2024年 HCRのご報告〜①進む福祉車両と車椅子メーカーの連携
今年のテーマ
2日目の午後から行ってきました。
私的今年の注目は、
①進む福祉車両と車椅子メーカーとの連携
②パラマウントベッドさんの車椅子開発
③大手車椅子メーカーの開発方向
の3点
今日はその1回目。
「進む福祉車両と車椅子メーカーとの連携」についてお伝えします。
福祉車両メーカーさん、車椅子メーカーさん、ともに移送サービス中の車椅子利用者様の安全についての取り組みが始まっています。
福祉車両メーカーのブース訪問
まずは福祉車両メーカーさんから。
日産自動車
日産自動車さんは、福祉車両にちょっと変わった固定ベルトを採用しているメーカーさんです。ですから、車椅子の固定方法を教わりました。
「Xバーに引っ掛けてください」。
との案内。
え? ここにかけていいのだろうか?
個人的には疑問でした。が、この車椅子では大丈夫とのことでした。
あまり見ない車椅子でしたが、実は、日産自動車さんオリジナルの車載用車椅子でした。
この車椅子なら大丈夫かもしれません。
ただ、他の車椅子メーカーさんの車椅子では、Xバーをビス留めされているものもあり、あまりおすすめはできません。
車椅子の修理・メンテナンスを経験した立場から言うと、動く部分は故障しやすいので、固定フックは、溶接付けの固定されたメインフレーム部分への取り付けをおすすめします。
ちなみに日産自動車オリジナル車椅子はこんな感じです。ヘッドサポートが取り外しできます。フットサポートもスィングアウト可能です。ただ、スィングアウトの金具にが、ちょっと華奢なのが気になります。車載関係なく、割と修理が必要となるタイプなので。
シートベルトを通せるように、スカートガードがあいています。この辺りは、さすが車メーカーさんですね〜。
10〜15万円程度で販売されているそうです。
スズキ自動車
スズキ自動車さんは、コンパクトで小回りの効きそうな福祉車両を展示していました。動画で車載の方法を取らせてもらいました。
4点フックで引っ張るので安定感ありそうです。上のシートベルトは、下から引き出して頭の上の金具に止めるものでした。
身長156センチで50肩の私だと、手に力が入らないかも…
届いたとしても、力の入れる方向としては、上にはめるより引っ張り出す方が指が引っ掛かればできそうなので反対がいいな…というのが個人的感想です。
残念ながらシートベルトの仕方は、推奨できるものではありませんでした。
ブースでの説明を鵜呑みにしてはいけない。これも、1つ学びました。
(※正しいシートベルトの付け方は、現在、編集中です。少しお待ちください)
トヨタ自動車
トヨタさんは、車椅子メーカーさんと一緒に車椅子を固定するバーとバーをワンタッチで固定するフックの開発をしていました。
そのためか、福祉車両のブースには、トヨタさんのオリジナル車載用車椅子はありませんでした。ニッシンさんと松永製作所さんの固定バーのついたものが採用されていました。
このバーを固定する福祉車両側のバー留めは、ワンタッチで車椅子を固定できる優れものですが、今お持ちの福祉車両に後付けはできないそうで、福祉車両ごと新車にしないと、とハードル高め。
しかし、バー留めを取り付けても、「これまでのベルト式の固定フックがなくなることはないだろう。なぜなら、バーがついてないために固定できない車椅子があると、サービスを提供できない利用者さんが出てくるから」。ということでした。
私「バー留めとベルトと、どちらが強いですか?」
メ「どちらも、同じです。同じ安全基準をクリアしているので」。
さすが! 車メーカーさん。納得の答えでした。
ん〜、だったら、バー留めいる? その分、車椅子重くなるし…?
車椅子メーカーさんは、少しでも軽くするためにわざわざフレーム薄くしてるのに? だったらバーを取り付けるよりフレーム強度を上げた方が安全じゃない? 本末転倒? 専用部品を取り付けることで、対策した気になっていないか?
あ、ちょっとした独り言でした…
より簡単に、ミスなく、安全に。
そのための追求は必要ですよね〜。
車椅子固定バーはニッシンさんのブースにある車載用車椅子で見られる他、トヨタさんでは、松永製作所さんの後付けバーを見ることができます。
しかも後付けのバーは座面と紐で繋いでなくても、車椅子折りたたみの時は同時にバーも畳める優れものでした。
バーの後付けについては、トヨタさんではなく、松永製作所さんに聞いて欲しい
というので、松永製作所さんに、後付けバーについて聞きに行きました。
車椅子メーカーのブース訪問
松永製作所
しかし、松永製作所さんは割と口がかたく、「トヨタさんと開発段階で、販売はまだ未定とのお返事」。
見本も置いてなかったです。
今後に期待したいと思います。
ミキ
ミキさんも、安全な車載用車椅子については、非常に関心をお持ちでした。今回は開発中ということで見本はなかったですが、期待できると思います。
ニッシン
ニッシンさんは、先程も軽く触れましたが、車載用車椅子を展示していました。固定の実演もしてもらえるので、とてもわかりやすかったです。
車椅子は、樹脂スポークに、スカートガードのシートベルト通し、着脱できるヘッドサポートなど、車載に必要な条件はほぼ揃っていると思います。
フレーム強度テストで、スイングアウトできるフットサポートが飛んでいかないように強度を高める工夫がされていたり、細かい工夫で安全性を高めているというお話も伺いました。
メーカーさんの本気を感じました。
カワムラサイクル
カワムラサイクルさんは、車載用車椅子については、必要性は感じているし、取り組みのミーティングにも参加しているが、まだ商品には反映されていない。とのこと。開発発売を楽しみに待ちましょう。
現状分析
福祉車両メーカーさん、車椅子メーカーさん、ともに問題意識も高まっていますし、開発も現在進行中です。
ただ、現状の車載用車椅子は、開発中ということもあり、乗り心地やシーティングは考慮されておらず、車載用車椅子という分野が追加されたところ止まりです。
家で使っている車椅子が、車載に耐えるものになるには、「ユーザーさんからのご要望次第」というのが、どのメーカーさんでも聞かれる声でした。
まだ実用性は疑問ですが、着実に進んでいるとメーカーさんの言葉に力強さを感じました。そして福祉車両メーカーではトヨタさんが、車椅子メーカーではニッシンさんが先行しているようです。
日本の車椅子は軽量コンパクトへの要望が著しく、強度的には車載の条件を満たすものとは正反対の報告に進化してきました。そして今、軽量コンパクトをできるだけ損なわないで、いかに車載のためのフレーム強度、安全性を実現するのか。車椅子メーカーさんたちの挑戦が続いていることと思います。
来年のHCRを楽しみにしたいと思います。