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鍛冶屋体験をしたときの話【実話】

もうどれくらい経つだろうか、鍛冶屋体験をしてから。
この写真は、私が鍛冶屋体験で鍛えた小刀で、恐ろしい切れ味ですし、少し湾曲しているところがずっと見ていても飽きない怖い道具です。

最近引越しをしたのですが、色々と荷物を整理していたらキャンプ道具の中に厳重にしまってあったこの小刀を10年ぶりに見つけたのがきっかけでこの記事を書いています。ほぼ、備忘録ですが。

私がこの鍛冶屋体験をしたのは、成田に住んでいた時だから、もう10年は経っていると思います。成田市のお隣にある印旛郡には「房総のむら」という千葉県立の体験型博物館があります。もしかすると知る人ぞ知る施設かもしれません。

以下は、房総のむらweb siteの紹介文です。

「房総のむら」は、房総の伝統的な生活様式や技術を来館者が直接体験するとともに、県内各地から出土した考古遺物や、武家・商家・農家などの展示を通して歴史を学んでいただくことを目的とする博物館です。

みる・きく・かぐ・あじわう・ふれるの五感を通して、房総地方に古くから伝わる文化への理解を深めることができます。また、「春のまつり」をはじめとした、四季折々のまつりや演武、民俗芸能の上演、企画展など数多くの催しを実施しています。

ここには何度も行っているのですが、鍛冶体験の知らせが張ってありました。そりゃ釘付けになります、小刀を作ると言う体験ですから。他には、おせんべい焼き体験やほうじ茶づくり、ろうそく作りなどありましたが、鍛冶屋体験が一番私の中の中学二年生を刺激しました。

実を言うと記憶が曖昧なのですが、何層にも鋼を折畳みながらトンカントンカンやって、鍛えていく作業をしました。

とてもシンプルな作業体験でしたが、日本の刀剣造りの歴史を感じました。昔はもっと大変な作業だったと思います。

鍛冶体験の当日は、確か2月の粉雪舞う日だったと思います。めちゃくちゃ寒い日でしたが、鍛冶屋の中は結構暑かったのを覚えています。

先生の指導のもとで、何度も何度も叩いて、伸ばして、折り返して、冷やして、熱して、また叩く。この作業によって、鉄の分子の向きが揃って刃の強度が増すとのことで、長い歴史の中で経験的に発展してきたこの刀鍛冶ですが、これを今や科学的にどのような理屈となっているかが分かっています。

実際にやってみると、手はどんどん痺れてくるし、腕がパンパンになるし、握る力が弱まってくるし、力がいるだけでなく、根気がいる作業でした。

鍛冶の先生に言われたことで唯一覚えていることがあります。

熱した鋼を叩く時に、どんな形にしたいかをしっかりと頭の中にイメージして鍛えていくと、その形に近づいていくと言うこと。

確かになぁと思いながら、こんな形にしたいなぁと思いながら、ひたすら叩きました。

鍛冶屋体験をして真っ先に思ったのは、この鋼の鍛錬という工程に経験的に到達すると言うのは、本当に気の遠くなることだなぁと思いました。それだけ兵器としての役割を最大限高めると言う目的が大切だったのかもしれませんが、そこで培われた技術が現代にも生きているのは中々凄い話だなと感じています。

実は鍛える作業も大変なのですが、次に鍛えた鋼を研いで刃を出すと言う作業でした。私は電動グラインダーを使って、まず大きく研いでから、その後砥石で研ぐことで小刀を完成させました。

この小刀は今どうなっているかと言うと、厳重に梱包し、キャンプ道具の中に収納してあります。一度、料理に使ったことがありますが、切れ味がかなり鋭く、本能的にとても怖いと言う感覚になったのを思い出しました。

今回この記事を書くきっかけは、引越しの際に荷物を整理していた時に久々に小刀を手にしたことにあります。やはりこの小刀にはある意味野性味を感じずにはいられません。その名の通り小刀なので、調理道具というよりも武器に近い感覚があり、森で動物を仕留めたり、捌いたり、枝を払って尖らせたり、そんな使い方がお似合いだなと聞き手で握るとそんな感覚になります。

自分の思いを込めて鍛えた鋼で作った小刀ですから、普段使っている包丁とは違うんですよね。。。自分の外に自分の力を外部化したような感じで、持っているとなんか強くなったような感覚がして、一種の怖さを感じます。

でも、やっぱりこの感覚が怖いから、また厳重に梱包してしまいました。

次はいつ手にするかなぁ。。。

#鍛冶体験 #小刀作り #房総のむら #鋼の鍛錬 #イメージ

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黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
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