
第二回あたらよ文学賞 落選作品 「海の色、君の瞳」
落選したので供養いたします🙏
狂愛を描こうとしたら、かなりエグいものになってしまったので有料です。
無料で不特定多数の方に晒す勇気がないので高額にしてあります🙇♀️
苦情もご遠慮ください。
返金不可ですのでご注意ください。
◇
「海の色、君の瞳」
「海という名前はどうだろうか」
「この子の名前?」
「そうさ。君は海を見たがっていただろう」
「そうね。きっととても青いのでしょうね」
妻であるミコトは、ベッドの上で大きくなった腹部を愛おしそうに撫でた。
周期はすでに三十五を越え臨月に入ったと言う。
男の僕から見れば、今にも生まれそうな大きさだ。
二十五年ほど前、地球での暮らしが厳しくなり別の惑星への移住を余儀なくされた。それが、この惑星サードだった。地球は、人が住める状態ではなくなってしまったのだ。
僕は当時まだ小さかったからうろ覚えだが、水や空気がダメになったのだと言う。
信じられないことに、数名の人間は地球に残ると言ってきかなかった。
今、惑星サードから天体望遠鏡で地球を見れば、かつての美しい青と緑の惑星は見る影もなくなっている。代わりに、くすんだ茶色と黄色が広がり、灰色の霞が地球全体を覆っている。薄い青い海がかすかに見えるが、それも薄くぼやけている。時折見える薄い緑と黒い斑点が、在りし日の森林と今の荒れ果てた大地を物語っていた。
そんな場所で残った彼らは今、どうしているのだろうか。
ただの大学研究員の僕には、それを知る術はないのだ。
「本を読んでほしいわ」
ミコトが、ベッド脇のサイドテーブルから本を手に取って、僕に差し出した。
その瞳は、ほんの少しだけ僕の方から逸れている。
「本なら、オーディオブックがあるだろう?」
「あなたの声で聴きたいの」
ここから先は
¥ 8,000
記事は基本無料ですが、サポートしていただけると励みになります✨サポートは私の原動力であるリポDの費用に当てさせていただきます!