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鹿とオウムの絵本 のプロット

学生の頃に悪ふざけで描いた絵本があります。

スケッチブック一冊を使って殴り書きしただけのものなので、残念ながら原本は残っていません。

卒業から数年後、仲間たちとグループ展をやった時にその絵本の話になり、せっかくだからまじめに描き直そうかとスグに着手したものの、表紙と最初の見開きだけ作って、それから10年くらいたってしまいました。

このままでは一生完成しないまま、ストーリーも忘れてしまいそうなので、今のうちにメモとしてここに残しておきます。





みんなはこの鹿が嫌いです。

鼻が赤いからです。


鹿はそれを自覚しているので、みんなの空気を悪くしてはいけないと思って、なるべく自ら皆のことを避けて過ごしていました。


そんなある日、鹿の前にオウムがあらわれました。


いつも通り、気づかないふりをして、目をそらしながら横を通り過ぎようとすると、オウムが言いました。


なぜ避けるんだ?俺は鹿に用事があるんだ。


鹿は驚きました。まさか自分に用事があるだなんて、珍しいオウムがいたもんだと思い、鹿はオウムにたずねました。


僕に用事っていうのは、どんなことですか?


オウムは答えました。


なぜみんなを避けるんだとたずねたかったんだ。だからもう済んだ。


そうですか。それはよかったです。それでは僕はこれで失礼します。


鹿は家に帰りました。


今日はたまげたことが起きた。いったいぜんたい、どういう日だ。

その日、鹿はなかなか眠りにつけませんでした。



次の日も、目の前にオウムがあらわれました。



今日はいったいどんなご用で?


昨日は鹿がなぜ俺を避けるか聞きたかったからその用事は済んだんだが、答えを聞くのを忘れたから、今日はそれを聞く用事だ。


鹿は答えました。


鼻が赤いからです。


赤いとみんなを避けなきゃいけないのかい?


ええ。どうやらそういうことのようです。


オウムは驚いた顔をして、急に飛び去っていきました。


鹿はその日もなかなか寝付けませんでした。


次の日もオウムはあらわれました。


赤いとみんなを避けなきゃいけないのは、どうしてだい?


僕にもわかりません。


実はほら、俺も赤いんだ。


鹿は驚きました。

オウムは赤いのです。

よく見ろと言いながら翼を広げているので、よく見ました。



とてもかっこいいね。

と、思わず鹿は言いました。


そうだろう?だから変だと思うんだ。

昨日は赤いとみんなを避けなきゃいけないという話を初めてきいたもんだから、これはいけないと思って急いで帰ったけど、どうにも納得がいかないから聞きに来たんだ。


オウムはいつもこんなふうに、島中を飛び回って見つけた人に気になっていることを聞いてまわっているらしい。


次の日も、その次の日も毎日オウムは鹿の目の前にあらわれてさまざまなことを質問しました。


豆は食べられるのが嫌でカラをつけているのか?だとか、

あの草の根っこが苦いのはなぜか?だとか、


鹿はその質問に上手に答えられたためしがないので、今日は鹿がオウムに質問してみることにした。


みんなは、僕より上手に質問に答えてくれるのかい?


みんなって?


君は島中飛び回ってみんなに質問してるんだろう?


あぁ。そうだよ。

でも真剣に答えようとしてくれるのは君だけだ。

みんなはろくに話を聞いてくれないよ。


それを聞いた鹿は勇気を出して提案しました。


それなら、いつもすぐ僕のところに来ればムダがないよ。


それもそうだ。ムダはよくない。


それからというもの、オウムと鹿はいつも一緒にすごしました。

鹿はいつも一人きりですごしていたから、二人きりですごせる場所をたくさん知っているのです。


たまに他の者とすれ違いそうになると、いつも鹿はすぐにわきの木に隠れました。

オウムはそのたびそのことについて質問してきましたが、鹿はいつもうまく答えることができませんでした。


今日もそんなことがあったので、鹿は自分でも思ってみたことのないことがなぜだか口をついて出てきました。


彼らはいじわるだから、みんないなくなってしまえばいいんだ。僕とオウムだけでいいんだ。


次の日、オウムは鹿の前にあらわれませんでした。

それもそのはず。昨日はあんなにひどいことを口にしてしまったんだから、オウムはあきれてしまったに違いないと鹿は思いました。


次の日も、その次の日もオウムはあらわれませんでした。


鹿は何日も何日も、鹿とオウムしか知らない二人の場所で、一人で待ち続けました。


鹿はオウムに弁解したいと思いました。

オウムと二人きりですごすのが楽しいから、そのことを伝えたかっただけなんだ。

でも、そのために他の者を悪く言うのは間違っていた。


意を決した鹿は、二人の場所を出て、オウムを探すことにしました。


おそるおそる、みんなの場所に向かいました。


あの、すみません。


オカピに聞きました。


オウムを見ませんでしたか?


オカピは答えてくれました。


オウムねぇ。最近見ないけれど、フクロウなら知っているかもしれないよ。


鹿はおどろきました。


意を決してオカピに話しかけてはみたものの、きっと罵詈雑言が返ってくるに違いないと思っていたからです。


オカピはいい人でした。きっとフクロウもいい人に違いないと思い、今度はフクロウをさがすことにしました。


あの、すみません。


ヘビに聞きました。


フクロウがどこにいるか知りませんか?


あぁフクロウならこの時間はいつもあの木で寝ているよ。

訪ねるなら夜にしなさい。この時間は寝ているから。


ヘビもいい人でした。


勇気を出して、もうひとつ聞いてみました。


あの、僕、鼻が赤いですが、どうおもいますか?


赤いと思うよ。


みんなは赤くないのに、僕は赤いんです。


そのようだね。


だからその....嫌いじゃないですか?


好きも嫌いもないよ。私は君のことを何も知らないからね。


鹿はおどろきました。


夜を待って、フクロウの家に行きました。


あの、すみません。

オウムを見ませんでしたか?


フクロウは首をひねって鹿を見つめました。


君、鼻が赤いじゃないか。


はい。


じゃぁ話すことはないよ。嫌いさ。


鹿はショックのあまり自宅に逃げ帰りました。


やっぱり赤いとだめなんだ。

僕は今まで通り、ひとりでひっそりと、静かにすごそう。


鹿は夢を見ました。


オカピやヘビや、アルマジロ、カンガルー、白熊らと散歩する夢です。

彼らは鼻が赤いことを責めたりはしませんでした。

しばらく歩いていると、手前の方から黒豹がやってきて、すれ違いました。

すれ違ったあと、黒豹に聞こえるか聞こえないかくらいの声でアルマジロが言いました。


見たかい?あいつ、黒かったぜ?


みんなは笑いました。

どうしてかはわからないけど、鹿も一緒になって笑いました。


どうしてかわからなかったので、あとでオウムに聞いてみようと思いました。


そうだ!ぼくはオウムを探さなきゃ!


鹿は飛び起きました。


すると、目の前にオウムがいるではありませんか。


君は?夢かい?


いいや、オウムだよ。


オウムの夢かい?


ただのオウムだよ。

それより早く、こっちに来るんだ。


鹿はオウムにたくさん聞きたいことや伝えたいことがありましたが、オウムが急かすので外に出るやいなや、オウムは鹿を掴んで空を飛びました。


そのまま森をぬけ、島のふちまで来たと思ったら、そのまま海の上を飛んで、小さな島に着きました。


ここはどこだい?


見ろよ。


オウムは質問には答えずに今までいた島の方を指しました。



どぉぉぉぉぉぉぉん



今までいた島が爆散しました。



何日も何日もかけて島中に爆弾を仕掛けていたんだ。

そういえばしばらくぶりだねぇ鹿。


しばらくぶりだねオウム。どうしてそんなことをしていたんだい?


君がのぞんだんじゃないか。これで二人きりだ。


ありがとうオウム。


二人は寄り添って、もといた島があった場所に沈んでいく夕日をいつまでもながめました。



おしまい


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