登喜と翔真のこと
小学生であの決断が出来た登喜は聡い子だなと思う。
公園で両親の不穏な様子を見ながら戻るタイミングをはかってる時にはもう「わかってる」んだもんね。
それにしたって「母さんは俺から離れていかない」なんて確信できるのはすごい!
時子さんの愛情の方向性と分量は間違ってなかったってことかな。
健太郎は妻にDVする最低男だけど、登喜のことはちゃんと育てたのかな。
って20歳の彼を見ているとそう思える。
まあ、両親の育て方うんぬんだけじゃなくて登喜の個体値の高さというか天分みたいなものもあるのかもしれない。
若い男といる母親を見かけてしまったのに、それを本人に話せるまでに消化できてるのも凄い。
母親とはいえ独り身でその自由があるってこと認識できてるんだよね、ちゃんと。
20歳じゃまだそこまで母親を別個体として認識して尊重して距離を保てる能力ない男性も多いのでは。
いやもう、登喜くん、マジ推せる✨
(「本人に直接話せる」能力は、時子さん譲りなのかも。
時子さんも「どうして自分を選ばなかったのか」を、登喜に直接聞くじゃん?
初見はそこに驚いた。
あれめちゃくちゃ勇気いるよね?!
息子から言われるその答えによっては一生引き摺るよ!夫に言われる比じゃない!
そういうのを本人にちゃんと「ぶっちゃけ」られるのがこの母子の似てるとこなのかも。)
逆に確たるものをどんどん失っていくのが翔真。
登場シーンの謙虚で素直で笑顔が可愛い翔真の表情は、時子さんとトキを重ねるごとに抜け落ちて無表情になっていく。
騙してやろうとか口説き落とそうとかそんな顔は1度もしない。
無表情か鬱陶しい顔か苦痛の表情か。
福岡からのオファーの時にしても、実家の借金についても、遠回しに言うだけで翔真は時子さんに直接の金の無心はしてない。
いつも時子さんから強引に、というテイで。
そのテイはふたりにとっては大事な形式だったんだろうな。
少しずつ金銭感覚が麻痺してきているのも、自分が堕ちていってるのも、全部自覚してる翔真はめちゃくちゃしんどそう。
そして小夏ちゃんと違って男女の関係になろうとしない時子さんに怯えているようにも見える。
強引にキスしようとしたのは、自分の中でも説明のつかない関係に名前をつけたかったから?なのかも。
「男女関係」ですらないのに、まったく揺るがない時子さんの行動は、金額が嵩めば嵩むほど自分の実力を思い知れば知るほど、翔真には恐怖でしかなかったのでは。
そもそも登喜と翔真の顔が似ているという描写は1度もない。
時子さんのモノローグで語られている時子さん目線を通して我々も見ているあの世界。
翔真の顔は本当にあの顔なんだろうか?
時子さんには登喜と同じ顔に見えているだけで、もしかしたら本当の翔真は全然違う顔をしているのかもしれない。
そう思ったらこの二役を同じ役者が演じることの残酷さと贅沢さに震えが止まらなくなった。
これは鈴木拡樹という役者が演じたからかもしれないけど、
翔真の奥にある誠実さみたいなものが見え隠れするんだよね。
あの脚本、演じようによっては翔真はもっとクズになるし、その方があのラストを考えるとスカッとするストーリーになるのかもしれない。
でも彼が脚本を噛み砕いて作ったのは、あの翔真で。
たしかに良くない事をしてるんだけど、溺れて堕ちていく様が痛くて、美しいの。
だから柏木に「こいつクズですよ」と言われた瞬間にこちらもハッとしてしまう。
そんな翔真だった。
北海道から10万円が定期的に振り込まれるという時子さんの台詞に救われる。
ちゃんと返済が出来る生活を送ってるんだな。
頑張ってるんだな。
願わくば。
北海道の翔真のそばに、ちゃんとわかりやすい形で愛情を注いでくれる人がいますように。
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