ナナクジャクの彼方の歌詞に込められた物語を、ヒトとキジンの観点から考察します。
年老いたあの子(エーテル)の夢をみた。この世界にはかつて
僕が好きだった娘(イチジク)が確かに存在していた。
周りと考え方が少し違っていた僕は人々に
いじめられたり、避けられたりしていて
除け者として生きてきた
僕だって自由を得たいけど
こんな罪だらけの僕なんかに自由を得る資格なんてあるのだろうか?
(羨ましさや憎しみなど、湧き出てくる感情に
どれだけ惑わされてしまってるのだろう?
いい考えが浮かばない。もし僕に羽があったら、すぐにでも君(エーテル)を直しに行けるのに)
止め処なく溢れる感情の渦に攫われ、あてもなく彷徨っていた。
(何かが視界の片隅でキラリと光った気がした。
そこを見ると、力無いコロンを抱えるキジン(アポストロフ)の姿があった―)
僕の求めるものはどこに居る?
"貴方のすぐ傍にいるじゃない"
誰かが囁きかけてくる気がした。
"救う、救うんだ。彼女(エーテル)が弱りきってしまう前に!"
妖精に誘われるようにして
僕は想うがままに
彼(アポストロフ)に接触し、彼女(コロン)を利用できないかと
脳内で策を巡らせた。
エーテルに憧れたその美しい躯(コロン)は、
鋼の刃に貫かれ、思いわずらって死んだという。
これも人々の理不尽がもたらした末路なのかと、
鮮やかに血塗られたその躯を見て彼等に憎悪した。
(そんな折、爆発の閃光を視界に映す。
視線を向けた先では、レジスタンスとキジンの戦闘が繰り広げられていた―)
僕の求めるものはどこにある?
"貴方も同じようになりたいのね。"
何かが耳元で囁いてくる
"それら命が潰えるまで、その戦火が消えるまで殺し尽くしてしまえ!"と
妖精に誘われるように、僕は想うがまま
彼等に手をかけ、腕を鮮血で染めた。
どうしてこうなってしまったのだろう。
人を憎み、自分の想いに忠実になって
血塗れた腕を伸ばしたところで
夢なんて叶うはずもなかった。
それでも―
彼女(エーテル)を求めるがままに、
迷いを振り切って何もかもを犠牲にし、その腕を紅く染めた。
彼女(エーテル)に先立たれ、
自身(ピリオ)は死ぬことを許されず、
いたずらにピリオは嗤いだした。
(そうか、その時私は気付いた。
"彼も私たちと同じ過程を辿っていたというわけか―"
気付いたところでもうどうしようもできなかった。
私の胸元には、鋼のナイフが突き刺さってしまっていたから―)
力尽き身動きのとれぬ少女は、その胸に刺さる金属の冷たさを感じることもなく、ただその嗤いを聴き続けていた。