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プラハの郵便局でチェコ語を使う(旅の5日目)

プラハで旅の5日目。

3日目に遭遇したビロード革命記念日のイベントでの衝撃と感動もやわらぎ、日本の生徒さんとオンラインレッスンを挟みながら旅する日々に落ち着きが戻ってきた。

この日は午前中はまず郵便局へ。
宿の近くの郵便局でもよかったのだが、宿からそれほど遠いわけでもないので中央郵便局へ。10分もトラムに揺られるともう徒歩で着く。

いつもの中央郵便局へ。

いつもの中央郵便局、と書いているが、このプラハ中心地にある一番大きくて、何度も使ったことのあるこの郵便局の建物は売りに出されているそうだ。
移り変わりは世の常だが、別のものになってしまう前に、できるだけ建物に入りたい、この郵便局を使いたい、と思っている。

前日に書店で見つけたきれいなクリスマスカードと、チェコから友人宛に送りたかった小さな包みを窓口で差し出し、伝票を書いたり、送料を払ったりした。

郵便局の窓口の職員は、チェコ語しかできない、対応が冷たい、と長年言われてきたような気がする。
でもなんとなくそういう愚痴は、サービス業や接客業に慣れすぎている日本人の感想でしかなくて、あまりそういうものの見方をしたくないと思ってしまう。
チェコには「接客」なんて概念は、まだないと思う。その人が郵便の専門家なのであれば、多少の無愛想は問題にしなくていいのではないか。

しかし、この日の窓口のおばちゃんはチェコ語で、親切で、やりとりも対等で、スムーズに進んだ。
これなら気分よく利用できるな、と思いながら、そのまま右手にある切手収集家のための専用窓口へ。

たしか郵便局の中は撮影禁止だったような気がするので、あまり写真を撮らなかったが、それでもチェコ語の生徒さんや日本語でnoteを読む人に伝えたくて隠し撮りしてしまった。

だって、この切手販売の窓口。
ここはじつに豊富に記念切手が取り揃えられているのだが、どの切手もガラス窓の向こう側にあり、手前から奥へ3列くらい、左右には4メートルくらいの幅で、切手が巧妙に並んでいるのだ。

切手はガラスの向こうに誇らしげに並んでいる

つまり、ガラスを挟んでいて自分では手に取れないので、窓口のお姉さんに「どの切手を何枚ください」と口頭で伝えなくてはならない。
指差しではギリギリわかりにくそうな距離なのだ。

口頭で、といっても、「綺麗な切手」「青い切手」「右の切手」くらいの表現力ではなかなかわかってもらえないであろうし、「あ、それじゃなくて左の」のように咄嗟のやりとりも多くなるであろう。
そして、うまく伝わらなければ、窓口のお姉さんはどんどん険悪な表情になる可能性がある。

チェコの切手は格別の美しさ。

とはいえ、こういう状況は初めてではない。私ももうプラハに来るようになって25年以上の身である。

どの切手を何枚ほしいのか、こちらがイニシアチブを握った状態で、ガラスの向こうのお姉さんの手にとらせるくらいのチェコ語力はある、と自分に言い聞かせて、話しかけてみる。

「ドブリーデン」

お姉さんはさっそく何かをじゃまされたといわんばかりの面倒くさそうな表情をしている。

うわー、キタキタ、これがチェコの郵便局の職員の態度よ、ウハハ、とにやけそうになる気持ちを抑えつつ、

「切手を2枚ずついただきたいんですが、ザートペック夫妻の切手シート、それから…」

とひるむことなく、おびえることなく、少し大きめかと思うくらいの声量で切り出してみる。

お姉さんは立ち上がり、「シートで2枚でいいのね?」と尋ねます。

あ、「2枚ずつ」って説明じゃ不明確だった。気づいて私のしゃべりに少し間があくと、もうここからはチェコ語ネイティブのお姉さんに主導権が移ってしまった。私は答えるのみだ。

「はい、シートで2枚です。あと、トワイヤンの」
「これは1シートで4枚だけどどうする?」
「あ、じゃあ1シートください」

「あとボヘミア・ジャズもお願いします」
「これは4枚でいいの?」
「はい」

枚数をあんまり考えてなかったことと、お姉さんの勢いにビビってきちんと訂正しなくなった結果、2枚ずつでなく4枚ずつに買うことになったが、もうこれはこれでいい。
まだ私のチェコ語では会話のイニシアチブはとれなかったが、無理にとらなくていいという気もする。

戦利品。

もっと買いたいような気もしたが、チェコ切手は本当に沼なので、このくらいで収めてよかったのかもしれない。2024年発行の記念切手のカタログが無料置いてあったのでそれをもらってきた。

オンラインレッスンのため、いったん宿に戻ると、トラムの停留所にクリスマスリースの土台をもったおじさんが歩いていた。
そうか、クリスマスが近いのだ。

リースいいですよね。

そして、宿の下にあるスーパーで、宿で飲みたいあったまるお茶、なんだか食べたくなってしまったボヘミアチップス、何かよくわからないお菓子を購入して部屋に戻る。

チェコのかさばる食品たち。

この日の午後についてはまた次の記事で。

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Hatsue Kajihara
ここまで読んでいただき、とってもうれしいです。サポートという形でご支援いただいたら、それもとってもうれしいです。いっしょにチェコ語を勉強できたらそれがいちばんうれしいです。