だれかの妻になるということ

小さい頃、私はピンクが大好きだったらしいよ。
その頃の気持ちは思い出せないけど、髪留めも、トレーナーも三輪車も、迷うことなくピンクを選んでたんだって。だけどね、覚えてる限り、私が選んだものはブルーだったし、買ってもらったものもブルーがほとんどだったの。3歳の時に妹が生まれたんだけどお揃いの服を着るとき、髪留めを付けるとき、妹がピンクで私はブルー。サンダルも、缶バッチも、スーパーミメルもそうだった。
小学校3年生の時、親友ができたの。ほら、結婚式に来てくれた子。お揃いのシャープペンも、ネックレスも、あの子がピンクで私がブルー。
うん、好きで選んでたんだよ。その頃よく聞かれたじゃない、好きな色。プロフィール帳とか流行ったよね。よく書いてた書いてた。迷いなく答えていたと思うよ。
でもね、このザマを見てよ。ピンクのiphone7にピンクの座布団に、椅子にかかったピンクのユニクロのフリース。ピンクの茶碗にピンクの歯ブラシに、ピンクの枕にタオルケット。
全然気付かなかった。私だってピンクを選んだっていいんだよね。タガが外れちゃったみたい、あなたと結婚してから。ピンクの呪いを解いてくれてありがとう。

彼女は言った。僕がよく似合うと褒めたロイヤルブルーのドレスを着た、結婚式のあとで。

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