車椅子の衛生管理
新型コロナの感染予防対策として、日々、衛生管理に気を配っていると思います。ドアやスイッチ、手すりや床、棚の扉など、こまめに消毒をしている方も多いのではないでしょうか。
では、車椅子はどうしていますか?
車椅子の衛生管理は誰がするの?
例えば、あなたが訪問や通所のサービス、ショートステイのスタッフでしたら、利用者さんがレンタルしている車椅子と言うことになります。入所施設の場合は、施設備品、あるいは入所者さんの私物になると思います。
レンタル品の場合、所有者は業者ですが、日常的な管理責任は利用者になります。備品なら施設、私物は入所者自身や家族に管理責任があります。訪問介護なら、サービス計画に含まれているか、否か・・・。現場で活躍している方は、頭の中でそのように思いめぐらせたのではないでしょうか。
しかし、本気で感染予防するためには、管理責任者が誰かに関わらず、施設内で使用される車椅子についても、施設の衛生管理に加える必要があります。訪問サービスにしても、利用者への感染を予防するという観点は同じではないかと思います。
車椅子の消毒ポイント
車椅子の場合、日常的に人が触れる部分は限られています。ハンドルやアームサポート、ブレーキレバー、フットサポート、クッション、座面、ポケット。これらは、安易に想像できると思いますし、日常的に消毒をしていると思います。あるいは、バックサポートの上部の布やパイプも、肩や体に触れようとして無意識のうちに触れているかもしれません。
タイヤの衛生管理も大切です。車椅子のまま屋外やトイレを移動し、そのタイヤで食卓に着く方もいます。路面や床に付くタイヤは、自走のためのハンドリムや肘を乗せるアームサポートに近い位置にありますから、無意識のうちに手や袖が触れることがあります。施設などでは、ハンドリムと一緒にタイヤを握りながら自走する方も少なくありません。
タイヤは回しながら拭くこともできますし、濡らしたタオルの上を走行することでも汚れを落とすことができます。
介護者が押すハンドルは、カバーがひび割れたまま使っていませんか? 施設などでは割と軽く見られがちなハンドルカバーの破損ですが、ひび割れや、カバーが動く状態では、拭き残しができるため衛生管理が難しくなります。
同じように介護者が良く触れる部分で消毒しにくいのが、跳ね上げ式アームサポートやスイングアウトできるフットサポートのロック部分です。複雑な構造をしていることが多いため丁寧に拭く必要があります。
そして修理などでお預かりした車椅子の汚れで一番顕著なのが、座面の内側、左右両脇です。ここに食べ物や皮膚片などが積もっていることも少なくありません。
この部分は利用者が座っていると見えませんし、クッションが乗っていても見えにくくなります。また、介護者によっては「そんなところ触らないから大丈夫。」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、移乗や座り直しの際に座面の内側に手を入れていませんか?
スカートガードと呼ばれるアームサポート下の板や、クッション、座面の両脇などは、複数の人が触れる割には衛生管理がおろそかになりがちな場所です。ぜひ、ご確認ください。
衛生管理も個別で考える
施設などでは、アームサポートなどハンドル以外を持ってスタッフが移動介助しているのをお見掛けします。トイレやベッド脇ではフットサポートの上部を持って微調整している方もいるのではないでしょうか。
車椅子の衛生管理に関しては、インターネットでも情報が出ているようです。それを参考にするのはとても有益だと思います。しかし、それはあくまで一般論です。
個別性の高いサービスを提供している福祉の現場においては、普段、どのように介助しているのか、車椅子上でどのように過ごしているかを具体的に思い出し、職員間で情報を共有することで、あなたの現場の日常的に消毒が必要な場所や感染リスクとなる場面が見えてくると思います。
ご参考にしていただきますと幸いです。