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読書記録 #16『影絵の街にて』

 今回は、図書館の紹介コーナーに並べてあった『影絵の街にて』(新井素子)を手に取りました。

 毎話、数ページで終わる短編集です。
 以下、引用しましたが、文体がかなり特殊なので好き嫌いが分かれると思われます。

 
 これは、昔々、動物たちが普通におしゃべりをしていた時のお話です。
 あるところに、とっても優しい熊さんがいました。その熊さんがどんなに優しいか、そりゃもう、誰にでも形容できないくらいで――つまりは、それ程優しい熊さんだったんですね。そんなに優しい熊さんですから、その熊柄に惹かれてか、可愛い奥さんをもらうこともできました。熊さんは、それはそれは奥さん熊のことが好きでしたし、実際、とっても大切にしていたんです。

『影絵の街にて』(新井素子)

 私は、はじめて読んだ時に「なんて甘ったるい文章なんだろう」と思い若干ひいてしまったのですが、それでも読み進めると、なんだから不思議な新井ワールドに引っ張り込まれていって、あれよあれよという間に読了してしまいました。
 読み終わった後には、さくさくした気分の時には向かない文体かもしれないけど、たまにはこんな甘いのもいいかもしれない、と思わされました。

 そして。
 よく見ると表紙に新井素子(日下三蔵・編)と書いてあります。
 そして「あとがき」を読むと、日下三蔵さんのコメントが。
 そこで、実は大昔に書かれた新井素子さんの小説を、日下三蔵さんが編集したもだったということを知りました。
 その出版から編集までの時間を考えると、なるほど随所に見られる古めかしい表現も納得でした。
 ともあれ、ちょっぴり不思議な新井ワールドを味わいたい方にはおすすめです。
 一話がとても短いので隙間時間に読めて重宝しました。
 そのため忙しい方にもおすすめです。
 



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