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この話題は、国家としての技術情報流出を防ぐために必要な法整備へと続く一連のシナリオの一部のように感じる

個人的に気になっている記事が2020年10月24日に日経新聞にあったので、シェアします。

記事冒頭はこのような書き出しとなっています。

東京大は、学内の研究者が持つ先端的な技術情報が海外などに流出するリスクを減らす取り組みを始める。先端科学技術研究センター(先端研)が啓発のための組織「経済安全保障研究プログラム」を立ち上げ、学内に情報管理の徹底を促す。流出防止に向けた指針作りも視野に入れる。

以前に以下のような論文投稿時の知的資産の流出に関する記事を書いているのですが、今回の日経記事はそれとは一線を画すようです。

一線と画すというのは、今回の日経記事が扱う「技術流出」の指し示す意味は以下のようなシビアな内容だからです。

政府は大学や研究機関に対し、疑念を持たれそうな海外との関係を自主的に絶つよう促す指針の策定を検討している。自民党は中国への流出リスクを念頭に情報管理などの強化策を年内にも提言する方針。経団連も軍事転用可能な技術の漏洩防止策をまとめる。


こうした技術漏洩はかなり前から問題となり、記事にもなっていて、2020年1月の防衛部門を含む三菱電機へのサイバー攻撃による企業機密の流出は記憶に新しいと思います。


こうした背景と、もちろん米中覇権争いの影響も多分にある状況下で、経済安全保障に関する議論が活発化し始めています。この気になる「経済安全保障」という言葉でググってみると、色々と出てきます。

以下の記事は2020年10月21日付のニュースです。

簡単にいうと、経済を使った戦争だそうです。このほかにも情報戦や外交戦、サイバー戦も含まれており、いわゆる軍事力を用いた対決だけでは無いのが戦争と今では言われています。幾重にも折り重なっているのが戦争だと思うので、この経済安全保障という文脈においては、日本はすでに戦時と言えるのかもしれません。


この状況に加えて、日本が機密情報を共有するファイブアイズ(アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)に加わるとか食わら無いとかって話が2020年8月頃に取り沙汰されています。


上記の話が出てから2020年9月7日には以下のような記事。これは有名な話で、日本にはこのスパイ防止法が無い。

そして関連するものとして2020年9月9日にスパイ防止法が無いことがファイブアイズとの情報共有が難しい点がさらに述べられています。

日本では1985年に『スパイ防止法案』が廃案になった経緯がある。国家の管理が強すぎると「戦前の特高警察のようになる」との戦時中の反省から、憲法が保障する表現や報道の自由に抵触する恐れがあるというのが、当時廃案となった理由であった。
「スパイ防止法」は、国連憲章第51条で認められた独立国の固有の権利で、安全保障に関する国家機密を守り、他国のスパイ活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為とみなされている。1985年当時のように「表現や報道の自由」に制約を受けるということが反対理由ならば、西側自由主義陣営の状況を鑑みるに、そこには錯誤があるようにも思える。昨今の中国の覇権主義的な力による現状変更に対し、米国、イギリスをはじめインド、オーストラリア、ASEAN各国と連携を深め、今後ファイブアイズとの情報共有という事態にも備えて情報管理の信頼性を向上させるためにも、「スパイ防止法」制定の議論は避けて通れないだろう。


少しキナ臭い話のように感じるかもしれませんが、こうした話はしっかりと議論しておかないといけないと思っています。
長期で見たときに、こうした知識や技術流出が日本の科学・技術の衰退にも関与していた可能性もあり、もう一度しっかりとやり直すためには、科学・技術への国としての投資の再開と同時に、その成果をしっかりと利用していくための枠組み議論、そしてそうした発見が漏れないような仕組みについての議論も併せてしていくことが大切なのだと私は思っています。
やる・やらないは別としても、現状の課題をしっかりと把握し、対策が必要であれば対策をする、それも議論を可能な限り透明にすること、これが世論の関心を惹起し、国民の中に同じような問題意識も生まれますし、理解も進むと思うのですよね。

#COMEMO #NIKKEI #技術流出 #経済安全保障 #新たな防衛力

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黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
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