うまいですよ」のセリフがすごく気になってしまい、なんと会う約束をしてしまった。
おーい、こないだのバンドに入るんじゃなかったのか!?
しかも約束したスタジオは二日後なんですけど。
でもまいっか。
とりあえず会うだけだし。会うだけ。
自分で上手いとか言ってる奴はだいたい下手くそだしな。ぷぷ。
ちなみにその彼はこれからストリートライブをやるそうでそれが終わったら会おうということになり、その日の夕方に会うことが決定。
そして午後4時…。
指定された場所に行くと白い大きな車が停まっていた。たぶんあの車だな…
メンバーとのご対面は最もドキドキする瞬間。
近づいて運転席を覗くと
やたら目のデカイ、金髪のおにーちゃんが
白い歯を出して「ニカッ」と笑った。
なんかわかんないけど、この人…強烈。
そして助手席に江口洋介似のイケメンが座っていた。
ふむふむ。
あの「江口洋介」がベースで、なんか強烈な「金髪デカ目」がボーカルね。
フロントマンとしては悪くないわね(ルックス審査は合格)
そしてお互い車で来ていたので近くのサイゼリヤに移動して話をすることに。。。
彼らの車の後に着いてさおりは車を走らせた。
とてもよく晴れた青い空の日だった。
なんだか胸がザワザワしていた。
でもこの時、さおりはまた知る由もなかった。
あの強烈な金髪デカ目が・・・・・・
まさか将来、自分の旦那になることに!!
2000年7月、とても暑い夏の日の出来事でした。
つ•づ•く♫
(次回予告)
天才ボーカリスト、ついに現る!!!
最後にすると決めたあの電話はやはり運命の電話だったのか!?さおりの壮絶なバンド人生、いよいよスタート!!