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神のみぞ知るセカイの夢漫画 裏話

こんにちは 黒沢モカです。
このnoteは、神のみぞ知るセカイの桂木桂馬に対する夢漫画「ユメノジカン」を読んでくださった方々、または手にとらなかったけど気になってる方のために裏話をお伝えするために初めて書くnoteです!
途中までは夢漫画そのもののネタバレなしなので、まだ読んでない方も読めます!だーいぶ長いですのでご注意ください。それから自分だけの読後感を大事にしたいなら、読むのはあまりおすすめしません。
1人の神のみファンの想いを洗いざらい説明いたします。

桂木桂馬に恋するまで

『桂木桂馬』に出会ったのは友人がアニメを紹介してくれたからです。
「いつまでも『けいおん!』ばっか見てないで、他のアニメにも興味を持て!」と言って、コピー用紙にアニメ10作品ほどを手書きでまとめたものを友人に渡されました。まだ中学生だったのもあって、友人が書いてくれたあらすじは日本語が拙くわかりづらかったです。
その中でも一際わけのわからないあらすじだったのが『神のみぞ知るセカイ』でした。「ギャルゲー?って何?」「神なの?悪魔なの?」「攻略とは???」ってかんじでとにかく意味不明でした。
これはアニメを見て何が言いたかったのか確かめてみよう。そう思って、深夜にガラケーのアラームをかけて一度寝て、アラームの音で起きてワンセグで『神のみぞ知るセカイ』というアニメを見てみました。
すぐに電撃が走りました。アニメは随分話が進んでいて内容がわからなかったが、主人公と思われる男があまりにもかっこいいのです。一目惚れでした。
このイケメンが気になる。アニメは結局見てもよくわからなかった。これは最初から見ないと意味がわからない。そう思って、翌日友人に「神のみぞ知るセカイ?っていうアニメ見てみたんだけど主人公がかっこいいから話が気になる!どうやったらはじめから見れる?」と聞ききました。友人は「でしょ!神にーさまかっこいいよね!」と言って私に当時出てた漫画の全巻を貸してくれました。
そこから神のみにどハマりするのはすぐでした。一目惚れしたイケメンが重度のオタクであることにびっくりしたけれど、むしろ「オタクは楽しいぞ!」と言わんばかりの彼の言動に、今まであまり趣味もなくて、ぼんやり生きてた私の背中は押されました。
神のみのストーリーは私を十分に引き込んでくれて、ハクアの話に涙して、月夜の攻略にうっとりして、女神編でハラハラしました。そしてこう思ったのです。
「神にーさまに私の心のスキマを恋愛で埋めて欲しい」
毒親に育てられ、いじめを受け、誰にも何にも相談できず、毎日が苦しかった私は、神にーさまに縋るように恋をしました。

夢主『白倉円』を作るまで

神のみを知って10年ほど経っても、神のみのことも神にーさまのことも大好きなままで、いつかちゃんと稼げるようになったら神のみ全巻を家に置くんだ!と決めていました。高校の時に友人からもらった神のみの最終巻を、家出する際に置いてきてしまったこともずっと悔やんでいたし、その後別の友達から神のみの第1巻をプレゼントされた時はとっても嬉しくて何度も読みました。
毒親やおかしな友人から受けた仕打ちによるトラウマで心身が疲弊して精神科に入院もしました。私は退院後も全く社会に戻れず、大学を卒業後はニートで暇を持て余していました。だから、たまに時間を作って会ってくれる高校からの友人は大事でした。
高校の友人は、とあるジャンプの漫画が大好きで、その漫画のキャラの1人に、彼女はガチ恋していました。彼女はある日、私にそのキャラクターと、彼女が作った彼女の代わりに恋愛をしてくれるキャラクター、つまり「夢主」と呼ばれるものとの恋愛について語ってくれました。彼女とその漫画のキャラとの恋バナはとても初々しくて、私はとっても羨ましく思いました。そしてふと、中学生の頃の自分を思い出したのです。
「神にーさまに心のスキマを恋愛で埋めて欲しい」
この想いは、10年経っても色褪せていないことに気づきました。「私も夢女になる!」そう友人に宣言したのが一昨年のことでした。
さて、どうやって夢女になろうか。夢小説というものも読んだことがないし、神にーさまにはそもそもちひろがいます。ちひろと神にーさまとのエンディングは絶対曲げたくありません。私はただ「攻略」されたいのです。
神のみの攻略を思い出して、そこに自分を当てはめてみました。しかし、頭の中の私は神のみの世界にまるで馴染めませんでした。私という人間は要素が多すぎて複雑すぎます。神のみに出てくるヒロインは、いい意味でとっても「わかりやすい」のです。私は心が穴ボコだらけで、キャラクターとしてはあまりにも複雑で生々しく、頭の中の神にーさまのどんなアプローチも拒絶してしまいました。そもそも、神にーさまは漫画の登場人物、私自身の心のスキマを埋めてくれる人なんてどこにもいないのです。
私自身を攻略してもらうのはあっさり諦めました。でも攻略されたいという長年の夢は叶えたい!
そこで友人の話を思い出します。彼女は「夢主」という好きな相手と恋仲になるための「キャラクター」を用意してました。そうだ、私も「夢主」を作ろう!私は神のみの世界にも馴染めそうな、わかりやすくて生々しくない、私のための可愛い「夢主」というキャラクターを作りました。
どんな娘にするかはすぐに決まりました。私はたびたびいろんな友人にこのように形容されます。
「メンヘラ」
私はリスカもしないし、ホストに狂ってないし、ストゼロをストローで飲まないし、とーよこだの歌舞伎町だのに行ったことはないのだが、どうやら私の言動は「メンヘラ」に見えるらしいのです。「メンヘラ」…それはとっても「わかりやすい」表現でした。
「メンヘラ女…いいな…」
そうして私は1週間も経たないうちに、「白倉円」というヒロインを作り上げました。そして「白倉円」という生まれたてのヒロインの心に穴を開けて、「攻略されてこい」と私の夢を押し付けました。

夢漫画の発表を決めるまで

私は、白倉円と神にーさまとの馴れ初めだとか、細かい設定だとかを、同じく夢女である友人に電話やlineで話しました。
しかし話すだけでは物足りなくて、「円が攻略される様子を見たい!」と思いました。なら自分で漫画を描くしかありません。
描くなら本当に神のみに存在してもおかしくないような、原作リスペクトの漫画を描きたいと思いました。作り上げた白倉円には神のみの世界で息づいてほしかったのです。さっそくkindleで全巻買って一気に読みました。神のみのストーリー展開の記憶を最新にして、円の攻略を漫画に書き起こしました。どうやって描いていったかの詳細は後ほど書きます。1話…2話…と書いていき、それは夢女の友人にだけ見せました。インターネットにこれは載せられないな…なんて言われるかわからないし…友達1人に見せるだけで十分だ。そう思っていました。
話は変わりますが、私はVtuberというものが好きです。私は大手のVtuberだけでなく、デビューしたばかりの小さな事務所に所属するVtuberも推すようになっていました。その小さな事務所にいるVtuberは「ファンサーバー」と呼ばれるdiscordサーバーを持っています。一定額以上彼女にスパチャのようなものをすると、彼女ともっと交流できたり情報が早くもらえる「ファンサーバー」に入れてもらえるのです。
ある日、そのVtuberは配信で、自身がゲームキャラクターに対する夢女であり夢小説も書いてると発言しました。「私も夢女だよ!」と私は彼女にコメントを送りました。すると、そのVtuberは「そうなの!?夢小説とか書いてる?」と食いついてきました。ちょっとくらい言ってもいっか〜と思い、「夢漫画をこっそり描いてるんだ〜」と言うと「読みたい!」と言われて、ファンサーバーに夢漫画を読むためのチャンネルを作られてしまいました。作られてしまった手前何も返さないのも悪いと思い、神のみとはどんなストーリーか説明、そして桂木桂馬と夢主の白倉円はどんなキャラかを説明した画像を貼って、夢漫画をPDFにしてギガファイル便のリンクを貼り付けました。

夢絵の無償依頼のために本来作ったものを転載
これも同じく


数日後、その夢漫画のリンクを置いたチャンネルに、ファンサーバーにいるファンの1人がこんな書き込みをしました。
「僕は神のみを全巻読んでアニメも全部見るほど神のみが大好きなのだが、この夢漫画は素晴らしいです!神のみファンの僕が最高だって保証します!みんな読んで!」
なんと同じVtuberのファンに神のみファンがいたのです。しかも神のみファンが私の夢漫画を認めてくれたのです。
「もしかして私の夢漫画って神のみファンも面白いって思ってくれるの…?」
その後Vtuber本人から「面白かった〜」と言ってもらえたり、他のVtuberファンの子からも「原作知らないけど面白い!」と言われました。私の夢漫画は受け入れられはじめたのです。
ちょうど時期を同じくして、神のみファンがツイッターに生息していることが分かり、とある神のみファンとはスペースでお喋りしたのをきっかけに仲良くなりました。
Vtuberのファンに紛れていた神のみファンの言葉を信じて、思い切って神のみの夢漫画を、新しく仲良くなった神のみファンの女性に見せてみました。
面白いと言ってくれました。さらに神のみオンリーなどで他のファンにも共有しようと背中を押してくれました。
そうして自信を得た私は、夢漫画をオンリーに出すと心に決めました。

夢漫画をオンリーに出すまで

しかし、まだまだ自信が足りなかったので、一度pixivに上げてみました。pixivは第一話は20人ほどからブックマークされました。また、ツイッターにpixivのリンクを置いて、神のみファンの方をフォローしていくなど友達作りを頑張りました。すると、「神のみの夢漫画が読めて嬉しいです」と言われたりしました。「まじ?」と舞い上がりはじめました。
2023年のオンリーには、初参加にも関わらず、「来年サークル出します!」という夢漫画の載ってるpixivのQRコードの印刷された紙を持っていき、神のみの本を買ってはサークル主に渡す「奇行」に走りました。

奇行で渡したペーパー


奇行に対して「来年のサークル楽しみにしてます!」「サークル頑張ってください!」と励ましの言葉を頂けました。なんて温かいひとたち!こんなクレイジーな紙を押し付けられても応援してくれるなんて…!
私がクレイジーな紙を配って歩いたのは、私自身に締め切りを設けるためでもありました。先延ばし癖があるので、あえて「絶対漫画だします!」と宣言して逃れられない責任感を背負い、有言実行するという作戦です。
そして2024年の神のみオンリー、合計194ページの夢漫画をなんとか完成させて頒布することができました。
私は「神にーさまに攻略されたい」という願いを1年半ほどかけて叶え、神のみファンにその様子を見届けてもらうことができました。

ここから先は夢漫画のネタバレです。読んでいない方にもお伝えできる裏話はここまでです。気になったらぜひ夢漫画そのものをboothにて〜
pixivで途中まで読むこともできます!



ここからは9つに区切って何を考えて作り上げたか書いていきます。

白倉円を作り上げる

メンヘラ女がいい!と思ってから容姿はすぐに決めました。ハーフツインがいいよね、手首に包帯がいるよね、足元ちょっとこだわりたいから絆創膏にサスペンダーつけちゃおう〜、差別化された制服が好きだからリボンにはマスコットキャラをつけよう…など。
身長や体重は他の神のみヒロインのプロフィールを見返して、「結よりちょっと大きかったらよくない?」「このくらいの体重なら神のみではかなりガリガリの部類に入るだろう」と決めていきました。
髪の色は私にとってのシンデレラになって欲しいので灰被りの灰色にしました。
名前はシクラメンという花から取りました。シクラメンを文字って「白倉」、シクラメンがギリシャ語で円という意味なので「円」にしました。シクラメンが誕生花の日が1月14日なので、そのまま誕生日に使いました。
ピンクのシクラメンが「憧れ」という花言葉から、当初考えていた心のスキマと合うので、目の色をピンクにしました。
「憧れ」という心のスキマは、神のみを再読してすぐに却下されます。最初は桂木桂馬が素晴らしくて羨ましい、嫉妬にも似た憧れをスキマにしようと考えました。しかし、楠が姉を目標にしていたり、ちひろの発言に「憧れたらすぐ好きになる」のようなことがあったりと、すでに「憧れ」は神のみで使われていた題材だったと気づきました。ヒロインと心のスキマが被るなんて言語道断!しかし名前にはすでに愛着があり変えることはせず、じゃあ何をスキマにするかは描きながら考えていこうと思い、かなり見切り発車でスタートします。

FLAG.1


第一話はかなり夢女の友人と決めた部分が多いです。友人と話せる楽しさと私のヤンデレ好きが暴走して、「神にーさまをストーキングしてたことにしよう!」というトンデモ設定が最初に加わります。
どこからどこまでストーキングしてたことにするか考えていたところ友人が「最初から最後まで見てたことにしない?」と大胆な案をくれてそれを採用します。
「脅迫からの始まりだったらドキドキしない?」と私が言い始めて、16ページ目を真っ先に描いて友人に見せました。その後16ページ目につながるように第一話を描いていたので、今思うとクレイジーです。
ストーキングの末、ちゃんと出会うのはどこがいいかな〜と相談したら友人が「校舎裏」と答えたのはナイスアイデアでした。
だいたい必要な設定が決まり、神のみを再読したところで、1話目を描き始めていきました。
なるべく早い段階で「これは原作をリスペクトして描きたいんだな」と分かるように、7ページ目には二階堂先生が神にーさまを殴る描写を入れました。そこから、16ページ目の脅迫シーンにつながるように、今まで考えた設定を入れながら、神にーさまならどう動くかな?円はそれに対してどうするかな?と考えつつ円に脅迫してもらい、嘘のカップル成立まで持っていきました。神のみという週間連載作品特有の展開の速度を崩さないで、でも描きたい描写はしっかり描いていきました。
エルシィはきっとドン引きだろうし、檜の攻略のあとで強力な駆け魂が連続していて心配だろうな〜と思い、困った感じに描いてみました。このあとずっとエルシィは困った表情を見せ続けますが、この時はまだそうしようと思っていませんでした…。
神のみの話の展開らしさを守るために、21ページにちょっとした神にーさまの独自の思考の説明パートも入れました。
第一話のラスト、22ページの神にーさまのセリフは、かのんの攻略を思い出してのセリフになっています。伝わったかな…?
この段階では「嘘のカップル成立のまま攻略してもらう」と決めていましたが、描いていくうちにそれではダメだとなり、だんだんスキマの理由も別物になり明確になります。

FLAG.2


この話はかなり楽しいものでした。神にーさまの呼び方を「ぴっぴ」にしたい、それからリスカしてるところを神にーさまに見せたい、この二つだけで描き始めました。
なんとなく扉絵も付けたくて初めに描いたのを覚えています。結構可愛くできました。意外にも扉絵がかなり褒められていて嬉しかったです。
25ページに円が彼ぴに求める500ヶ条を提示しますが、これはメンヘラを売りにしている大手のvtuberさんの配信を見て取り入れたものです。
29ページ目で神のみのいつもの展開である、プロフィール公開と拗ねるエルシィを入れて、30ページ目で神にーさまがゲームキャラになぞらえて円を説明します。かなり最近のジャンルについて話してますが、きっと10年前からメンヘラという言葉そのものはあったと思うし、メンヘラについて神にーさまがゲーム知識を持っていないと話が始まらないのでねじ込みました…。
31ページ目には桂馬の一句も入れてみました。かなり文言に困りました。ギャルゲーはやったことがないのでギャルゲー知識っぽいことは書けなくて、メンヘラ目線の言葉にしてみました。なんとなく説得力はあるでしょうか?けいまのハンコはどうしても模写できなくてトレスしています。
34ページでメンヘラのいるギャルゲーについてあつく語る神にーさまは、たまたま実況を見た「Needy girl overdose」のエンディングの数々を思い出しつつ、かなり適当に書いています。ギャルゲーにわかなりに考えました…。
いよいよ円と対面して攻略していきます。36ページには一目で問題のある家庭だと分かるような絵を入れました。38ページでブチギレる円も、その問題ある家庭で育ったが故に子供過ぎる円を描きました。
我ながら好きなのが、円がストーキングと恋愛経験豊富な面もあって、神にーさまの言動を見破れてしまうところです。42ページはペンの太さや絵柄を変えて神にーさまへの間違った見解で、言動を見破らせました。
46ページの衝撃のシーン。人によっては見たくないシーンですね。pixivにはグロ注意と書いてるくらいです。かなり気合を入れたイラストにもなってます。ここから先の展開は実際にネームを書くまで決められていませんでした。
最初は神にーさまはリスカを見せられかけて逃げ出してもらおうと考えていました。しかしそれでは今後の攻略の突破口が見つかりませんでした。だって何回だって円はリスカを見てもらって、「同じように痛みを抱えてもらいたい」という願いを叶えようとするだろうと思ったからです。
ネームに入って、50ページ目で神にーさまは勝手に動き出し、自身の手首を切りました。
53ページ、神にーさまは「円に理想を見せ続ける!」と叫びます。神のみのテーマの一つに「理想とは何か?」という議題があることは若木先生が様々な媒体で書いてくれています。とくに円の攻略は、倉川灯の手前なので、理想という言葉を何度も出しました。このあとの話で理想という言葉が出たところに注目してみるのも楽しいかもです。
神にーさまはスルスルとリスカをしない約束までつけて、第二話は終わります。

FLAG.3


ここで私が考えていた展開と神にーさまの思考が交わらなくなります。神にーさまは、円に写真をばら撒くほど勇気がないことに気づいてしまいます。当初予定していた、嘘のカップルの状態を維持したままの攻略はできなくなってしまいました。
そこで大幅にテコ入れするために、試行錯誤します。まずは円と神にーさまに仲直りしてもらいました。
円がリスカしてないかどうか確認して、新しい傷がないのを見て褒めるのは、だいぶ良い選択だな〜と思いました。おかげで72ページ目で「もう一回巻いて」と円が甘えてくれました。
一方、昨日思いっきり血を流した神にーさまを心配するエルシィ。ここで、エルシィにはずっと心配して困ってもらおうと決めました。74ページ目には伏線も張ってみました。
昼に屋上で円が神にーさまに抱きつきます。甘えん坊ですね。79ページ目、ここで神にーさまは円に本当に脅迫する意思がないことを明言します。「明言しちゃったなあ〜、やべーここからどうしよう〜」が黒沢モカの本音です。
しかし82ページ目で円が自ら動いてくれます。去っていく神にーさまを止めてくれたのです。そこで神にーさまはまた「理想」という言葉を使って、「本当の恋人同士になる」ことを提案します。神のみ本編にも、一度ハクアを彼女ですって言った以外は恋人同士になる展開はなかった(はず)なので、これはこれでいいか〜と勝手に脳内で動く2人を傍観する黒沢モカでした。
86ページにもあるように、円は結構神にーさまの言動を見破るのが、後半に出てきたヒロイン感があって良いですね。

FLAG.4


イチャイチャ回と見せかけた歩美回です。円は檜の後に出てくるヒロインという設定で、かなり攻略編の後半のヒロインです。後半のヒロインになるほど、攻略は複雑になり、女神の問題も浮上しています。結編ではすでに、女神なんて考えられない、目の前の攻略で手一杯なんて感じのセリフが漏れていたり…。だから女神持ちのヒロインの動きは神のみの世界観に準拠するためにかなり重要な部分と思いました。
円の攻略は学校内なので結構目立ちます。女神持ちのヒロインが放っておくわけがないのです。しかし、行動を起こすヒロインは誰だろう…と考えた時、歩美しかいないと思いました。
もう一つ、このままスルッと攻略なんてさせてやるものか!という思いもありました。3話目でだいぶ絆されてしまっている円を見て危機感を覚えました。このままでは何かの拍子でサラリと攻略できてしまう。私には思い描いていたラストもあるので、簡単に攻略されては困るのでした。
ヘアアイロンでイチャイチャする2人をニコニコで描き上げて、この二つの問題の解決に向かいました。
まず円の問題は、96ページで「心のスキマが再発する」という懸念を神にーさまに抱かせます。97ページはハクアが家に来る回で言っていたことをそのまま再現しました。
98ページ目、歩美を登場させます。少し疑念を持ってる状態の歩美に神にーさまが本当のことを言いつつ、疑念を払ってフラグを折ります。
102ページ目、ついに未成年飲酒する円が描けてハッピーなのも束の間、2人は早速喧嘩します。そして神にーさまは「もうしばらく口はきかないよ」と言い放ち、円を放置します。新たな困難の予感を持たせてから5話目に移ります。

FLAG.5


円が神にーさまに口をきいてもらえなくなって数日経ちます。113ページで円のストーキングがただのストーキングじゃなさそうなのも匂わせつつ、114ページで初めて円の目線、心境を描くことになります。116ページでは昔言われて傷ついた言葉を円に思い出してもらったりしました。
そこに神にーさまが現れるのですが、まだ円は自身の身勝手さに気づけなくて、再び喧嘩し、見捨てられ、ようやく円が自身の思考の良くないポイントに気づきます。
私も円と同じでかなり他責なところがあるので、描いていて胸が痛かったです。正直、4話目であのような喧嘩をした時点で私には解決方法がまるでわからず頭を抱える日々が続きました。どうやってこの状態の円は立ち直れる?私は立ち直れない…と、どん詰まりでした。
122ページで円から動いてくれました。少し無理矢理ですが、円には自分の思考の良くない点を自分で見つけてもらいました。この辺の円の心境の変化は次の本で明かしていこうと思います。
125ページ、良い雰囲気すぎるのですぐに神にーさまにぶち壊してもらいました。まだラストには早いので。そして3話目あたりからやらなければと思ったこと、「円の心のスキマを広げてくれ」と神にーさまがエルシィに頼みます。

FLAG.6


黒沢モカの話を唐突に始めます。中学生の頃、私のメンタルはかなりズタボロでした。学校ではなんとなくいじめられ、親からは毎日怒鳴られていました。怒鳴られる内容は母親を裏切るようなことをしたから、らしいのですが、後から考えると母親のとんでもない自分ルールから外れて気分を害したからでしかありませんでした。
メンタルズタボロの中、少ない友人の1人が勧めてくれた『神のみぞ知るセカイ』。そこには当時の私と同じ身長、同じ髪型のエルシィというキャラクターがいました。彼女はいわゆるドジっ子で、周りの悪魔に不出来を笑われていました。しかし、エルシィは不出来に怒りはするも許容する神にーさまと出会います。母親に毎日不出来を怒られる私にとって、それはすごく羨ましいことでした。
「もしかしたら生まれた世界を間違えたのかもしれない」と思うようになりました。「私は本当の世界に戻る」とノートに殴り書きをして、適当な団地の10階から身を乗り出そうとしたのが中学2年の秋でした。
「エルシィに対する当時の感情を乗り越えなければいけない」
夢漫画を描き始めた時から思っていたことでした。今では身長もすっかりエルシィを超えて、髪型も変わって、自分がエルシィだったのかもなんておかしなことを微塵も思わなくなっていました。しかし、夢漫画を描き進めるに連れてだんだん神にーさまに恋した当時の心境を思い出していきました。だから円にはこの意味不明なエルシィへの羨ましさを、私の代わりに克服してもらわなくてはいけませんでした。円にとっていつも神にーさまのそばにいる妹エルシィってどんな存在だろうか、と考え続けていました。
5話目では、円が抱えるエルシィへの気持ちを神にーさまが気付き、エルシィを利用して円の心のスキマを一度広げてから攻略しようと考えついてもらいました。
6話目は出だしからだいぶ甘い2人。137ページでは円をデートに誘い最高に幸せな空間になります。
しかし143ページ、久々の帰り道にエルシィが割り込んできます。自分の気持ちを優先して拗ねてばかりいてはいけないことを学んだ円はギリギリまで我慢します。ですが、2人で遊園地に行ったことを言われたのをきっかけに去っていきます。

FLAG.7


自殺未遂を止めてエンディング、これが当初から決めていたラストでした。しかし、なんとなく部屋で首を吊ろうとするのを止めに来て〜なんてぬるいエンディングでは私はもう満足できずにいました。さらに、ここまで描いておきながら、円の心のスキマの原因は未定のままです。プロットは書いては消してを繰り返していました。締切まであまり時間もありませんでした。もうこれはネーム段階で決めるしかない。そう思い、ネームで全て決める方法を取りました。
154ページ、「もう終わりにしよう」と円はつぶやきます。円は心のスキマが広がったことで自殺を決意してしまいます。
最初で最後のデートを神にーさまと行います。157ページでは「今日のまどか可愛い?」と最期に可愛いかどうか尋ねてきます。
今までの週刊誌漫画らしい目まぐるしい展開は7話目では完全にやめて、ゆっくりゆっくり海に向かわせました。円の一つ一つの言動に注目して欲しかったからです。
161ページでは「こうやってなんでもない時間を過ごせるのがすごく嬉しいの」と素直に円は今の気持ちを言ってくれます。電車の中の時間が一番円にとって、もうすぐ終わるけどまだ終わらない、今の幸せをたっぷり堪能できる時間だったと思います。
163ページの「そうしないと死ぬから」という神にーさまの発言はこれから起こることへの暗示です。この発言は本当ではあるけど、円の受け取り方とは全く違います。だから、165ページで「お前ほど悲観的じゃない」と突っぱねます。
169ページ、自殺場所の最寄駅に着いた円にとって、生きるための水はもう要りません。170ページで神にーさまが差し出す手は、これから自分が辛い方へ引いていってしまう手で、円は申し訳なさと今という時間の儚さでいっぱいになります。
172ページでも上着を貸したりするように、円は死に向かっていながら、神にーさまは今を生きようとする行動ばかりとってきます。2人の考え方の対比です。
175ページで円は色々暴露します。円も私とは違うけど、人生の生きづらさを抱えています。そしてもう一度、「まるでぴっぴみたいでしょう?」と神にーさまに同意してもらおうとします。しかし、神にーさまは「少し違うかな」と否定します。円の希死念慮は否定されてしまいます。
円は心中を決めきれないまま海に入ります。妹に負けて、今までの人生の重みに耐えきれずもがいている一方、神にーさまを道連れにするには迷いがある。その迷いの隙をついて神にーさまは円を抱きしめます。
ここで、円に足りないピースはなんなのかわかりました。答えは神にーさまが184ページで言ってくれます。それは、円が今まで見せた言動の根底の部分で、私がきっと生涯をかけても治せないことでした。
こうして駆け魂が心のスキマから出ていった円は、前を向いて歩き出すことができました。なぜか結ともお友達になっていましたし、きっとこれから楽しい学校生活を送るでしょう。円は私の代わりに攻略され、そして私1人では永遠に乗り越えられないスキマの原因を乗り越えていってくれたのでした。

扉絵・表紙


扉絵は漫画を描く合間に、本編のネタバレがないからという理由でお絵描き配信していました。数名に見守られつつ、その場で考えて描きました。FLAG.2の扉絵が可愛くできた、そして1話ごとに区切りがある形で書き進めているため、扉絵が必要でした。
どの扉絵も見にきてくれる方に、これどうかな?と聞きながら描いていきました。小タイトルは英語で統一したかったのでだいたいかなり悩んだ記憶があります。扉絵は大抵下書き1発で決めて、本書きしてたのですが、FLAG.7はかなりかなり迷いました。神のみファンにコメントで「こういう構図はどう?」と提案されて、FLAG.7はそのアイデアをそのまま採用して描いてみました。アイデアの提供ありがとうございます。
表紙は入稿の前日に1時間ほどで爆速で描きました。ずっと円をメインにした表紙にするか、それとも神にーさまをメインにするか迷っていましたが、他の神のみファンの方々に円メインがいいんじゃない?と言われてそのようにしてみました。なんのジャンルか一目でわからない可能性があるなあ…という懸念は、円が神のみの制服を着ること、そしてオンリー当日に一緒に頒布した神のみほぼ全キャラカードのおかげで大丈夫でした。
また、表紙にあるタイトルロゴは、最初に話した夢漫画を見たいと言ってくれたvtuberさんに依頼して円をイメージして作ってもらいました。「ユメノジカン」というタイトルは、もしこの漫画にエンディング曲があるなら、「コイノシルシ」「アイノヨカン」と並べても違和感のない「ユメノジカン」というタイトルにしました。

最後に

まず、ここまで読んでくださりありがとうございます。この漫画の裏話を書くには、私自身の歪みや過去を書かないといけないので、どうでもいい話だったかもしれませんが、読み飛ばさないでくれていたら嬉しいです。これでも重くなりすぎないように割と最小限にしたつもりです。
円は「黒沢モカの夢を叶える」という大きな目標を背負ってもらいました。その過程で、リスカを見せようとしたり、飲酒して喧嘩したり、いつも一緒にいる妹に嫉妬したり…いろんな不都合な思いをさせました。その分、攻略はかなり丁寧に行なったつもりです。絶対に私が空けた穴は完全に神にーさまとの恋で塞がるように物語を紡いでいきました。結構行き当たりばったりでしたが…。
オンリーでたくさんの方の手に渡って本当に嬉しかったです。初めてのサークルでバタバタしてましたが何か大きな嫌なこともなく、無事に欲しい人の元に届いてよかったです。皆さんには分厚さでけっこう驚かれていた記憶があります。オンリーの前日祭では「噂の190ページ!?」と言われたり、ちょっと恥ずかしかったです。何かオンリーではあり得ないことしちゃったかなと不安にもなりました。それから後日聞いたのですが、価格設定を心配されていたようです。印刷所が格安のため500円以上にすると利益が出てしまうのでそうしたのですが、オンリーの適正価格をわかっていなくて心配させたり、中には「お釣りはいらない!」と倍の価格を出されてしまったりしました。次の本からは、もしまた200ページの漫画になったら、ちゃんとした値段をつけますね。何度も言いますが、皆さんが嬉しそうに買っていってくれたのが本当に嬉しかったです。良ければ読んだ感想をマシュマロに送ってくれるととっても嬉しいです。感想は生き甲斐なので!
長くなりましたが裏話は以上となります。まだ書いてないことはまた次の本で。円を好きになってくれていたら、そして私という神のみファンを受け入れてくれたら、とてもとても幸いです。



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