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自由律 作品集 150句 〜春夏秋冬〜

俳句にご興味のあるnoteのみなさまに、俳句の様々なことについてご紹介をしていく記事です


自由律句の作品集です。

これまでに詠んだ作品の中から150句をえらんでまとめました。

よろしければご覧になってみてください。

*作品はすべて既発表句です
*順次改訂していきます


自由律句
〜作品集〜

◇ 春の句 ◇

口笛を吹いたら春が来た

大家族の春の灯一つ

のどかに歩けば鳩ついてくる

梅いちりんに空

それきりうしろすがたの卒業

鼻うたが一羽の蝶になった

羽ばたいた蝶々みな出会う

どこで生きても来る春か

一杯の酒で春になった

しゃぼん玉にも人生を見た

子猫抱く子を抱きあげて父

蛙がはねた子どももはねた

桜よまた会いに来た

はっと上げた顔に花吹雪

手をふる旅人花ふぶきになった

黒い影白い影のつばめとぶ

希望とはこんなに小さな花種蒔く

土筆かこんにちは

物に当たってばかりの虻だ

旅客機飛び立った先おぼろ月

真夜中にも落ちる椿

きりんのあたまが降りてくる春空

平和な空に辛夷咲いた

答えのない海見つめにきた春

引く波おとに春惜しむ

熱気球どこまで飛んでいっても春


◇ 夏の句 ◇

千年後もごうごうと滝であれ

平和がおくりもの母の日よ

梅雨の星あきらかに一つ

傘さした人から梅雨に入る

雨のしずかさの田植えか

ひかりが這ってゆくかたつむり

夜空というほたる籠よ

年上からだまりこむ蛍籠

誰が誰やら麦わら帽子の子ら

見あげ見すえて登山杖つく

一歩一歩に山ほととぎす

雲の峰くずれてもくずれても沖に立つ

目をとじて街の夏を聞く

噴水という花一重

窓あけてこころの風鈴鳴った

冷酒でいい冷酒がいい

道後温泉洗い髪

旅の鞄から蟻でてきた

風鈴売りの去ってゆく音

いのちの重さにきしむ籐椅子

ちっぽけな裸になりにきた露天湯

孤独で涼しい

自分で選んだアイスティーも人生も

箸とって涼をいただく

むこうがわいつもまぶしい噴水

帰省しないで空見ていた

行こう海の日だ

海のやわらかさを平泳ぎ

親心撃ち抜ぬかれた水鉄砲

大きな夕日小さなサーファーたち

ラジオから沖縄の蝉の声

旅人が落とした氷菓もやがて消えた

画家のカンバスひまわりと海

香水えらぶみらいをえらぶ

泡盛飲んでこんなに笑う自分

蝉落ちて何事もなかったように空

手にうけてトマトという大雫

かじった顔まですももだ

青田風見えた

夕焼こやけ今日も生きた

とおい星ほど涼しさよ

手花火よせあった恋

どの顔にも涼しい月あかり

河鹿が鳴きしずめる星空よ

雷に太古を聴く

ねがい祈ってわすれたころに虹


◇ 秋の句 ◇

星空にむすんで七夕たんざく

誰一人いない銀河仰ぐ

だれかのために星流れた

咲きたい朝顔から咲いてゆく

雲が嶺をこえて秋

とぶ秋蝶かまぼろしか

空ながめる顔秋めいてきた

秋の蚊打って独り

西瓜抱える子の心意気

すこし遠くなった八月の海の音

天主堂のしずかさ蜩のしずかさ

両肩にずっしりと重い残暑だ

秋の鳥籠がからっぽ

赤いほおずき市が立った

ひるがえりつつ踊るよさこい

手足いちずに阿波おどり

宴ぬけだして月見ていた

目にいっぱいの名月

声の待たれる虫籠一つ

黙とうなずく美術展覧会

手にした陶器に秋のしずけさ

電車片道二十分の秋思

胡蝶蘭が飛んでいきそうな花屋

喫茶店の名が変わって秋

こんなにさびしい町にも台風

台風見つめためがねを拭く

身にしみて傘にふる雨

嘘つかない鏡をまえに長い夜

だれの心も鬼胡桃

バーが灯をともしてより夜長

酔って街の夜寒の底

会いにゆく坂初紅葉

平安絵巻のようにもみじ山

神社の大鈴鳴らすたび秋

新蕎麦のよくはためく幟だ

金閣映して水は秋

案山子も忙しくなって穂波よ

力士が踏みならす地元の土

すずめらがきて終る稲刈り

どすんとかぼちゃ買ってきた

嘘つけば紅葉ひらひら

わたらなかった曼珠沙華咲く橋

どこかに咲いている香りの夜顔

露草だからそっとしておく

一生かけた菊大輪

一羽を追ってわたりゆく鳥

すすきはらという漠然

柿かじりながら時代に遅れてゆく

きっぱり注文したとろろそば

いずれ花野になるふるさとよ

かがむたび手に増える草の花

バス乗りまちがえてどこまでも秋野

頭をなでた鹿ついてくる

大鳥居くぐれば秋気

深秋の橋のうえに落ちつく

どんどこどんどこ鳴っている秋祭か

家主かわっても色変えぬ松

ハロウィンもうじき冬だ

蟻たちもいそぎだして晩秋

とび石跳んでいったさきに冬


◇ 冬の句 ◇

冬が来たか拳にぎる

ぬくいからだ一つで枯野にいる

冬のとびら引いて開けた

見えない風あそんでいる冬田だ

空じゅうに鳩翔つ七五三

大地踏んづけて引き抜く大根

おでん屋台がにぎわう平和

話きいてくれた熱燗もう一本

重い自分のコートだ

マフラーにうずめるうれしい顔

聖歌は鼻歌ぐらいにしておく

揺さぶってまたぐ凍った自転車

置いたラグビーボールに風

湯気ごと持ってきた釜揚げうどん

さす傘のかたちにけぶってしぐれ

年の瀬の雲せまって来るか

自分という冬景色よ

短日の果てまであるく


いつも
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ありがとうございます


作品集内作品
改訂日
2023年8月01日