七草粥の美味さ
人日の節句
学校に行くことが出来なかった僕は、何気に落ち込んでいた。
そして、課題をやる気が全く起きないことにも落ち込んでいた。
僕は、正月が嫌いだ。
おせち料理に、兄より少ないお年玉、更新のされない癒しの小説、今年は年賀状すらストレスとなっていた。
なんだかんだで、僕は疲弊していたのだ。
そんな僕を温めてくれたのが七草粥。
美味い…
その一言に、尽きる。
晩飯に出された七草粥は、唯々美味しかった。
お粥だけでは少ないだろうと、母が出してくれた鮭もまた脂のノリが最高で美味かった。
鮭とお粥を一緒に食べた時、鮭の塩味とお米の甘味がいい塩梅でどちらの旨さも引き立てていた。
お粥なんて、昔は嫌いだった。
味気が無いし、お腹は膨れないし…
そう思っていた。
でも、違う。
お粥は、ゆっくり食べるものだ。
ひと口を堪能して、噛みしめて、温まるものだ。
それに気付いた時、母親が作ってくれたみぞれ粥を思い出した。
よく体調を崩して熱を出した僕が、食べられるようにとわざわざ大根を買いに行って作ってくれた幼稚園の頃の記憶。
あの時、お粥の美味さなんて分からなかったけどただ温かさと優しさがこもっていたことは分かった。
そして今、僕はちょっとだけ大人になった。
お粥の美味さを分かってしまったのだ。
だから、お粥の魅力を今なら語れる。
けれど、だからこそ今は、、
お粥に詰まった温かさを忘れないように噛みしめて食べたいと思ってしまう。