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「お尻を奥まで入れる」の意味・・Vol.2

介護の現場では、お尻を奥まで入れて座るのが正しい座り方といわれています。そのため、お尻を前にずらして座っている「滑り座り」になると「お尻を奥まで入れてくださいね」と声をかけたり、座り直しをお手伝いしたりします。なぜでしょう?

私たちは、誰でもいろいろな座り方をしていますし、正しい座り方をし続けるのは疲れるものです。

本来、姿勢を変えることは悪いことではありません。私たちもずっと同じ姿勢で過ごしているのは辛いです。体を動かしたり、姿勢を変えてお尻への負担を減らすのは、むしろいいことです。
事実、可能な方にはプッシュアップや座り直しでお尻にかかる圧力を緩める瞬間を作ってもらいます。
ですから、「滑り座り」も少しの時間でしたら構わないのです。

ただ、「滑り座り」がその人のスタンダートになっていることが問題なのです。

特に、車椅子のバックサポートの機能を上手く使えなくなります。

バックサポートは、骨盤や胸部を後ろから支えて、体幹の姿勢を整え安定させるためのものです。それによって、体幹の横倒れを防ぐ、上肢を動かしやすくする、飲み込みやすくする、疲れやすさを軽減する、胸郭を開いて呼吸しやすくする、「滑り座り」や転落を予防する、「滑り座り」や座り心地の悪さなどが原因の褥瘡予防などの効果が期待できます。
しかし、「滑り座り」をすると、骨盤がバックサポートと接触しなくなるためサポートができなくなります。そうすると、解決、あるいは軽減できるはずだった上記の問題が起こるようになります。

しかし、どんな車椅子でも上記のような効果が発揮できるわけではありません。上に書いたようなバックサポートの効果を期待するためには、骨盤をサポートできる状態に調整することが必要です。1人1人、体格も違えば、背中の状態も違うからです。効果を期待するには背張り調整という機能の付いた車椅子を、きちんと体に合わせて調整する必要があるのです。

また、股関節の動きが悪くなると、骨盤を絶たせて座ることが困難な人もいます。そういう方には、一番下のマジックテープが前に出ている車椅子をお勧めします。後ろに傾いたままの骨盤を下からサポートするため、安定して座ることができます。

「お尻を奥まで入れてください」には、もちろん転落事故の予防や褥瘡予防などの意味があります。しかしそれ以上にお尻を奥まで入れることで、骨盤のサポートを有効にするという意味があるのです。骨盤をしっかりサポートすると、疲れやすさや腰痛を軽減しますし、転落事故予防や褥瘡予防にも効果を発揮します。

ですから、長時間座って過ごす人は、骨盤のサポートをしっかりすることをお勧めします。

バックサポートをはじめ、車椅子を体に合わせて調整するためにはシーティングエンジニアのいる福祉用具事業所か、理学療法士、作業療法士に相談してください。近くにいない場合は、ご相談も受け付けています。

車椅子安全利用コンシェルジュ
久内 純子
Wonder,piece2017@gmail.com

また、ZOOMにて無料の車椅子セミナーを開催しています。6月27日は「車椅子セミナー① 危険な使い方していませんか?」です。車椅子のプロから見た車椅子の危ない使い方をご紹介します。事故などの取り返しのつかない事態になる前に、ご自身やご家族、あるいはご自身がかかわっている利用者さんの車椅子を見直す機会にしていただけたらと思います。



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車椅子安全利用コンシェルジュ 久内純子
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