読書記録#25『幸福な食卓』
こんにちは、艸香日月(くさかはる)です。
今回は『幸福な食卓』(瀬尾まいこ)の読書記録となります。
この本は図書館で本を紹介する本を読んでいたのがきっかけで手に取りました。
私はふだん、ミステリーやファンタジーやSFをよく読みます。
正直こんな、タイトルの響きからして「ふわふわ」したような小説はあまり読みません。どうせどこかの小説家がごまかし半分で書いたふわふわした絵本のような文章なのだろう、と決めてかかるわけです。我ながらかたよっていますが、それでもこうして時々ほっこりするようなタイトルの小説を読みたくなります。
今回は別の本で紹介されていたこともあり、いい機会だと思い、そんな先入観は脇へ置いて、とりあえず読んでみることにしました。
さて内容ですが、「私(佐和子)」の家族はみんなそれぞれに問題を抱えています。過去にある事件を起こした「父さん」、それを期に心を病み家を出た「母さん」、やはりそれを期に感情の起伏が少なくなった兄の「直ちゃん」。 みんなそれぞれに問題を抱えているんですが、それでも日常はまわっていきます。
この小説は「幸福な食卓」「バイブル」「救世主」「プレゼントの効用」と4つの短編が集まってできています。タイトルだけ見ると、どこかの宗教書のようですが、作者がクリスチャンなのでしょうか、作中にもちらっとそのような記述がありますが、真実は分かりません。
ともあれ、4編の短編は、中学生から高校生へと成長を遂げる主人公佐和子の目を通して、人間ドラマによりゆるやかに変化していく家族の様子がやさしく丁寧に描かれています。
ラストの「プレゼントの効用」では、少しショッキングな描写がありますが、それもこの小説のいいアクセントになっています。
主人公が中学生ということもあり、読んで心が洗われあたたかくなる、そんな小説でした。
手元に置いておきたい、大事にしたい小物のような一冊です。