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実朝は殺された。しかし彼の詩魂は、自分は自殺したのだと言うかもしれない。──小林秀雄 …
八の章 実朝は台所の足をからめて、ふくよかな肉体を愛撫していた。彼の深い渇きを癒す…
実朝は殺された。しかし彼の詩魂は、自分は自殺したのだと言うかもしれない。 ──小林秀雄 …
実朝は殺された。しかし彼の詩魂は、自分は自殺したのだと言うかもしれない。──小林秀雄 序の章 源実朝は健保七年(一二一九年)正月二十七日に鶴岡八幡宮の社頭で暗殺された。この事件の謎は深い。フィクションで歴史を描くことを禁じられている歴史家たちにとっても、この事件はいたく想像力をかきたてられるのか、その謎を暴こうと少ない資料を駆使して推論を組み立てる。しかしそれらの論がさらに謎を深めるといったありさまなのだ。それもこれも、実朝を暗殺した公暁がいかなる人物であったかを照射