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来戸 廉
2024年10月3日 13:31
トイレに時計を置こうと言い出したのは、夫だった。 一日に数回、数分を過ごすだけの狭い空間には要らないと思ったが、それ以外に取り立てて反対する理由もなかった。もし気に入らなければ片付けてしまえばいい。そう軽く考えて同意した。 数日後。 外出から戻って玄関のドアを開けるや否や、けたたましい音が私の耳に飛び込んできた。 どん、どん、どん、と壁を震わせている。何事かと、靴を脱ぐのももどかしく
2024年8月21日 14:17
「もう、パパ。早く出てよね。急いでいるんだから」 ドアのノブが、ガチャガチャ鳴る。「せかすな、今出る」「早くしてよ、もう」 二階のトイレ。ドアの外では、まだ不満が足踏みしている。「また本でも読んでるんでしょう。もう。持ち込まないでって、言ってるのに」 この騒ぎに、幸子を呼びに来た妻まで加わった。「ここが一番落ちつくんだよな」「朝は忙しいのよ。少しは、みんなの迷惑、考えてよ」 二