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多文体俳句集『春の題詠』60句 〜文語体、口語体、会話体の作品集〜
多文体俳句集『春の題詠』
文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の各作品で構成した俳句集です
2025年2月の作品を集めました
今回は共通のテーマを設けてつくり分けています
また各文体で同じ季語を使用して、比較して頂けるようにしました
575の型・季語・切れ字の基礎、個人的な俳句の目標も意識しました
よろしければ楽しんでみてください
*作品はすべて既発表句です
*文語・口語の図を記事末に記しています
『春の題詠』
多文体俳句集
第一部
〜文語体俳句〜
日の出まで雲混沌やはるあけぼの
踏めば山息づいてをり木の芽どき
虚子句集寝転ぶほどにのどかなり
雲すこしいそがすほどやはるの風
新幹線ひとすぢにかぜひかりけり
はるのゆきかさね合掌づくりかな
ときかけてしづむにごりや春の池
草のさき背のび背のびの春野かな
一打ちに目を覚ましけりはるの土
枝も山もふところふかき梅見かな
草団子甲斐のはなしをはじめけり
はるの灯や屋形船夜になじみつつ
太鼓橋まるくわたりぬはるまつり
いたみを遠く思ひ出づる日啄木忌
はらみ鹿足あとしかとのこしけり
舞ふそらをひねりやまざる燕かな
刺し身にも色さしにけりさくら鯛
やまやまのその葉がくれの椿かな
かんがへの腑に落ちにけり沈丁花
咲き初めて桜ささやくごとくなり
第二部
〜口語体俳句〜
島かげよ海映えばえと春あけぼの
ひとえだをうつして淵か木の芽時
立ちつくすほど大山ののどかさは
旅のバス浮沈して野ははるかぜよ
清水寺手きよめるときかぜひかる
はらはらと京のじかんよはるの雪
うずまいて鯉のにしきのはるの池
春の野よおくれた雲はかぜに消え
耕うん機押せばいろづくはるの土
梅見して皆ゆったりと間をつめず
草団子焼くよくるくるちりちりと
二の丸を池にうつしてはるの灯か
ちょうちんは花から花へ春まつり
しんと詩が死にかさなる夜啄木忌
はらみ鹿いのちの腹のおもたさよ
まふたつに空切り広げつばめとぶ
押して断つ出刃ほうちょうよ桜鯛
挿し活けて動から静よやぶつばき
描いた絵にいのちのにごり沈丁花
咲き満ちて桜のおくに立つ富士よ
第三部
〜会話体俳句〜
起きたかい船からの景春あけぼの
峠からつづら折れです木の芽どき
兜太句集胡座をかかすのどかさだ
来て春のかぜですいつくしま神社
大鳥居くぐるふねだよかぜひかる
春の雪千々におもいは尽きません
照りかえします日浮かべて春の池
一輪のむらさきが揺れはるの野だ
北の地をにぎりしめるかはるの土
梅見して春をなんどもたしかめた
こしあんは撫でつけてくれ草団子
暮れるたび遠いね島のはるの灯が
いざひぶた切れ火縄銃はるまつり
夜うるむよ詩をてらす灯に啄木忌
神にしんとつかえています孕み鹿
黒いかぜ白いかぜですつばめとぶ
花ですねかざり盛りしてさくら鯛
寺つばき尋ねるまでもなく八重だ
ふたり過去見つめだしたか沈丁花
舞いだして桜にかぜもありません
終わり
◇ 前回の作品集 ◇
『三春』
多文体俳句集
◯つくり分けについて
今回は共通のテーマを
設けてつくり分けました
また各文体で同じ季語を
使用して比較して頂けるようにしました
◇今回のテーマ等
・自然詠と人事詠
・「自然の美と暮らしの真」というテーマ
・俳句、一行詩の両側面を探る
・切れ字、切れ、季語の活用
・格調、機知、余情、間、深みなど
・同じ季語の使用
◯作者の個人的な考え、見解
◇その目的
多文体での俳句づくりの目的は、単なるパフォーマンスや他との競争ではなく、
自分自身の俳句やそれぞれの文体表現の可能性をさぐり、深化させていくことだと捉えています
俳句をより学び、より楽しむことを大切にしています
現在の試みとして、
文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の3つ方向性を順次探究しています
◇文語体俳句
「古典語・歴史的仮名遣い・古典的切れ字」を基本にした俳句
◇口語体俳句
「現代語・現代仮名遣い」「現代的切れ字」を基本にした俳句
◇会話体俳句
「現代の話し言葉」やそのリズム、フレーズ、対話、独話、セリフ等を活かした句
など、個人的に大まかに分けて取り組んでいます
各文体、仮名遣い、
切れ字について短くまとめます
◯文語体が基本の俳句
◇文語体
古典語法に基づく伝統的で格調高い文体
◇歴史的仮名遣い
古典的な仮名遣いのこと
・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど
◇古典的切れ字18字
や、かな、けり、よ、か、ぞ、に、へ、せ、
ず、れ、け、ぬ、つ、し、じ、らむ、もがな等
◯口語体が基本の俳句
◇口語体
現代語法に基づく日常的で自然な文体
◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど
◇現代的切れ字 の候補
よ、か、ぞ、と、に、へ、せ、で、まで、
ず、れ、け、た、が、て、は、な、こそ等
◯会話体が基本の俳句
◇会話体
話し言葉をそのままに再現した文体
◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど
◇主な語尾の候補(要検証)
です、ます、でした、〜だ、
だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ等
*仮名遣いについてなど一部例外もあるようです
下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です
◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体
◇口語=口語体=現代語=書き言葉
∟==話し言葉
◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い
◯使用している切れ字について
下記は
現代的な切れ字の候補についての記事です
「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ
◯俳句の目標
下記について、毎日の投稿などで
月日をかけて探っていければと思っています
「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」
「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」
「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」
「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」
*作品は主にXに投稿したものです
*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください
*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります
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