【旅note】カナダ / レイク オハラに恋をして
昔訪れた憧れの場所。そのときの感動。心情。
日記もつけず、言葉に残していなかった記憶。
わたしはとても忘れっぽい。過去を振り返る習性がないので、そもそも写真が無いとほとんど何も思い出せない。写真を見返しても尚、年々記憶が曖昧になり、それが実際に行ったところなのか、行きたかったけど行けなかったところなのかさえ怪しくなってくる(重症)。
思い出せるうちに。覚えていたいことを。
過去に訪れた旅先での、忘れてしまいそうな、けれど忘れたくない思い出たちを旅noteとして書き留めておこうと思った。初回はカナダ🇨🇦。
■ カナダ / レイク オハラ (Lake O'Hara)
2009年10月。当時わたしはカナダに留学中でバンクーバーに住んでいた。
バンクーバーに来たばかりで友達もいない中、次の学校が始まるまでの間にふらっと初めての1人旅をすることに。
行き先は憧れのカナディアンロッキー。
レイクオハラは数ある氷河湖の中で、唯一環境保全の為に一日の入山人数を制限しており、ツアーでないと行くのも困難という秘境の地だ。「秘境」とか「限定」という言葉に弱いわたしはすぐさま現地のツアー会社に問い合わせをした。「10月5日〜10日の間でツアーの空きはありますか?」とメールすると「今年のツアーは10月4日までです。」と返事が返ってきた。
カナダの冬は早い。10月の頭には初雪が降る。雪が降ったら通行止めになる道路が増え、ツアーは開催出来なくなる。ギリギリ間に合った。わたしは旅程を前倒しして急いでバンクーバーを出発した。
バンクーバーからグレイハウンド(長距離バス)で14時間…狭くて寒くてとにかくしんどくて、もう二度と夜行バスには乗らないと誓った。
そして着いたその日にはその年の初雪(吹雪)が降っていた。
レイクオハラへ向かうのは翌日。
一応吹雪は止んでいた。
ツアー参加者は日本からの家族1組(夫婦+息子)とわたし個人の2組だけ。送迎バンに乗り込むと、余りの軽装備に驚きを通り越して呆れられた。
普通のデニムに普通のスニーカー。バンクーバーで出発直前に慌てて買ったちょっと厚めのジャケット。
ろくに下調べもせずに飛び込んでみたら、圧倒的に、引かれるほどに準備不足だったらしい。
いつから何でも事前にとことん調べて準備万端にしてしまうようになったんだろう。こんな風に無防備に行動して、その場のハプニングも楽しめるような自分の若さがとても懐かしく、羨ましい。
呆れつつも心優しいガイドさんが手袋とストックを貸してくれて、何とか無事にトレッキングをスタートすることが出来た。ご家族は違うコースだったので、ガイドさんまで貸切の贅沢な時間だった。
前日に降った雪がふかふかに積もっていた。案の定、雪はスニーカーに入り込み、デニムの裾はびしょびしょに濡れた。それはそれは凍りつくような冷たさだったが、周りの景色に圧倒され、寒さも忘れて絶景ポイントまで歩いた。
しんと静まり返るレイクオハラ。
深い深いブルーグリーンの湖面。
凍っていたのかな?思い出せない。
人っ子ひとりいない貸切状態。なんという贅沢。
静謐、という言葉がぴったりだった。
そしてもう一箇所、わたしが忘れられないのは、メインの湖ではなくて、こちら。
絶景スポットからの帰り道、何の変哲もない小さな氷河湖。そこでガイドさんがふと足を止め、何かを教えてくれた。( それが何だったかは思い出せない。多分すぐ後ろの白い雪の部分は氷河で一年中溶けないとかそんな話だったような…?)
ここでガイドさんと2人、少しの間黙って小さな氷河湖を見つめた。
人の声も、足音も、鳥の鳴き声もしない。完全な静寂。
色も極端に少ない。あるのは雪の白さと凍った湖のひんやりとした暗くて深い緑色。
後ろを振り返ると、自分とガイドさんが通ってきた道だけが残っていた。
何万年という歳月が生んだ大自然に、その歴史に、ただただ圧倒された。
世界から取り残されたようで少し怖くもあり、それでいてこの崇高な場所に足を踏み入れることが出来た嬉しさもあり、不思議な心地がした。
簡単に言うと、ものすごく嬉しくてものすごく悲しかったような気がする。
そしてこの景色は一生忘れないだろうなと思った。
***
よかった。10年以上経っても覚えていられた。
当日の天気のせいか、わたしのカメラセンスの問題か、写真からはわたしがレイクオハラで味わった感動を伝えきれていないかもしれない。
( それでもお気に入りなので画素数の悪さも気にせず載せてしまいます。)
心に残り続けるのは写真に映るものばかりではないようだ。
真夏に行けばまた違った美しさに出会えるはず。
いつかまた、今度は家族で再訪出来たらいいなと思う。