見出し画像

息子たちがピアノを習うまで。①

長男息子がピアノを弾きだしたのは3歳の頃。
元々ピアノが家にあったのでごくたまに触れてはいたような気がするが、『習って』はいなかった。

理由はいくつかあった。

まずは息子たちは年子であること。
つまりは長男が3歳の頃は次男は2歳。
育児真っ盛りな当時は2歳児を連れて3歳児を習い事へ連れて行くなど、苦行としか考えられなかった。

ましてや音楽を習うとなると耳を澄ませたり先生のお話を聞いたりと集中しなければならない場面が出てくる。
そんな時、2歳児のちょこまかした動きや空気の読めない突然の声量、なんなら狙ったかのような尿意便意など、はっきり言って邪魔にしかならないと思ったからだ。

かと言って3歳児が1人でまともにレッスン内容を覚えてくるわけもない…
しかし2歳児がいるからと言う理由で長男ばかりが後回しになるようなことも出来るだけ避けたかった。
当時は本当に悩んだ。

そしてもう1つ。
実は彼、ピアノを習う前はバイオリンに興味を持ち、体験レッスンに行ったことがあるのだ。

まさか自分の子がバイオリンに興味を持つなんて!
弾いてみたいと言われた時はそりゃもう舞い上がった。
なにせ、おもちゃのピアノで音楽を鳴らし、息子が歌ってるだけでもニマリニマリと嬉しくなっていた私なのだ。
私は体験レッスンの場所へ行く道中、ドラえもんのしずかちゃんのようにバイオリンを鳴らす長男を想像して笑ったり、テレビやコンサートで大活躍している高嶋ちさ子さんを想像してニヤニヤしたりと早々に10年後20年後の長男を思い描いた。
気が早いなんてもんじゃない。

ところがバイオリンの体験レッスン30分のうち、長男がやった事と言えば
合奏用のトライアングルを1つ、チーン!


おしまい。

目の前にあるバイオリンには一切触れず、
先生も必死にトライアングルで少し気を引こうとするが、チーン!はお気に召さなかったのか、鳴らし終わったら役目はおしまいなのか。
それ以上トライアングルに触れる事もなかった。

30分かけて教室へ来たが、まさかトライアングル1鳴らしとは思いもよらず、体験レッスンアンケートも名前と住所しか埋められなかった。

私は悟った。
なるほど、3歳児とはこんなものか。

そして2歳の次男はカスタネットやタンバリンをペシペシと叩いていた。

確認のために言うが、私たちはバイオリンの体験レッスンへ来ている。

このなんとも言えない感情を形容するのは非常に難しいが、とりあえず私は
『(習うのは)今じゃないな。』
とその光景から目を背け、目を瞑った。



②へ続く。