東京Wizard 感想[エミルの愛した月夜に第III幻想曲を M3-2024春新譜]
初めに
本作は作品のネタバレ、個人的な見解を多分に含んでいます。苦手な方、ネタバレを避けたい方はご注意ください。
どうも、黒助です。初めましての方はどうぞお見知りおきを。
今回書いている記事が皆様の目に留まっている時点でお察しかと思いますが、私はエミルの民(「エミルの愛した月夜に第III幻想曲を」のファン)をやっている者です。
(自己紹介記事はこれ以外に後もう2作品ほど感想記事を投稿したら多分作成します。)
購入リンクの下から早速本文といたします。
BOOTHの販売ページ(特典付きのM3新譜セットも買えます)
01. マギアス
正式なスペルは「μαγείας」(多分ギリシャ語表記)。魔法少女テーマらしく「悲しみを背負って決意を固め、敵を討つお話」と始まり、普段より明らかに透明感を意識していたりと、しっかり正統派魔法少女テーマが好きな新規リスナーの心を捕まえにいっている。されど、「白雪姫」のメロディーの面影を少しだけ感じたりと、ちゃんとエミルをやっているのも感じられる。
余談だが、「白雪姫」が収録されている「春に散る 白雪の花」は旧版ならアキバホビーで購入可能である。(以下リンクで行けるはず)
02. 蒼きメシア
前の曲同様に透明感や爽快感が強めで初心者でも親しみやすいように感じる、雑に使い勝手が良い曲。この曲では普段のエミル特有のパワフルだが少々ストーリーの陰りを伴うメロディー、ボーカルに重ねる形のSEもある程度復活していて、The. エミルスターターキットといった印象を受ける。サラさんの作曲センスと、荊-いばら-さんの歌唱表現ともに対応力に富んでいるのも正統派ファンタジー+ダークファンタジーと正反対の属性の融合が安定している要因に感じる。
03. Evil Justice
中盤に差し掛かって急に不穏な展開が出てくる、魔法少女テーマの鉄板ネタを踏襲している曲。不穏なサウンドで曲が展開されていく中に荊-いばら-さんボイスのキラキラした詠唱セリフが混じっているのも怪しい雲行きを明確化させるアクセントとしていい味を出している。
今更にはあるが本作は「魔法少女となって夜の街で魔獣を討伐する」というのが本筋であり、歌詞カードのこの曲の部分では最初「悪魔」とも表現されている。しかし、「影響」を受けてからは「アク」に変化していると、歌詞カードを読まないとノイズのせいでスルーしてしまう可能性の高い伏線もあるため1回はブックレット片手に通しで聴いてもらいたい。
04. 汚れた魔法
「BLACK DAHLIA」と似たタイミングといつもの、とは少し投入タイミングの異なるインスト枠。内容は次のトラックである「東京Wizard」のサビ周辺をアレンジしたインストで、終盤前の慣らし要因という印象が強い。
蛇足にはなるが、例に持ち出した「BLACK DAHLIA」というアルバム名はSeraphの「Black Dahlia」と全く同じスペリングであり、一部再生環境では同一アルバムと誤認されるケースもあるため両作品を所持している、または揃える予定のある方は頭の片隅に入れて欲しい。
05. 東京Wizard
本作の表題曲で、一番の目玉。メロンブックスの5月店内BGMにも選ばれているため偶然耳にした方もいるかもしれない。
「マギアス」、「蒼きメシア」同様に透明感も持ち合わせていて、極端にぶっ飛んだことをやってないだけで完全にエミルの基本スタイルに立ち帰っており、今まで溜めこんでいったエネルギーを一気に爆発させてきている。
ストーリー的には「魔獣」を無事に討滅できたところから始まるが、そのままハッピーエンドとは尺的にもJapanese 魔法少女文化的にも進むわけがなく、今度は「悪人」を容赦なく殺して断罪する方向性になる。そうして道を踏み外して自分が魔獣に堕ちていく様はまさしく俺たちエミルの民が待ち望んでいた展開である!
06. メフィスト
例の温度差がえらいことになっているXFD冒頭の犯人。M3前はアレ別録りで追加したネタかと思ってたから、いざ通しで聴いたらまんま採用されてて正直笑ってしまった。開幕数十秒とラストは少女アニメ感あるサウンドを用いてるものの、それ以外はもはや隠す気ゼロのエミル節全開でバッドエンドへ一直線と、いつもの光景である。すぐ下で詳しく書くので理由は省くが、今作の主人公である魔法少女が闇落ちするまでの流れを最初から考えた上で契約を持ちかけている側の視点で進むため、エミル作品では珍しい愉悦部的な用途にも対応している。
楽曲タイトルになっている「メフィスト」とは誘惑の悪魔と呼ばれ、契約者の望みを叶える代わりにその魂を代価として求める存在であり、契約には従順だが言葉巧みに相手を操って悪へ堕とそうとする存在、とファウスト伝説では描かれている。本作では魔法少女を原作でメフィストと契約する人物であるファウスト、その契約を持ちかける「何か」をメフィスト、と置き換えると魔獣を倒す力の代償に最終的には自分自身が魔獣へ堕ちる展開へきれいに繋がり、ストーリーの完成度の高さや原典へのリスペクトもしっかりと感じられる内容となっている。
07. 星屑は闇と
最後のインスト枠。ゲームのバッドエンディング時特有の不穏な空気間と堕ちていく少女の哀愁感を両立させ、短い時間ながら丁寧に表現している。
まとめ
今回の作品はライトな外見をしている楽曲多めでジャケットビジュアルも本来明るい系、切ない系好きなリスナーへのキラー性能持ちと初心者向けの外面をしている印象である。しかし、絶妙に仕込んだエミル特有の楽曲表現やジャケ絵のケモ耳や尻尾など細かく平穏な作品ではない伏線が仕込まれており、ジャケ買いしたリスナーが気づくころには既に手遅れという自分たちの領分へ引きずり込む気満々の布教に使えと言わんばかりの作品ともとれる。実際、アルバムとしての個人的な総合評価も相当高く、シンプルに強い名盤としてどこでも通用すると評価している。
ストーリーのキツさ目線でも結構優しめ(当社比)という評価で、鬼畜なギミックを仕込んでいる割には平和な部類の作品である、と感じた。
(比較対象がビスクドールやBLACK DAHLIA、海紅さんへの楽曲提供とシャレになってない世界観を持ってる連中ばっかりだが…)
最後に、新譜セット付属の楽曲&制作秘話を視聴する前に覚えておいて欲しい2点を貼って〆とします。
・サラさんは海紅さん(Seraph)への楽曲提供もしている
・荊-いばら-さんは今期FATE GEARに参加している
以上です。最後までご覧いただきありがとうございます。
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