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患者データの利活用が加速する制度へ

患者の診療データ等の利活用が進む流れが加速しそうです。

政府は患者の医療データを医薬品の研究開発に使いやすくする。過去の臨床試験や治験のデータを使いたくても、当時の患者が追跡できなかったり既に意思疎通が取れなかったりして、本人同意を集められない問題があった。症例研究や医療技術向上などの目的なら、本人の同意なしで医療機関が製薬会社に個人データを提供できるようにして効果的な新薬の開発を促す。

この記事で初めて個人の同意なくデータが提供できる例外を知りました。

1)法令の基づく場合
  ・警察の捜査など
2)生命、財産の保護のために必要なとき
  ・医師への急病人の情報提供
  ・犯罪被害情報を犯罪防止のために共有
3)公衆衛生の向上などに必要なとき
  ・疫学調査における健康診断結果を利用

この3)の公衆衛生の向上に資するとして、医療機関のデータを製薬企業に提供することが追加されることになったとのことで、政府は以下のような用途を想定しているようです。

政府の個人情報保護委員会は本人の同意が要らない新たな例外を定める。
①医療機関が製薬企業にデータを提供
②医療機関が他の機関での症例研究や医療技術向上のためにデータを提供
③製薬企業がAの目的で保有していたデータをBという病気の研究に転用

などを想定しているとのこと。

医薬品の研究・開発、特に医薬品の有効性や安全性を評価する医薬品開発における活用が期待されていると思います。患者の医療データは、受けた治療や診療の過程を記録したカルテ情報といったリアルワールドデータ(RWDとよく略記されます)が含まれますので、研究開発戦略の立案や治験デザインの最適化などかなり有用なデータを利用できると思います。

日本製薬協が2019年4月に公表した「既存の国内リアルワールドデータを医薬品開発にどこまで活用できるか」により詳しい検討内容が書かれています。

複数のリアルワールドデータベースを用いて、以下の検討がされています。

開発戦略立案の効率化
1)適応症やメディカルニーズの検討
2)Model-Based Drug Development
3)バイオマーカーを用いたエンドポイント/対象集団の特定
4)公知申請(適応外使用)への活用
5)医療技術評価
臨床試験デザインの最適化
1)選択/除外基準に基づいた患者数の把握
2)併用制限薬/禁止薬の使用状況
3)類薬の有効性の把握
4)症例数の設定根拠としての利用
5)対照群の選択
6)医療機関選定の参考情報
7)被験者の病態進行の予測
8)服薬コンプライアンスの予測
RWDを活用した臨床試験
1)臨床試験データの収集
2)Pragmatic clinical trial
3)Registry-based randomized clinical trial
ヒストリカルコントロールとしての活用
1)海外事例
2)国内RWDでの実効性評価

こうしたRWDの利活用には、データがしっかりとあることが一番大切だと思いますので、今あるRWDをそのまま使えない場合も多々あるのだろうなと想像しています。今後は医療機関側でのデータ取得への理解と行動が必須となると思います。

データ収集環境の整備とデータの利活用は両輪だと思うので、今後もその方向性を維持したまま、より良い方法を模索して欲しいと思っています。

診療情報の医薬品開発への活用がさらに進めば、私たちの生活の質が向上することに直結していると思うので、関係者の皆様には是非頑張って頂きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します!

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