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労働衛生?的視点でみる「シン・ゴジラ」(2016.12.30)
本日は11/3で「ゴジラの日」。初代ゴジラが公開されて70周年です。というわけではないのですが、本日は博多まで出掛けて「シン・ゴジラ・オルソ」を1年越しに鑑賞いたしました。昨年は確か学会参加で観られなかったんですよねぇ。素晴らしかった…。
さて、久々にシン・ゴジラを観て、昔こんなブログ記事を書いたなぁと思いだしましたので、折角なので再掲します。おそらく公開して5ヶ月くらいのタイミングで投稿しております。題して「労働衛生?的視点で見る『シン・ゴジラ』」。今回久々に観た感想も書いていますので、ご笑覧頂ければ幸いです。
ちなみに写真は福岡県は筑前町で開催された「筑前町ど〜んとかがし祭」で制作された、藁製の「ゴジラ-1.0」の「ゴジラ(2023)」です。ギリギリ日の入り前に立ち寄ることができました。過去にはゴジラ(2016、鎌倉くん)や宇宙戦艦ヤマトが藁で作られたのですよ。スゲえなぁ。
前文
ふと気付いたら5ヶ月も放置していましたよ…。公私でやたらめったら忙しかったのとMacBookAirのキーボードが故障したのとで大変難儀しておりまして、やっと昨日から冬休みに入ったと思ったら風邪を引きまして…。ブログに書きたい事は大量似合ったんですけどね…。映画だけでも「君の名は。」「この世界の片隅に」「聲の形」その他諸々。展覧会だって直近では「生賴範義展III THE LAD ODYSSEY」がありましたし、ガジェットだってMacBookPro(13inch, TouchBar)やらAirPodsやらiPhone7plusやらねぇ。しかし今から書くってのも何ですしねぇ…。
そんなこんなで2016年は「君の名は。」「この世界の片隅に」そして「シン・ゴジラ」と、邦画が大豊作の年でした。私も何度も何度も映画館に足を運んでしまいました。その中でも「シン・ゴジラ」については労働衛生?的な視点でも色々と気になる事がありまして、個人的にメモを書き留めていました。それを眠らせておくのももったいないと思い、勢い余って投稿してしまった次第です。御笑読頂ければ幸いです。もろネタバレですので映画未見の方は御注意を!
映画館での一瞬のカットで判断した様なものもありますので、誤りについては御容赦下さいませ。これを投稿した2016年12月末の時点では、大資料集「ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ」はまだ手元に届いておりませんし、大本命のDVD/Blu-ray発売は2017年3月です。答え合わせはこれらが届いてからですね。
第二形態(通称:蒲田くん)襲撃後の保護具着用について
廃墟になった街での救助作業を行っていた消防や自衛隊などの方々が呼吸用保護具を着用していませんでした。粉じん曝露や感染症防護の観点からするとちょっと残念でした。我々産業保健職からの啓発を一層進めていく必要があると感じました。
また、被災地域での放射線量増大が政府から発表された後から民間人のサージカルマスク着用率が一気に増加しています。顕著なのが第四形態襲来時の鎌倉、第四形態一時停止時の避難所や首都圏疎開時です。しかしマスクを着用していない人も案外多く、着用は自由意思なのでそんなものかと感じました。
呼吸用保護具について
ヤシオリ作戦司令部の人員が着用している呼吸用保護具ですが、まず自衛隊員は3Mの60921-L3(有機ガス用吸収缶、ダイオキシン対応)、面体は3Mの6000Fと思われます。巨災対の矢口さんや安田さんが着用しているのは防じんフィルタのみです(興研取扱いのRD-5型か)。面体は興研取扱いのサカヰ式1821H型または1821HG型と思われます。タイベックも含め、巨災対にて自前で準備したものなのでしょうか?
一方、現場で活動する自衛隊員の呼吸用保護具ですが、第四形態一時停止時のゴジラ監視の際や周辺探索にてゴジラ遺残物を発見した時、またヤシオリ作戦の実行部隊が使用していたのは興研のKGC-70型(有機ガス用吸収缶)の様です。こちらに追加装着できる防じんフィルタは、カタログを見るとS1レベルまでの様です(さすがにメーカーへの確認はしていません…)。しかも防じんフィルタは追加装着していない様にも見えます。放射性物質への防護として使用される防じんマスクのレベルについては…これから勉強します。面体についてはカタログに合致するものが見当たりませんでした(両目が分かれているタイプ)。カタログにあるHV-22-03型ではありません。
防護服について
ヤシオリ作戦時の防護服はアゼアス社の製品。背中に「AZEARTH」とロゴが入っているのですぐ分かりました。司令部にいる自衛隊員が着ているのはデュポンTMタイベック(R)ソフトウェアIII型。特徴的なラインがあるので同定しやすかったです。
巨災対の面々が着ているのは、気密性が少し劣るデュポンTMタイベック(R)ソフトウェアII型の様に見えます。しかしカタログと違い、色の付いたポケットらしきもの(茶色?オレンジ色?)が両胸にあります。また矢口さんの左胸ポケットにはフィルムバッジか線量計らしきものが入っている様にも見えます。
血液凝固剤について
「主成分はシリカとトロンビン」と作品中で明言されている血液凝固剤ですが、その運搬用の容器にはしっかりとGHSラベルが表示されています。一番大きく表示されているのは水生環境毒性のものです(Wikipedia「GHS hazard pictograms」の「Environmental Hazard」のラベルです)。
またGHSラベルの右上に見慣れない小さいラベル表示があります。これは危険物の国際輸送に関するラベルで、クラス9・有害性物質のものです(Wikipedia「GHS hazard pictograms」の「Non-GHS transport pictograms」内、Class9「Miscellaneous dangerous substances and articles」のラベルです)。
2024年11月に改めて想うこと
上記では保護具の型番まで触れていますが、メーカーからカタログを取り寄せて記憶と照合を行っております。我ながらアホですねぇ…。
救助活動時の呼吸用保護具未着用はやっぱり痛恨ですね…。しっかり啓発を行っていかねばなりませぬ。
ヤシオリ作戦時の呼吸用保護具。司令部の面々はゴジラが発する放射性物質(おそらく粉じん)の吸入を防ぐため、防じん機能のみでおそらく問題はない…ハズ。その一方で、現場の自衛隊員の皆さん(特別建機中隊の皆さんとか)は放射性物質だけでなく血液凝固剤(液体)への対応も必要。コイツの揮発性はよく分からないので防毒マスクまで必要かどうかは分かりませんが、ゴジラの息とか毒性がよく分かりませんので、防じん機能付き防毒マスクがbetterな気はします。
血液凝固剤の運搬用容器へのラベル表示に環境有害性のラベルはあるけど物理化学的危険性と健康有害性のラベルは見当たらない件。これは新規製品なので危険有害性の評価が間に合わなかったのかな?と思ったりしました。原材料から水生環境へ漏出した際の有害性は明らかっぽいのでラベルは表示してあるし、爆発や引火はしそうにないのでラベルはないのかも。健康有害性は評価に時間がかかるので「エビデンス不十分」でラベルが貼れなかったのかも。本当にそれでオッケーなのか?と思ったりはするけど。