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2024 年間ベストアルバム 20選
自分の好みの新譜を記録しておく意味合いが強くジャンルもバラバラなセレクトですが、インターネット上の諸氏による年ベスが私の趣味時間を豊かにしてくれているのと同じように、少しでも誰かの豊かさの助けとなれたら幸いです。順位はなくアーティスト名昇順です。
めちゃくちゃ主観&直感で選んでいて自分でもよくわからんグッとくる何かがあるかないかが重要。よくらからんを自分なりに言語化してみる営みをアウトプットしてるのが年ベス感想noteです。
ベスト20枚(アーティスト名昇順)
Ben Frost > Scope Neglect
ギターの演奏素材をメインにエレクトロニクスで深みを出すような構成で、高音域強めでハイファイな音で鳴るメタル(Djent)マナーのギターとBen Frostの代名詞的なザリザリした電子音が共振する。具象と抽象、攻撃性と静謐さが両立するような不思議な感覚。ギターはCar Bombの人。代表作AURORAと同じくらい好きかも。いまはSpotifyでは聴けなくてApple Musicにはあるっぽい。
Georgia + Dove > Air from Air
これは凄いわ。音楽というか音響効果で増強された言霊。特級呪物。とにかく聴いてみてほしい。2023年12月リリース
Doveが呼吸するように発する言葉が、音節ごとに、またはフレーズごとに、修正され、拡大され、揺り動かされ、祝福されるオーディオ詩のコレクションである。GeorgiaはDoveの声を思慮深く強調し、電子回路のエーテルを通して呼吸と空気を変化させ、意味を解体しながらも、逆説的に言葉と音楽の両方の新しい意味を明らかにする。
Jeff Parker ETA Ⅳtet > The Way Out of Easy
ミニマルかつモードレスなアンサンブルでアンビエント的にも響くが、演者の息遣いというか、スリルとグルーヴが確かに感じられる。2曲目が特に好き。じんわりフェーズしていく展開にトータスとテクノの間みたいなフィーリングも感じるような。最高。
Kim Gordon > The Collective
簡素なビートとインダストリアル感ある凶悪な歪みの竿ものが全体的にコンプで潰したようなトーンでまとめられているのに対して、空間系の処理がダブっぽいのが独特な空気感醸してる気がする。ボーカルも特異よな。キャリアハイ更新する姿勢に感服です。
Leslee Smucker > Breathing Landscape
コロラド州北西部の田舎に放置された貯水タンクの中でバイオリンによる前衛〜ポストクラシカルなインプロヴィゼーションを鳴らしている。録音環境に由来すると思われる独特な残響が印象的なのと、反響する倍音からはニューエイジぽい雰囲気も感じる。前衛的な録音芸術としてめちゃくちゃいい作品だと思う。
Moon Dome > Moon Dome Ⅱ
"Moon Dome is space techno."(このアーティストに関する記述からの引用だが出典を失念。土下座)
とくに4曲目、主にゴウゴウと吹き荒ぶ風みたいな音、hammockみたいなエセリアルなシンセの持続音、くぐもったテクスチャで鳴るシンプルなビートのみで構成されているのだが、なぜかめちゃくちゃ宇宙というか、強風が吹く荒涼とした惑星の地表を想起させられる。すごい。
Mount Eerie > Night Palace
フォーク~オルタナを軸に楽曲、音響面でのキャリア総決算+ノイズ/ブラストビート/雅楽など新規軸の多彩さ、完全アナログでの録音/ミックスによるRAWなテクスチャ、80分トータルでの構成美。エグい。さながらブラックメタルな4曲目に代表される黒いディストーションギターとかブラストビートがアルバム全体の深みを生んでるんだよな。いいテレビは黒が黒いみたいな。続く5曲目との落差たるや。
Ogre You Asshole > 自然とコンピューター
アルバム通してライブのときのような爆発的なカタルシスはない。でもそんなものこのアルバムには必要ない。ミドルテンポ〜やや遅めのBPMで繰り出される各楽曲には高い中毒性がある。シンプルなアンサンブルなんだけどフックの効いたフレーズやグルーヴがあるしシグネチャーのディープな音像は健在。遅効性の快楽。
Or Best Offer > Center
ソングライター兼ボーカル兼ギターとドラム兼シンセの二人組による1st。リファレンスにGastr Del Sol、GY!BE、Tim Hecker、Fenneszが挙げられていて、ポストハードコア〜ポストロック的な手札でアンビエント的な指向性の音楽をやっている。オルタナティブの先を開拓している感じ、Still House Plantsと近いバイブスを感じる。
The Smile > Wall of Eyes
幽玄さとユニークなリズムを湛えたイノベーティブなロックオペラみたいな印象。ジャズ的な要素はほぼないと思うけどトムスキナーが重用されてるのは豊かな表現力とトムヨークとジョニーのもってない引き出しをもってるからなんだろうな。Cutoutsも良かったけどアルバム全体の完成度はこちらが上に感じた。
Still House Plants > If I Don't Make It, I Love You
ギターとドラムとボーカルのトリオ、全部すごくてすごい。自分的には特にギターがツボで、ジャガーに薄くファズかけたみたいな倍音豊かかつ芯があってタッチニュアンスが活きるトーンとナチュラルな残響がとてもよい。音運びも素朴ながらセンス溢れる感じで渋い。
ZAZEN BOYS > らんど
ZAZEN BOYSの過去作と比べてノーウェイブ感はほぼなくストレートな印象の楽曲が並ぶ。向井氏の代名詞たる金属的なエレキギターのカッティングが牽引するファンクネスを伴奏に破天荒で独創的な妄言が響く世界観には本物のオルタナティブを感じるし、シンセを廃したバンドアンサンブルはめちゃくちゃソリッドでバトルスみたいな凄みすら感じる。J-Rock的な曲には正直面食らったがこういうのもありだなと思いつつ、すとーりーずやⅡみたいな路線が少し恋しくもある。これから先のアルバムが楽しみ。
1/8計画 > 開発日記
一言でいうと"尊い"んよな。音楽オタクによる"自分が好きなものつくりたい"駆動でうみだされたアルバムて感じがするというか。オールドスクールなポストロック〜スロウコアっぽさありつつ若者らしいエモさも。ローを効かせつつもいい感じに余白をつくるサウンドプロダクションはレベル高いし、ダイナミクスの満ち引きも素晴らしい。
浦上想起 > 遊泳の音楽
FANTASMA的な多重録音アレンジとソングライティング、歌詞のどれをとっても高水準なのがすごいし、いずれも稀有なレベル。しかもすごいだけじゃなくてめちゃくちゃオリジナル。現代ポップスのひとつの到達点なんじゃないかくらい思う。
↓のセルフライナーnoteには浦上氏の解説に添えて気に入ったという服の写真が貼られてるのだが擬似的に共感覚を味わえるのでおすすめ。
せっかくの機会なので、セルフ・ライナーノーツ的なものを(なるたけ簡単に)綴りたいと思い立ち、筆をとってます。文章ばかりでは視覚的につまらないので、要所に最近気になったいい感じのニットやパーカーの画像を貼りつけながらやっていきたい。
折坂悠太 > 呪文
とても好き。「心理」のときの切迫から解放されちょっとリラックスした雰囲気ながらも真摯なところは相変わらずというか。理屈で説明できないものを素直に受け入れる(ただの諦めとは違う)諦念と真摯さとが健やかに同居している感じ。こだま和文さんの日常を写した投稿、自分も好きだし、このアルバムから感じるものと近いバイブスがある。ハチスは今年のハイライトの1曲。
生活を変えていくなかで自分の考え方の癖を見直したんですよ。以前は自分のことを俯瞰で見ているもうひとりの自分がいて、10代のころからその存在に苛まれてきたんです。
〜
でも、ちゃんと「この人(もうひとりの自分)」に向き合って話し合わなきゃと思って。そのためには身体を動かしたり、自分の生活を整えるようにしないと、こいつと話せないと思ったんですよ。そういうことをして、ようやく疎通が取れるようになってきました。
角銅真実 > Contact
下の引用元のユニーバーサルのインタビュー記事がめちゃくちゃ参考になる。祈りと"いまここ"との共鳴、すこし・ふしぎ、明るい嘆き、などなどおもしろ概念が連発されている。自身の出自との対峙、アルゼンチンやバリでの滞在による文化の相対化とメタ認知の産物がこの高練度の折衷なのだろうとおもった。
参加メンバーの協力を上手に活かしつつ、自分のエゴもうまく反映させる。プレイングプロデューサーとしての才覚があるんだろうともおもった。
「長崎ぶらぶら節」をやるようになるまでは、故郷に対してはもともと、いい思い出というより「早くここを出たい」という気持ちが大きかったんです。「人攫い」という曲は、小さい頃のそういう念が曲になったものです。でも「長崎ぶらぶら節」を歌うようになって、長崎出身の人や友達が長崎にいるって人から結構話しかけられる機会が増えて。あとは長崎の歴史や「ぶらぶら節」にまつわることを話しかけてくれる人も増えた。そういうこともあって、長崎自体にすごく興味が出てきたんです。自分でも「おくんち」を見に行ったり、フィールドワーク的なことをしているうちに、長崎に出会い直すようなことができた。それは私にはめちゃギフトでした。
─知らない親戚に会うような感覚なんでしょうか。
親戚というか友人というか…「いたんだ!」みたいな感覚。こうやって出会い直せてよかったです。
柴田聡子 > Your Favorite Things
まじですごい。柴田聡子はメロディーがリズミカルというか、独特なフロウみたいなものを持ってて面白いなという印象があって、今作はその個性に対して岡田拓郎のアレンジワークがバチバチにハマっている。柴田聡子と岡田拓郎のダブルネームでいいんじゃないかと思うくらい2人とものクリエイティビティが発揮、触発、昇華されてると感じる。↓の記事からわかる泣ける関係性の賜物なのかもしれない。
だいたい同期で気づけば同志。20代の前半で早々にバンドを辞めたばかりで、この先の人生をどうしようかと思ってる時に、初めて雇われギタリストして声を掛けてくれたのは柴田さんでした。そして音楽の仕事も少しずつ増えて、バイトを続けながら音楽を続けるか迷っていた時に「とっとと辞めちゃえ~!」と背中を押してくれたのも柴田さんでした。そんな事を思い出しながら昨年末、締切のギリギリまで一緒に「Your Favorite Things」のミキシングをしながら、何度も込み上げてくるものがありました。
弾き語り版のMy Favorite Thingsもよくて、聴き比べるとまた面白い。
寺尾紗穂 > しゅー・しゃいん
あったかい。泣く。疲れてたり落ち込んだりしたときに聴いたら間違いなく泣く。公式ページのテキストもよかったけど、ページのクリエイティブもよかった。
約3年にも及んだコロナ禍からいつもの生活に戻って、およそ1年が経過しました。ソーシャルディスタンスの名のもとに、一人ひとりが過去に直面したことのない険しい時間を過ごし、ようやく日常が回復したように見える一方、外に目を向ければ戦争や災害が絶えまなく続き、パンデミック前とは全く異なるパラレルワールドに生きているのではないかと感じることもしばしば。
こんな時に大切なのは、身近な人との何気ないおしゃべりで現在地を確認していくことなのではないかと思います。この作品でも、寺尾紗穂とマヒトゥ・ザ・ピーポー(E.Guitar)、テニスコーツ・植野隆司(Sax)、高橋三太(Trumpet)、歌島昌智(Veena)、近藤達郎(Harmonica)、関口将史(Cello)、吉野友加(Harp)といった日本の音楽を支えるミュージシャンらとの対話は、共に悲しみに暮れ、激しく怒りを吐き出し、時に喜びを爆発させることで加速度をまとって、音楽へと昇華していきます。
松永拓馬 > Epoch
荒削りだが気鋭の若者、それを見守りつつ熱に共鳴する兄貴兼プロデューサー、2人に導きを与える伝説のマスタリングエンジニア。
↓のインタビュー記事がめちゃ面白かった。点と波、和ろうそく、民藝、2人レイヴ。おもしろ概念が連発されている。
優河 > Love Deluxe
こちらも岡田拓郎プロデュース。ヴィンテージっぽい音で新鮮なものを作ってるのは柴田聡子のYour Favorite Thingsと似たアプローチだけど、こちらはJディラやマッドリブ的なビートを採用していたり。Your Favorite Thingsはシンガーとアレンジャーがバチバチにやってるイメージだけど、これはアレンジャーがシンガーを支えてエンパワーしてるような印象をもった。