「男だったら何にかける?」というお話し
男の名は神田。
探偵みたいなことをしながら暮らしている。
やつは、いつも必ず懐に小銭を入れているんだ。
そのせいで歩くとチャリンチャリンとなるため、猫のすずよろしく、近くにくるとすぐにわかる。
いつしか、周りの人々は彼のことをこう呼ぶようになったよね。
「チャリンチャリン太郎」
なんだかカッコ悪くて、ちょっと語呂が悪いのはご愛嬌。
こんな感じで市井の民たちには愛されている。
ちなみに、下の名前は太郎ではない。
なぜって?あだ名なんてそんなもんでしょう?
今日も道を歩いていると後ろから叫ぶ声がする。
「そ、そいつを捕まえてくれ!ひったくりだ!!」
後ろを振り向くと、男が一人走ってくる。
片手には巾着袋。おそらくこれがひったくられたブツだろう。
ひったくりはあっという間に横を通りすぎる。
と、その瞬間、神田はおもむろに懐から小銭を取り出し、ひったくり目掛けて投げつけた。
投げた、というよりも飛ばしたというべきか。
ものすごい勢いで飛ばされた小銭は見事ひったくりにあたり、もんどりうって倒れた男を皆でとりおさえることに成功した。
「チャリンチャリン太郎、ありがとうよ。助かったよ」
チャリンチャリン太郎、彼は別の世界線ではもっと格好いい名前で呼ばれている。
そう、「銭形平次」と。