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褥瘡ならエアクッション・・?

車椅子のクッションは、いろいろな素材のものがあります。その中で、一番褥瘡予防の効果があるのがエアクッションです。クッションは、体の形にそって沈み込むことで表面積を大きくして、圧力が集中しやすい仙骨などにかかる負担を減らします。その表面積が、一番大きくなるのがエアクッションです。ですから、褥瘡リスクの高い方はエアクッションを使っていると思います。

ただ、このエアクッション、空気調整がとても大切なのです。空気を入れすぎると空気が体を押す力が強くなりすぎて褥瘡ができやすくなります。逆に、空気が少なすぎると体が底づきしてしまい、クッションの役割を果たさなくなります。つまり、ある程度沈み込みながらも、底づきしない。この状態を作る必要があります。クッションの機種によっては、クッションが自動調整してくるものもありますが、多くは定期的に人の手でメンテナンスすることが必要となります。

エアクッションをすでに使っていて褥瘡を繰り返す方の多くに、空気調整が正しくできていないケースが見受けられました。メンテナンスをする人がいないために空気が抜けてしまっている方もいらっしゃいましたが、空気をパンパンに入れている方が多いのに驚きました。褥瘡ができていなければ、そのままで問題ありません。ただ、褥瘡を繰り返しているなら、まず空気圧を疑ってください。

エアクッションはウレタンなどとの組み合わせでできていない限り、多少の不安定感が付きまといます。腰痛などの不調、ふわふわ感を感じる人もいます。移乗がしにくい、前左右へのアプローチをすると姿勢が崩れやすい等の不便さもあります。やわらかいから褥瘡予防ができるのですが、同じやわらかいという機能はそのまま不安定感というマイナスの特徴でもあるのです。そのマイナスを減らそうとするうちにパンパンに空気を入れてしまうのでしょう。その状態では、ほとんど褥瘡予防効果はみられません。褥瘡を繰り返しているなら、一度空気調整を見直すことをお勧めします。

あるお客さんは、褥瘡がかなり進んでいたので最初、エアクッションを試しました。しかし1週間後、「不安定で包丁が使えなかった。ガスを使うときもフワフワして怖かった」という理由で、エアクッションを諦めました。その方にとっては、料理を自分ですることが生きがいだったのです。最初よりも状態がよくなっていることもあり、クッションはもう少し安定感のあるジェルタイプに変更し、車椅子に座る時間を減らすことにしました。

クッションを変更してから、お客さんは生きがいの料理を楽しめるようになりました。車椅子に座る時間は、本人と訪問看護の看護師さんとで相談しながら少しずつ増やしていきました。3週間後、車椅子に一日座っていられるようになり、その2週間後には見事、褥瘡もほぼ完治しました。生きがいの料理を毎食ていましたから、栄養をきちんととれたのも完治を早めた大きな要因だったと思います。

もし、料理を諦めてエアクッションを使っていたら・・・もしかしたら栄養状態や気持ちの張り合いなどが落ちて、褥瘡の治りも遅かったかもしれません。エアクッションを使ってさえいれば、褥瘡予防できるものではありません。そして、褥瘡を治す方法はひとつではないのです。

褥瘡に悩まされている方も多いと思います。上手く管理できていないと思う方は、まずご自身のクッションの空気圧調整を見直すことをお勧めします。


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車椅子安全利用コンシェルジュ 久内純子
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