ズザナ・チャプトバーの本を読む
前スロバキア大統領ズザナ・チャプトバーの本が昨年、チェコ語で上梓された。
著者はチャプトバー本人とチェコの週刊誌Respektの編集長エリック・タベリ。タベリ氏の質問にチャプトバーさんが答える形式で構成された250ページほどの力作だ。全編通して、チェコ語で書かれている。
チャプトバーさん、と書いたが、彼女は現在まだ51歳。
私と同じくX世代とよばれる年代の生まれである。
大統領就任時は45歳であり、女性初であり、歴代最年少でスロバキア大統領就任となった。
私がスロバキアを本格的にウォッチしはじめたのが、彼女が大統領になる前年の2018年だった。
だから、彼女が立候補したこと、当選したこと、その後のコロナ禍とプーチンのウクライナ侵攻、スロバキアの社会不安、政権交代など、大きなニュースを彼女の動向とともに見てきたことになる。
それだけでなく、就任挨拶のスピーチだったと思うのだが、彼女の話す姿や内容から、彼女がどれだけ頭脳明晰でやさしい人なのかが伝わってきたのをいまもまだ覚えている。
そこからずっと、もちろん彼女を応援したい、彼女からたくさんのことを教わりたい、それだけでなく大きな任務を抱えた彼女がちょっと心配なので遠くからだけど見守りたい。
そんな感じで、とにかく見逃したくない気持ちになって、今に至る。
だから、私にとっては単なる政治家とか有名人という以上の感覚が生まれていて、何となく「さん」をつけたくなった。
2024年11月のチェコ旅行も、この本を買ったり、ビロード革命記念日のイベントに寄せられた彼女からのビデオメッセージを見に駆けつけたり、彼女を追ったドキュメンタリー映画を見たりしていた。
そんな背景で手に入れた本であるが、せっかくなので、少しずつ読みながら、チェコ語部分を紹介し、彼女のことを日本語でも残してみようかなと思う。
タイトルは『Neztratit se sama sebe(自分を見失わないこと)』。
本の冒頭にチャプトバーさんの前書きと、タベリ氏の前書きがそれぞれある。
チャプトバーさんの前書きの最後の段落。
やっぱりこの人、気になっちゃうなー、と思った部分を引用する。
チャプトバーさんの言ってることが伝わればと思うので、荒削りだが、ざくっと訳した。
チャプトバーさんが、自分のキャリアを女性としての道と関連づけて認識しているのが私には少し意外だった。
性別を意識する必要のないほど、彼女自身は立派に大統領職を務め上げたと私は思うのだが、彼女もまた、男性の多い環境でありがちないろいろなものと闘ってきた人であることがうかがわれた。
つづくエリック・タベリ氏の前書きも、雑誌の編集長としてチェコ社会やヨーロッパ社会をつぶさに観察してきた人物ならではの、興味深い内容がたくさん含まれている。
まだ冒頭の少ししか読んでいないけれど、日本語でふだん本を読んでいないせいか、チェコ語で読む彼らの言葉がけっこう深いところに刺さってくる。
チェコで、スロバキアで、真摯に世の中に向かいあう人たちがいることを感じられると、私の心の中には静けさが戻ってくるような感覚がある。
そんなわけで、これから、ときどき、チャプトバーさんの本の一部を、日本語で少しだけ紹介していけたらと思っている。