グドュグドュ(掌篇小説)
グドュグドュという得たいの知れないものがいる。
おおむね人の形をしていて、身長は二メートルから三メートルくらいである。真っ黒で服は着ておらず、その黒色を見ると、数字がオーバーフローしているような印象を受ける。
彼らは、ほんの三年前に突如として現れ、いつも五体か六体で目撃される。どうして五体のときと六体のときがあるのか、五体のとき一体は何をしているのかはわからない。
ある日ブラジルで目撃され、次の日には地球の裏側に当たる日本にいたこともあり、移動手段も判然としない。また雪山にいたことも、海中にいたこともあって、どんな環境にも耐えられると推測される。同時にほかの場所で目撃されたりはしないので、同じ個体が移動していると考えられている。
グドュグドュは、まず災害だと言っていい。目についたものを殴り、蹴り飛ばし、その破壊力は凄まじく、暴力の極みである。ビルやアスファルトがお菓子のように砕け散る動画が投稿されたとき、人々はフェイク映像なのではないかと疑った。しかし先日、パトリオットミサイルの砲撃を防いでみせた動画が共有された頃には、まぎれもない真実だと理解していた。東京やニューヨークに出現して多くの人々が殺されたのも記憶に新しい。
もしグドュグドュと遭遇してしまったら、じっとしているほかはない。車に乗っていたとしても、静かに停止すべきである。彼らは動いているものはだいたい何でも破壊する。カメラを向けた者の多くは瞬時に葬られたし、上空を飛ぶ飛行機に対しても、腕を上げ念力か超能力のようなもので撃破した。
なお、現在人類がもっとも恐れているのは、グドュグドュが原子力発電所に現れることである。もし気まぐれで核施設に矛先が向けられた場合、未曾有の事態になるだろう。これは隕石の衝突よりも可能性が高い。また全然根拠のないことだが、グドュグドュは核爆発に巻き込まれても大丈夫なのではないかと人々はうわさしている。
それから最近、グドュグドュ教やグドュグドュ団と呼ばれる複数の異なる組織が現れた。自分たちはグドュグドュと意識を通じ合えると公言している。そして原子力発電所のみならず各国の主要施設(国会や軍事施設)などにグドュグドュたちを召喚しようと、日夜祈祷を捧げている。グドュグドュの存在も恐ろしいが、公然と死や破滅を望まれている人たちがいる事実にもぞっとするだろう。
これらに対し、我々はなんの対策も立てようもないが、今まで通り生活を続けていくしかない。
<了>
余談
書き始めたときは「グドゥグドゥ」だったのですが、検索したらそういう名前の料理屋さんがあったので変更しました。
書籍代にします。