移送サービスのシートベルト安全管理をアップデート


ご無沙汰しております。
3年前に乳がんが見つかり、自身の病気治療でしばらくお休みしておりましたが、最近、気になったニュースがありましたので少しずつ再開することにしました。

まだ体力等に波がありますので、スローペースになるかと思いますが有益な情報を配信していきますので、またお付き合いいただけますと嬉しいです。



チャイルドシート利用基準変更が意味するもの




というのも、以前noteの記事でもご紹介したのですが
送迎車や介護タクシーなど移送サービス中の利用者様のシートベルトについてです。

先日、JAFがチャイルドシートの利用基準を身長140センチ未満から150センチ未満へ引き上げました。そのきっかけとなったのは、シートベルトをしていたにも関わらずお子さんが重症を負った交通事故でした。

そしてJAFの利用基準引き上げのニュースによって、多くの移送サービス従事者様が不安と戸惑いを覚えたと思います。

なぜなら日本の女性高齢者様の場合、身長が150センチ未満の方が多くいらっしゃるからです。お子さんならチャイルドシートに座らせれば安心ですが、成人の場合はそうはいきません。

JAFも「大人は自分で調整ができるので」と本人任せな見解を示しています。
では、移送サービスも本人任せでいいのか?
というと、なかなかそういうわけにもいきませんよね。

まず健常者であっても、自家用車であっても、シートベルト着用の法的義務は運転手にあります。これは後部座席でも一般道路でも変わりません。

では、シートベルトの金具を差し込んでさえいればいい
   ↓
安全にシートベルトを装着しなければならない


への意識改革が求められている。これが今回、JAFの基準変更が移送サービス事業者にもたらした安全基準のアップグレードです。

交通事故が起これば、ご家族から責任追及される場合もありますし
認知症の方をはじめ介護を必要とする方をお預かりするサービスの特性上、安全管理はどうしても事業者側に求められる比率は高くなります。

その中でのチャイルドシートの利用基準の引き上げが発表されました。この変更が意味するものを考えていきましょう。

それは、きっかけとなった交通事故の結果が示す通り、身長150センチ未満の場合は重篤な結果を招く場合があるということです。
実は、JAFが示した身長150センチ未満という数字、あまり信頼性がない気もしています。なぜなら、身長156センチの私が後部座席に座った場合、普通に装着すると上のベルトが首にかかってしまうからです。
個人的な体験から言うと、やはり身長160センチ未満なのではないかと思っています。

しかし、数値基準をたくさん提示するとわかりにくくなりますので、ここではJAFの身長150センチを基準に考えていきたいと思います。


重症化の原因は・・・?


ではなぜ、身長150センチ未満だと重篤な結果を招くのでしょうか?

日本の工業製品は<身長170センチ前後の成人男性>を基準に設計されています。その範囲に適合する体格の人の場合は、シートベルトを引っ張って金具に差し込めば正しい位置で装着できるようにできています。

しかし、日本人女性の場合は身長160センチ未満の方も多く、一般的な工業製品は体に対して大きすぎるのです。
まして、高齢者の場合、身長150センチ未満の方も珍しくありません。

こうした体格差がある中でシートベルトを引っ張って金具に差し込むと、上のベルトが首や顎にかかったり、下のベルトがウエストにかかったりすることがあります。

この体格差が重篤な結果を招く原因なのです。これは、お子さんや高齢者に限らず、すべての人にあてはまることです。

シートベルトが義務化され、私たちの生活の中でシートベルトはとても身近なものとなりました。それだけに、使い方やその危険性について意識することなく使ってはいないでしょうか?


シートベルトの歴史


そもそもシートベルトとは、どのようなものなのでしょうか?
まずはその歴史から紐解いていきたいと思います。

発明は1899年にロンドンで2人の乗員が車から社外に投げ出されて死亡するという事故がきっかけでした。それを受けてフランスの技術者ルボーが背もたれの高いシートと自動車等の防護用ベルトを考案。このベルトが後のシートベルトとなりました。(日産自動車HPより)

その後、ボルボのエンジニア、ニルス・ボーリンが現在の3点式シートベルトを発明。ボルボはこの特許を「誰もがこの技術の恩恵を得られるように」と、無償公開し世界に広まりました。(ボルボHPより)

日本では1966年に自動車用安全ベルト(シートベルト)がJIS規格に制定され、1969年より運転席のシートベルト設置が義務付けられました。以降、1973年に助手席、1975年に後部座席のシートベルト設置が義務化されてました。
そして、1985年に前席、2008年に全ての座席において、シートベルトの着用が義務化されています。
日本でのシートベルト着用義務への推移について詳細を知りたい方はヴォルクスワーゲン江戸川さんのブログがわかりやすいので、そちらを参考にされるといいでしょう

ヴォルクスワーゲン江戸川さんのブログ
https://www.vw-dealer.jp/blog/vw_edogawa/2022/04/post-159.html




シートベルトの安全効果


シートベルトの着用によって何が変わるのでしょうか?

シートベルトを着用すれば交通事故が起こっても無傷というわけではありません。シートベルトが果たす役割は、シートに座っている人の体が前や上へ飛び出すのを抑えることです。

衝突などの衝撃が加わると、人の体はシートを離れて勢いよく前方へ飛び出します。その際、前のシートに激しくぶつかって前のシートをへしまげ、前席に座っている人を巻き込んで大怪我を負うことがあります。また、前席に座っている人がシートベルトを着用していない場合は、車のフロントガラスに頭から突っ込んでしまうことがあります。

このような衝突時の体の動きを2本のベルトで最小限に抑えるのがシートベルトです。ネクスコ西日本によると高速道路での交通事故について、シートベルトを着用している人に対して、着用していない人の死亡率は17倍と発表しています。


一般道だし安全運転だから大丈夫!の罠




運転を仕事にしている方の中には、こんなふうに思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

俺は安全運転だから、絶対に事故を起こさないから大丈夫。と。

しかし、貰い事故は避けては通れないですよね。実際、介護保険や福祉サービスが充実すればするほど、施設や通所サービスの送迎や通院の福祉車両、特別支援学校の送迎バスなど、福祉事業者の車が増加してきました。
その他にも、Uberのような新しいサービスの自転車やバイク、さらには電動バイクのレンタルサービスような素人な走りをする軽車両も出てきました。地域によっては観光客の増加も、運転のリスクとなっているかもしれません。
実は今、道路事情はかなりカオスな状態になっているのです。

しかも、サービス内容によってはかなり入り組んだ見通しの悪い細い道を運転しなければならないこともあると思います。細い道はスピードを出さないのは鉄則ですが、それでも「時速7キロでもシートベルトなしでは体を守りきれない」と、福岡県警はホームページで訴えています。

具体的には時速40キロで体重のほぼ30倍の力がかかるそうです。
体重50kgの方の場合1500kgの衝撃がかかり、時速60キロでコンクリートの壁に激突した場合、14階の高さから落下するのと同じ衝撃と言うデータがあるそうです。

これらの衝撃を受け止めるのがシートベルトです。
時速7キロの衝撃については、具体的な数字は見つかりませんでしたが、スピードが出ていなくてもシートベルトの重要性について軽視できないことがわかります。

そうは言ってもシートベルトの着用って、実は難しいですよね。
そもそも一度も誰からも教えてもらったことないですよね。
そして、今回のチャイルドシートの基準変更を受けて、身長150センチ未満の人のシートベルトをどうすれば安全に着用できるのか不安に思っている方もいると思います。

間違えたシートベルト着用による死亡事故をゼロにしたい。

その思いで今回、シートベルトの安全基準をアップデートしたい方のためにに動画を作りました。
利用者様のシートベルトをどのように着ければいいのか。
どのようにリスク管理をすればいいのか。
一緒に考えていきたいと思います。

お役に立てましたら、職場でシェアしてくださいね。
正しく事故予防して、利用者様も職員も会社もWell-beingにしていきましょう。

幸福介護研究所チャンネル
https://youtu.be/LtYe5-2UbLo?si=l35K1iDwol8gpvXt

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車椅子安全利用コンシェルジュ 久内純子
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