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ラベンダーの一生
野に咲きし日々もありしをラベンダー(長谷川)
ラベンダーは精神の安定に効果があるとか。
ドライにされていても
微かな香りを漂わせている。
香水に、芳香剤にと、その身を人に捧げるラベンダー。
三月に卵巣がんを摘出してからはや幾月、
私を見守ってくれた。
心が荒立つ日々も、心が病む日々も、悲しむ日々も
見守ってくれた。
このラベンダーは
友からのプレゼント、
どれほどの想いがこもっていたか。
それなのに、私は友から離れた。
抗がん剤でボロボロになった心と体には
誰かと付き合う気力はなかったのだ。
すっかり回復した今、
私は彼女を求めた。
自分勝手とはわかっていたが。
久しぶりに会った友は、九十を過ぎ、弱り、判断力もなくなっていた。
カサカサの手は震えている。
もう、会ってはいけない。
負担をかけるだけ。
人生はドライフラワーのようにひからびてゆく。
だが、ドライにされてもラベンダーは
芳香を放っている。
ラベンダー生きてをりけり冬に入る(長谷川)
終わり