見出し画像

プログラマが考える!AIに対する有効なイラストコピーガードの手法とは!?

※全文無料です。

はじめに

近頃は画像生成AIであるNovelAIの流行により、「AI絵師」というワードがトレンドに上がるほど画像生成AIについて関心がもたれています。
一方で、「AIで誰でも絵描きになれる!」という風潮には、多くの絵師が待ったをかけている状態です。発達しすぎると、自分たちの仕事が奪われる危険があるのもあり、当然の反応でしょう。
そこで、人たちは考えるわけです。「AIに絵をコピーさせないようにすればいいじゃないか」と。では、具体的にその手法を紹介して行きましょう。

AIに対する有効なイラストコピーガードの手法とは!?

結論から言うと、適切に運用されたAIに対してコピーガードを行う方法はないです。
詳しい根拠は次項から解説していくとして、その理由は主に3つに分けられます。
1. ノイズを付与するなどの一見有効に思える手法に対して、そもそも使われているAIアルゴリズムが耐性を持っている。
2. 仮に現時点から絵に有効な対策を仕込めたとしても、過去にさかのぼって全ての作品に対して同様の対策を施さなければ意味がない。
3. そもそもAIは作品をコピーしているわけではない。

論拠① AIアルゴリズムのノイズ耐性

現在話題のNovelAIで使われているDiffusionモデル(拡散モデル)を例に解説していきましょう。
これは最終的にはランダムなノイズから絵を作り出すことを目標とします。
このモデルの構造としては、まず教師データ(お手本とする絵のデータ=これがネットから学習している絵)にノイズを乗せていって、完全にノイズだけの画像にしてしまいます。
ノイズだけにするといっても、これは絵の各ピクセルのカラー値に対して何らかの計算をしていった結果、ノイズとなったわけですから、この計算を逆に施していけば、元の画像が復元できるだろうという予想が立ちます。
これがDiffusionモデルの理論です。

さて、次の段階としてはノイズ化した画像に対して計算処理を行うことで、元のお手本の絵のデータを復元することです。
このノイズから復元するプロセスを何万回と繰り返していくと、次第にノイズから高確率で絵を復元できるような計算プロセスをAIが見つけ出せることになります。
AIが見つけ出したこの計算プロセスを、元の絵が存在するノイズではなく、適当なノイズに対して施してみたときにも、何らかの絵と認識できる画像が出力されればAIの学習が成功したと言えるわけです。

他の代表的な画像生成モデルには、DCGANというものが存在します。これはお手本の絵を持った審査員的なAIと、画像を出力する審査される側のAIの2つからなるモデルです。
このモデルでは、お手本の絵についての情報を持たない審査される側のAIが、審査員のAIに対して次々とノイズを生成して審査させていき、最終的に「これは絵である」と審査員に認識させるノイズを作ることが目的です。
審査員にほとんどの画像について、「これは絵である」と認識させられるようになれば、審査される側は一人前の画像生成AIとして独り立ちしていくわけです。

これらのモデルが共通して持っているノイズ耐性の特徴として、次の2つが挙げられます。
1. ノイズから画像を生成していること。
2. 畳み込み層というものを使って計算をしていること。

1のノイズから画像を生成していることについては、すでに上で解説済みなので、2の畳み込み層について解説していきます。

2の畳み込み層で行う処理は、画像内のあるピクセルを中心にいくらかのピクセルの情報を集めて、その中でも特徴的な値を抽出することです。
例えば、ノイズの中に何か文字が書いてある画像があったとしましょう。畳み込み層が得意とするのは、ノイズの中にある文字を特徴的なパターンであるとして、それを抽出するような処理です。
つまり、畳み込み層が特徴的なパターンを抽出する過程で、ノイズは切り捨てられてしまいます。これが、画像へのノイズの付与にAIが強い大きな理由の1つとなっているのです。

論拠② 対策は今からしても遅い

仮にAIに対して有効な対策方法が生まれたとして、それを現時点から実施していくことには大して意味がないということです。
なぜなら、インターネットにはすでに数億あるいは数兆あるいはそれ以上の数の画像が存在しており、現時点から数えて数百万枚かそこらに対策を施せたとしても、過去の膨大なデータから学習することは止められません。

さらに、AIが対策を施したデータから画像を生成するようになったとして、その生成された画像はAIに対する対策が施されている画像である可能性が高いです。
紙幣に偽造対策を仕込んでおいても、その偽造対策ごと偽造されてしまえば、それを偽札だと判定するのが難しいように、AIの生成した画像かどうか判断すること自体がそもそも難しいという話になるわけです。

論拠③ AIによる画像生成はそもそもコピーではない

ここまでの話で見てきた通り、AIによる画像生成はコピーというよりも、横にお手本の画像を置いて、それを参考に絵を描いていく行為に近いです。
AIによる画像生成に対して、お手本の絵のつぎはぎ合成であるというような認識を持っている人もいますが、実際には画像生成部分のAI自体は元の絵の情報すら持っていないことが多いです。

著作権的な創作性の観点からいえば、とあるキャラクターから特徴を抽出して、その要素を全て持ち合わせたキャラクターの絵を生成したとすれば、それは著作権法違反になる可能性はあります。
しかし、このキャラクターから特徴を抽出して新たにそれを持った絵を描くという行為は、普通の二次創作となんら変わりがないわけです。
AIの生成した絵か否かの判別が今後さらに困難になっていくことを考えると、例えばAIを使った二次創作のみを禁じることは原理的に不可能です。

おわりに

以上がプログラマ的な観点から指摘した、簡単な3つのAI対策の困難さについてでした。

これより下にコンテンツはありませんが、今後の活動の糧になるため、ご支援いただければと思います。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?