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今思うと、哀しくてちょっと怖い小学唱歌

若い人は知らないだろうが、私たちの世代は学校で小学唱歌というものを習った。ラジオでもしょっちゅう聞かされた。だから脳にこびりついている。

先日、カルチャースクールの生徒さんたちと雑談しているとき、その話題になった。

「『村の渡しの船頭さんは、今年、60のおじいさん』って歌、今歌えませんよね。60過ぎても皆働いている」「いまどき、60の人におジイサンて言ったら怒られますよ」

「それに『赤とんぼ」の歌。『15で姉やは嫁にゆき」なんて。15で結婚させられるって、児童虐待じゃない?」

「『里の秋』もね。今じゃ、里って何?ですよ、あれ、戦地に行ったお父さんをしのんで歌ってるんだって」

「『母さんが夜なべをして手袋編んでくれた』なんて、いまどき、通じない。かろうじて私たちの世代止まりですよね」

「『村の鍛冶屋』の歌もね。今は鍛冶屋やさんはいない。溶接業って言わなきゃね」「『天秤棒かついだ魚屋さん』も消えたし」

歌の内容が世の中に合わなくなってきたのだ。なかでも『15で姉やは嫁にゆき』という歌詞はせつないというより、ちょっと怖い。

貧しい子供たちは人身売買同様、働きに出されていたのだ。そんな歌が文部省の推薦歌唱となっていたことも、ちょっと怖……。

今、日本はそんなあからさまな貧しさからは脱却したと思う。でも、もっと怖いのは、子供の貧しさが形を変え、姿が見えないようになってはいないかということです。


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