トランプが勝利した、しかしミュの兄者は美しい
アメリカの大統領選挙にトランプが勝利したらしい。あんなに「投票しました!投票しよう!」と投稿していた私のインスタグラムおよびフェイスブックでつながっている友人たちは沈黙している。
あらためて、アメリカで私を取り巻いていた環境は特殊だったのだなと思わざるを得ない。私が住んでいた経験をもって「アメリカ」に住んでいたとはいえないという意味で。例えばアメリカ国内の田舎を旅行した時に感じた刺さるような視線とかは、あながち勘違いでもなかったのかもしれない。
もともとエリア的に高学歴&高所得の人しか住めないような、真っ赤な中の青い場所だったとはいえ、まさか本当に全国的にトランプが勝ってしまうとは。というのが正直な感想かもしれない。そしてアメリカの今後を思うと、個人的にはなかなか落ち込む結果ではある。
選挙戦の中でオバマがアメリカ的な、とてもいい演説をしていた。でもそういう、すてきな理想が刺さる層は思っているよりずっと薄くなっているのかもしれないと思った。理想を追い求められるような余裕のある人が多くないという意味で。
日本でもきっと同じことが言えるのかもしれない。
今日日中から薄々感じていた、トランプが勝つかもしれないという予感が本当になった時に、自分が落ち込んでいることに気付いた。米版セサミストリートのツイッターアカウントが「落ち込まないで」とメッセージを発信し続けていたがやはり未来を思うと暗鬱たる気持ちになるのは抑えられず、日本古来のメンタル加持祈禱法であるミュージカル刀剣乱舞「祝玖寿 乱舞音曲祭(いわいのくじゅ らんぶおんぎょくさい)」の愛知公演千秋楽ディレイ配信を視聴した。私の推し刀である髭切の千秋楽公演でもある。
配信の金額は3,800円、視聴期間が一週間に満たない配信としてはなかなかいい金額だ。これを何も考えずに支払える自分は、生存戦略に成功したんじゃないかと錯覚してしまう。
髭切の中の人である三浦宏規さんは日本ミュージカル界の至宝と言わざるを得ない。本当に素晴らしい、美しく強くしなやかで歌が上手い。歌が上手い(2回目)。私は顔がきれいで歌が上手い人間が全員好きだ。そのうえ、クラシックバレエも会得している人間がいるなんで信じられない。こんな素晴らしい人間が演じる髭切を、全ての公演配信してくれているなんて、刀ミュ公式に足を向けて寝られない。マジで。ネルケプランニングですか?東京に足を向けて寝ちゃいけないってことですか?
ただ、自分がもっと若いころ、就職試験に落ちていたころ、こういうすべての公演の配信が3,800円だったならば、感じ方は違ったかもしれない。おそらく当時の金銭的に、ポイポイ出せるようなものではなかったので。
私は自分の性格というものを信じていない。私は全く自分をいい人間だと思っていない。私が客観的に見て「人当たりの良い人間」、だとすれば、それはただ今の仕事的に社交的であるメリットが大きく、社交的である余裕があるというだけなのだと思う。
「貧すれば鈍する」ということわざがある通り、いい人間というのは、もしかしたら奇跡的な人がいるかもしれないが、ほとんどは「いい人間」でいられるだけの金銭的余裕があるのだと思っている。じゃあ金銭的に不自由ないはずの同じような役職の人間で人間的に変なやつがいるのはなんでなんだぜ?
マズローの5段階欲求説でいうところの、最終5段階目を残すばかりの人間と、1段階目もままならない人間とでは、根本的な素養が似ていても全く違う結果になると思う。